SS ヴィヴィアンヌ・ル・ヴェリエ

 わたくしは、ヴィヴィアンヌ・ル・ヴェリエ。


 アクメランド連合王国の一部、ケベス国の公爵家の人間ですのよ。


 祖国の首都は侵略者達に蹂躙されてしまい、首都が陥落してから三日後に、パパン平原で連合王国の援軍とケベス王国の残存兵力で、首都奪還戦をしたのですが、わたくしは捕らわれの身になってしまいました。でも、わたくしの叔父である国王は戦場を離脱し、隣国に落ち延びたと聞いているので、祖国奪還も夢ではありません。


 領地に残っていた。わたくしの母上や弟や妹達も、戦乱の混乱でどうなったのか分かりませんの。


 あの時、戦場で父上や兄上達が討ち取られてしまい、わたくしは我を忘れて敵兵を殺戮していたのに、気が付けば捕らわれ檻に入れられて運ばれてましたの。


 そして、パパン平原での会戦から二日後には、わたくしの命も此処までと思っていたら、あの不思議な変な人に出会わせて、わたくしの命は救われ、同時に同じ戦場、同じ陣営で戦っていたエヴァも救われました。


 そうあれは……不思議な出会いであり。思い出したくも無い出来事でしたの。



 エヴァはドワーフ族の国であるエクスタ王国の傭兵で、傭兵団団長の娘でもあったの。そして、逃げている途中で逸れてしまったのが、エルフ族の国であるエロフ国の出身であるリアですの。


 エヴァは荷馬車から投げ出されて、足を挫いてしまいました。わたくしはエヴァを助ける為に彼女の肩に手を廻すと、急いで荷馬車から離れて逃げ出す事に成功しました。運が良かったのです。


 三人で逃げてた筈なのに、気が付けばリアの姿が見えなくなって居て、後方からは荷馬車を襲った魔獣の一匹が、わたくし達を目掛けて走ってくるとこでしたの。このままではエヴァもわたくしも助からないと思い、エヴァを木の上に投げ上げてから、エヴァには助けを呼んでくると告げて、わたしくしは走って助けを呼びに行ったのですが、此処は魔の森の近くで、街道しかない場所だったのを思いだすと、わたくしは途方に暮れて頭が真っ白になってましたの。


 でも、神様はわたくし達をお見捨てにはならず。わたくし達に助けを寄こしてくれていました。あの時ばかりは、もう駄目かと思いましたが、日頃からの信仰心のお陰で、わたくし達は救われたのです。


 神様、わたくし達は彼方様に感謝しています。


 でも、あの変態はどうかと思うのです。


 神の使途を選ぶ時は、もっと偉大な人物をお選びくださいまし。





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