第13話
「残念ですが、貴方以外に私たちは見えませんよ。声も聞こえません。そういう魔道具を使ってますので」
茶肌の男は澄まして笑った。その隣にいるダンテは不安げな声をあげる。
「どうしました、ガロ様。どこに何があるというのです? それとも具合が? すみません、私は何を……?」
ガロは二人の無礼な男たちを睨みながら何とかダンテに奴らを拿捕させようとした。
「大丈夫だ、ダンテ。私は正常だよ。明日だって退院できるほどさ。……ところでダンテ、その空いた右手を横に振り回してみてくれないか。それだけでいい」
ダンテは疑問符のついたような表情で右手を床と並行に回した。すると茶肌の男に手が突き当たった。しかしダンテはそれに気づかぬように
「これでいいのですか、ガロ様? これは一体、どういう意味が……」などと言った。
「無駄ですよ。今使用している魔道具は人の意識に働きかけています。この栗色の髪の男は現に私の声を聞き、私を見、そして触れている。だが、それを受け取るだけの意識の器がなければ透明であると変わらない。そういう理屈です」
茶肌の男がそう述べると、浮浪者の男がいよいよ堪えられないように高笑いを始めた。それはまるでガロの無知や諦めの悪さを嘲笑うように。ガロは身体を起こし意地悪く笑い続ける男の胸ぐらを掴んだ。男はまだ、ひひひ、と笑う。ガロが拳をあげると視界に銃口があった。茶肌の男がガロにむけたものだった。
「そう、それぐらいしか貴方はできないはずだ。我々を貴方以外の人が知覚することはできないのですから。……我々がそれを対処する術をもたないとでも?」
それから三人は生存競争下で相対する獣同士のようにかたまった。三人が硬直状態に陥る傍ら、ダンテは意味もわからず凝視している。
「……とりあえず、我々は貴方と話がしたい。けれどもこの状態じゃあどうしようもなさそうだ。なので、これを渡します。この紙には我々の居所を記しているので、いつでも来てください……」
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