第6話

「……それで、我々への敵意が無くなったと?」


「ええ、そういうことになります。適切な言い方をすれば敵意が紛れたということですが」


「たが、あの祝福の雰囲気はあまりにも久方ぶりで先の説明では納得できないところもある」


「ひとつは過激民主派、つまり彼らの言う不当に優遇された王家の存在を嫌う者どもが今回の生誕祭には姿を見せず、むしろ王権に好意的な者ばかり集ったということもありましょう」


「それだけか。王権に好意的な者など元々少数のはずだが」


「ええ、それは否定しません。しかしここ最近、奇妙な噂があり、それが引き金にあるようです」


「奇妙な噂?」


「ええ。先に述べたように魔術石の流入に関してです。魔術石の流入は不可思議仕方ありませんが、その魔術石が実のところアルミーン王家から流入されているとの噂が広まっているのです」


「なんだって? 全くの出鱈目じゃないか」


「勿論、噂ですからはっきりとした根拠はありません。しかし、そう考えるのも無理はないでしょう。魔術石を誰が作ったのか何処で産出されたか知る者はいません。しかし以前に『魔術』を用いた人はその限りでは無いのではないか、ということです。ならばその『魔術』の使用者が実のところカラクリを把握していて、それを匿名的に持ち込んだとしてもおかしくはないでしょう」


「……仮にその噂があるとして、どういう動機で我々が……」


 ガロに不気味な予感が湧いた。そしてそれはあながち的外れでもない。


「勿論、それは王権の復活のためです。ヴェーリー民主政府は樹立から権力抗争に絶えず、魔術石の取り扱いでさえ後手に回り、有効な政策を打ててない状況。それにみかねたアルミーン王家がまず即時治療の形で国を助け、時期がくれば再び復権するという」


「しかし根も葉もない……」


 ガロは急に自身が深い霧の森に立たされた心地になった。確かにガロの胸中の奥底に王家の復権を望まなかったわけではない。しかしこのような突発的な噂に便乗した復権に何の意味があろう。末恐ろしい道を淡々と整備された気配すらある。霧の道を行った先にどれほどの地獄が待っているかもしれない。

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