第2話

「どういうことどういうことどういうこと!?」

私は確かに獣に銃弾を浴びせたはず、なのに

「なんで倒れないのよ!」

おかしい!なんで!

あの怪物は地面から這い上がってきて、こっちに突っ込んできた。

そこから飛び上がって、あいつについてる顔を全部破壊して、目も潰して倒したはずなのに!

「なんで生きてんのよ!あいつ!」

顔は復活するし!目の結膜は黒くなってやっぱり復活するし、何より!

「そこからいくら撃っても!顔に傷一つつかないって!どうなってるの!」

また獣が突っ込んでくる。私は跳躍し、銃弾を浴びせる。

だが獣には傷一つなく、まるで何事もなかったかのように地面の中に潜った。

「くっ!こんなの聞いてないわよ!」

函館ならともかく、当別にこんな化け物が現れるなんて!

このままじゃ、こいつを殺す前に弾が切れる!

「おーい」

突然、声が聞こえる。振り返ると、そこには逃げたはずの男が立っていた。

「ちょ!?あんたにげたはずでしょ!」

「ああ、そのつもりだったんだけど、俺ってどこに逃げればいいの?」

男が近づいてくる。

男が範囲に入ってしまったんだろう。獣は男に向かっていく

「あ、危ない!」

私の手は届かず。男は獣に吹っ飛ばされ、建物に突っ込んだ

「くっ!だからあれほど!」

だけどあそこは獣の範囲外だ、これ以上攻撃されることはないだろう。

どうする。あと1時間ほどすれば、救助班がこちらにくるだろう。だが

こいつ相手に1時間も耐えられるわけがない。

「...やるしかない」

銃を構える。その瞬間獣はこちらに向かって突進してきた。

私は飛び上がりそれをかわし、獣の無数にある顔に向かって、銃弾を浴びせる。

「やっぱり効かないか」

そうつぶやくと獣の動きが止まったかと思うと

無数にある顔が一斉に笑顔になった。

「あ?」

なにが、なにが

「なにがおかしい!!」

私はもう一度、顔に向かって銃弾を浴びせようとする。

だが弾が切れてしまったようだ

「クソ!」

私は急いで弾を入れなおす。

その瞬間、背中に何かがぶつかり、私は吹き飛ばされた。

「あぁ、うっ...」

私は血とともに今朝食べたものを吐き出す。

前を見てみると、私の目の前でトラックが倒れていた。

「なんで、あいつには手がなかった...何かを持ち上げることはできないはず」

獣の方を見ると、大きな目が存在していた場所が、口に変わっていた。

「クソ...」

私は足に力を入れようとした。だが、足は動かず、代わりに強烈な痛みが体を支配した。

「骨が折れたの?...なんで!このスーツは体を守ってくれるんじゃなかったの!?」

獣は私の方へゆっくり向かってくる。

私は次に銃を構えようとした。

だが、吹き飛ばされたときにどこかに落としてしまったようだ。

「はは、」

詰みね、これ

「結局私の人生、何もできずに終わるのね」

私は全てをあきらめ、目を閉じた。



違う。

私は自分の人生に意味を持たせるために生きてきた。

まだ死ねない。まだ死にたくない。

嫌だ、いやだ、いやだ

「まだ死ねない...死にたくないぃぃ...」

涙が止まらない。

そんなことは関係ないとばかりに獣はこちらに向かってくる。

「誰か、助けて...」

そんな声は届かず。私は飲み込まれた。







はずだった。

「あああああああああああああああああ!」

獣の叫び声が響く

大きい地響きが聞こえる。

「大丈夫か」

男の声がする。私は目を開けると、倒れていたはずの男が私を抱きかかえていた。

「あんた、なんで」


「助けてといっただろう。だから助けたんだ」

「でも、自分の事を考えるなら、あそこは逃げるのが一番でしょ?それに私を助ける理由なんて」

「俺は人を見捨てるのが嫌いだ。それを後悔して、寝れなくなるのが嫌なんだ。

だから助けた」

「なに...それ」

あれ、この人、さっきと雰囲気が違う気がする。

「あああああああああああああああああああああああ!」

「!?」

死んだはずの獣が起き上がり、こちらに向かってくる。

「やっぱりあれは俺より格上か」

彼は私を降ろすと獣のほうへと向かっていく。

「まって!あの獣は貴方より強いのよ!」

「ああ」

「なら!」

「だから好都合だ」

彼はポケットからナイフを取り出し

「こい、ブラットムーン」

と宣言した。

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死から始まる物語 春海レイ @tanakazaurus

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