第1話

「誰も私のことなんて興味ないよ。だって私が誰にも興味が持てないからね」

これが聞こえる。聞き慣れた声、ずっと聞いてきた声

「愛されたいんだ…ただ愛されたかったんだ…」

あれ?この声誰の声だっけ。

「大丈夫だよ…また会えるから」

何を考えて…いたんだっけ

ーーーーーーーーーーー

ひどい頭痛とともに俺は目を覚ました。

体の節々が痛い

「ここどこだ...?」

どうやら俺は酔っぱらって寝てしまったらしい。

周りを見渡す。どうやら俺は路地裏で寝てしまっていたらしい。

ここに来るまでの経緯が思い出せない。

「てか、早くいかないと」

早く約束を果たさないと、

あれ?約束ってなんだっけ

というか

「俺の家ってどこにあるんだっけか」

どうやら俺は22歳で迷子になってしまったらしい。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ホームレスのような格好で街を歩く

どうやらここは当別と言われている場所らしい

「ラーメンくいてぇなぁ」

まあそんなこと言っても何にも始まらないわけだが

いろいろな人に話を聞いてわかったことがある。

ここは俺の知らない街でここに俺の家はない。

試しに警察に俺の名前を調べてもらったが、かすりもしなかった。

病院に行くことを勧められたが、かすりもしないということは俺に戸籍があるかどうかも怪しい。

つまり

「医療費10割負担...それは無理だ」

それに俺の財布には182円しか入っていなかった。

「金なし家無し身内なし、これでどうやって生きて行けっていうんだよ」

ただまあ、あそこで警察に疑われて連れていかれなかっただけ幸運だと考えよう。

なんかわからないが、俺は公共の施設を使ったらダメな気がする。

「獣だ!獣が出たぞ!」

突然、男の甲高い声が響いた。

歩行人達は最初に唖然とした表情を浮かべ、次にみるみるうちに顔が青くなり、

次に男が来た場所とは逆の方向に逃げ出した。

獣、獣か久しぶりに聞いたな、その名前

確か人間が欲望によって変貌した姿で、欲望を埋めるために暴れまわるんだったか

だけど欲望によって変貌するって変な話だよな、人間って欲望まみれの存在なのに、

「そこのあなた」

「うお!?」

びっくりしたぁ

声がしたほうを見るとそこには白い衣装を着た少女が立っていた。

身長は150cmくらいだろうか、小柄だが子供っぽさを感じない。

高校生くらいだろうか、だがその風貌に似合わないものを構えている。

「おいおいどうした銃なんて構えて」

「なぜ単独行動をしているの?」

「それはお前もそうだろ」

「私は執行兵よ!それよりあなた早く現場に戻りなさい!」

「あ?ここにはまだ獣は来てないだろ」

「あのね、あなたまだ新人さん?それとも情報が届いてないの?」

そういうと少女は説明を始めた。


「今回の獣はワーム型、地中に潜って行動している。

一定の進路を巡回し、近くに生き物がいたら虫だろうと獣だろうと人間であろうと捕食する。食欲によって生まれた獣」


「おう。それがどうした」


「だからここがその巡回ルートに入ってるってこと!」

少女が後ろに背負っていた銃を構える、突然地面が揺れ始めた。

少女はコンビニに止められた車をにらみつける。

「きた」

少女がそういった瞬間、地面が割れ車が飲み込まれる。

「でて、きなさい!」

少女がそういうと割れた地面に向かってグレネードを投げいれた。

「あれ?あなた武装は?」

「おれが軍人に見えるか?ただの酔っぱらいだよ」

「え?椎名はあなたのことを」

「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

叫び声が響き渡る。

「くっ、だったら早く逃げなさい!」

ひび割れた地面から何かが出てきた。

無数の足が生えたムカデのような獣は足一つ一つに顔がついており、一つ一つが違う表情をしていた。泣いている顔、笑っている顔、怒っている顔

本来顔のある場所をみると、鼻、口、耳が存在せず、ただ一つだけ大きな目がついていた。

「あれ、お前じゃ勝てないぞ」

一目見たときにわかった。これは人間が自然に変貌した姿じゃない、人間が変貌させられた姿だ、悪趣味だ、まさかこんなものになりたいなんて思っている人間がいるなんて

「なにいっているの!私は執行部よ、こんな辺境の化け物に負けるわけないでしょ」

...ああ

「負けフラグ立ったな」

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