第9話
2人のパラミシア兵が通路を歩いていた。
1人は、裾を破ったマントの軍服を着ている。ワインレッドの制帽をまぶかにかぶり、切り揃えられた黒髪が顎のラインをシャープに見せていた。
もう1人は、オーバーサイズの軍服をベルトで絞り華奢な体をより一層、細く見せている。こちらも制帽をまぶかに被り、収納されてわずかに見える髪は金髪だ。おどおどとして、しきりに辺りを気にしている。
「キョロキョロしないで」
マントの方が小声で言った。ルナだ。オーバーサイズはカリーナで、白い顔がいっそ青くなるほど顔色が悪く、今にも倒れそうだ。
入り組んだ細い通路を何本も通り、様々な用途に使われている小部屋をいくつも通り過ぎた。その間、2人を怪しむ者はいない。敵国の兵が侵入し、自国内を平気で歩き回っているなんて、思いもよらないのだろう。
「まるで、蟻の巣みたい……」
カリーナがポツリと呟いた。
「さっきも聞いたけど、どうして、君がここにいるの?」
周りには聞こえないように抑えた声で話す。
「大佐とあなたが話してるのを見たわ……犬の絵が描かれたドアのところで」
ルナがパラミシア潜入を決めた日に、レイと寮の前で話していた時に、遠ざかっていった足音を思い出す。
「他に訓練所でも……こそこそ集まって話してたでしょう。大佐はカマラードの兵士の訓練を別の人に任せて、何かしようとしてた」
細い通路を3人のパラミシア兵がルナたちの方に向かって歩いてくる。多くの通路がそうであるように、互いに1列にならなければ、通過できない。
ルナがカリーナの前に立って、パラミシア兵と行き交った。無事に通過できたかと思ったところで、後ろから声をかけられた。
「ちょっと、アンタたち」
ルナは少しだけ後ろを振り返る。カリーナは固まってしまった。
コツコツと靴音を立てて、近づいてくる。
「良い軍服ね、だけど……」
近づくパラミシア兵はカリーナの足元を見た。ルナはマントの下に手を入れていつでも銃を出せるよう身構えた。
「ブーツじゃなくて、ハイヒールにしたら、もっと可愛いと思うわよ!」
弾んだ声でパラミシア兵が言った。仲間の兵も「そうね!」「アンタ、彼女にアドバイスしてもらえるなんて、光栄に思いなさいよ!」とキャッキャと声を上げた。やたらと声が大きい。その内の1人は丸坊主でどう見ても男なのだが、真っ赤なリップを唇に塗りたくり、ぶりぶりとした動作で低い声を弾ませていた。
「さ……」
カリーナがやっとのことで声を出す。
「参考にします!」
3人のパラミシア兵は満足げに去っていった。カリーナがその場に座り込む。
「立って」
容赦無くルナの声が飛ぶ。不服そうな顔で見上げたカリーナに、ルナはそっぽを向いたまま「上出来よ」と言った。カリーナはムズムズと唇を噛み、頬を上気させた。すぐに立ち上がりさっさと歩き出す。
「Nを探してるんでしょ! 急ぐわよ!」
「声が大きい」
後を追いかけながら、ルナは注意した。
* * * *
レイたち一行も、パラミシア兵の軍服を着込んで通路を歩いていた。
「なんなんですかね~、この地下都市。目的も脈絡もなく掘られてて……続く部屋も関連性がなく予想ができない~」
随分、歩き回ったのか、カロスが力なく、とぼとぼと歩きながら愚痴る。
「今まで通ってきたのは、洗濯室に訓練所、寮と思しきものが無造作に配置されてちらほら……なぜか知らんが、花畑もあったな」
フェンがありもしないメガネを直すような仕草をしながら楽しそうに言う。メガネをかけてきていないことを忘れていたようだ。
「地下施設に植物を置くのは、そこに住む人間の精神面を整えるのに役に立つ」
レイは大真面目に言って、フェンとカロスは目を合わせて肩を竦めた。2人ともまだコンタクトをつけたままなので茶色い目をしている。もちろんレイもだ。
「ルナさん、無事ですかね~」
カロスが呟いて、レイが足を止めた。
「実は、女性捕虜の中に、カマラードの兵が混ざっていた」
「なんだと?」
フェンの顔色が変わる。レイは首を振った。
「彼女はカリーナ・ドゥシュマンと言うんだが、戦闘服の管理局からボディースーツを借り受け、今回の戦争に参加したようだ。ルナと面識があると聞いている。一緒に行動してくれていると良いんだが」
「カマラードの兵を捕虜に取られたなんて知られたら、問題になるぞ」
「いやいや~、待機命令無視して戦場に出て捕虜になった僕たちのが問題でしょ~」
「そりゃそうだが、カマラードとのことは国際問題だ」
フェンの言葉にカロスの笑顔も固まる。
「国際問題か~! やっばいじゃないですか……」
「目的はエリオットだが、ドゥシュマンのことも頭に入れておいてくれ」
レイの言葉にフェンは1度だけ頷き、カロスは小刻みに何度も頷いた。
* * * *
「ロッカールームで戦闘服をもらったの」
再び歩き出したカリーナが言った。
「それを着て、廊下に出たら、ピリンキピウムの兵に今日の戦争参加者は集合だって言われて……こんなに簡単にいくなんて思わなくて」
「戦闘に参加したの?」
ルナに問われてカリーナはゆるゆると首を振る。制帽からはみ出た後毛が遊ぶように揺れた。
「怖くて……必死で走ってた。大佐を見つけなくちゃって、とにかく必死で」
「レイに会って、どうするつもりだったの」
「わからない。ただ、あなたと大佐の間に特別な繋がりがあることが許せなかった……戦場に行けば、大佐のことがもっと理解できると思ったの。大佐もアタシのことを認めてくれるって」
「バカね……惚れた男を追いかて戦場に来るなんて」
カリーナの耳がカッと赤くなった。
「な、あ、じゃ、じゃあ、あなたは何のために戦ってるのよ!?」
興奮して敵地だということを忘れたのか、声が抑えられていない。
「しっ!」
ルナに鋭い目つきで睨まれ、カリーナは慌てて口に手を当てた。しばらく、辺りに目を配り、沈黙が続く。やがて、ルナがポツリと話しだす。
「わたしが戦う理由なんて決まってるじゃない。国のためよ」
カリーナは目を見開いた。
「君も知ってる通り、わたしたちSは戦闘に特化するようデザインされた兵士よ。国の為にその身を剣に、盾にして戦うのがわたし達の生まれた意味」
冷たく光る青い瞳だが、その奥でジリジリと炎が燃えているようだった。カリーナはルナから目を逸らせない。
「たとえば、君が戦争に恐れをなして退役しようとしても、誰も引き止めはしないでしょう。だけど、わたしにそれはありえない。Sは必ず戦場で死ぬの。わたしも、レイも、仲間たちも、戦場から逃れることはできない」
「……Nを探しているのも、国のためなの?」
ルナはグッと唇を噛み締めた。熱の冷めた瞳を伏せる。
「……そうよ」
狭い通路を歩き続け、いくつもの小部屋を通り抜けると、不意に広い空間に出た。まばらに人がいるそこは、何か催し物をする場所のようで、今はがらんとした舞台、そこに向けられるように設置されたベンチが並んでいた。そこは他の小部屋のような簡素な蛍光灯ではなく、レトロな街灯が並んでいた。
まばらにいるパラミシア兵はカップルが多く。まるでデートを楽しんでいるようだ。もしかしたら、パラミシアのデートスポットなのかもしれない。
「すごい……地下なのに川がある」
カリーナの声を聞いて視線を向けると、部屋の端に水路が掘られ、水が流されている。辺りは草花が植えられており、魚の跳ねる音がした。幅が1メートルはあるかという、川で、眼鏡橋が渡されていた。そこにカップルが並んで手すりに腰掛けようとしていた。その姿にルナは息を飲んだ。
「なぜ、彼女が……」
異変に気づいて、カリーナはルナの肩を遠慮がちに触った。
「な、なに? どうしたの?」
ルナはマントの上から銃の存在を確認してから、カップルに近づいた。
橋の袂に立ったルナに気づいて、カップルの女の方が大きく目を見開いた。研究職なのか、白衣を着ている。
長い黒髪を、かつてのルナと同じひっつめ髪にしているが、その瞳はルナと違って黒かった。顔も、これといった特徴がなく、のっぺりとして、無理に特徴づけようとしているのか、唇に真っ赤なリップが塗られ、妙に浮いている。
「フォルティナさん、どうしてパラミシアにいるの?」
フォルティナは白衣を翻して立ち上がり、ふっと不敵に笑った。唇が真っ赤な三日月を描く。
「まさか、こんなところにまで来るなんて……」
フォルティナの手は、まだ欄干に座ったままの男の肩に置かれている。男は動こうとしない。
「え? 知り合い?」
カリーナは、ルナとフォルティナとを交互に見た。
「兄さんの婚約者」
「婚約者!? パラミシアに? え? お兄さんがいるの?」
カリーナは1人で大混乱だ。
「そこに座ってる」
打って変わって、ルナは冷静だ。
「え!? あなたのお兄さん、パラミシア兵なの!?」
「どうなの、兄さん?」
ルナがエリオットに言葉を投げかける。欄干に座って、横顔を見せているエリオットは、前方に視線を向けたまま、微動だにしない。
死人には見えない健康的な白い肌。金色の髪はきっちりと撫でつけて整えられている。しかし、青い瞳は何も見ていないように光を宿していなかった。服装は、シンプルなワインレッドのトレーニング着だ。
エリオットの様子にルナは首を傾げた。
カリーナはルナが兄だという男を目を凝らしてよく見る。
「え? あ! あれって……Nの」
仲間が惨殺されたことを思い出したのか、カリーナの顔が真っ青になる。それと同時に、ルナにも不審の目を向けた。
「ど、どういうこと!?」
「ちょっと黙ってて」
マントに縋り付くカリーナを、ルナは押しのけた。
「彼のこと、お兄さんだと思って、ここまで来たのね。美しい兄妹愛だこと……」
フォルティナが胸に手を当てて、少し、演技じみた態度で言葉を紡ぐ。
「だけど、残念ね。彼はあなたのお兄さんじゃないわ」
優しい手つきでフォルティナはエリオットの髪を撫でた。
「この子はエリオットのコピーよ。ティナが彼の遺伝子から作り出したの。だから、あなたのお兄さんじゃなく、ティナの、ティナだけのエリオットなの」
ルナは眉を顰めた。フォルティナとエリオットを交互に見比べる。フォルティナの手で髪を乱されてもエリオットは微動だにしない。
「年齢が合わないわ」
「見た目のことを言ってるのね」
言って、フォルティナはエリオットの頭を大事そうに胸に抱える。それでもエリオットは微動だにしない。
「この子は、最近まで水槽にいたの。成長促進剤で、亡くなった時の年齢に近づけるために」
うふふと、フォルティナが笑う。ルナはハッと気づいて呟く。
「兄さんの遺体は回収されなかった……」
「パラミシアに持っていかれたからね。でも、それで、ティナがエリオットのコピーを作ることができた。パラミシアには感謝しないとね」
ルナは眼光鋭くフォルティナを睨んだ。視線で彼女を殺せそうだ。異様な雰囲気を察してこちらを見ているパラミシア兵に、フォルティナが目配せした。
「侵入者よ! 兵を呼んで!」
ルナは振り返って、素早く銃を取り出したが、6人のパラミシア人がバラバラの方向に走り出し、狙いをつけるのに逡巡してしまった。取り敢えず、通路に近い1人を狙い撃つ。光の筋を描いてレーザー銃が敵を貫く。そのエネルギーは人体を通り抜けても失われることなく、壁を抉った。
「何その銃!?」
カリーナの叫びを無視して、ルナは左に体を振って、次々、パラミシア人を撃ち殺して行く。撃ち漏らした1人が別の通路に走り去るのが目の端に見えたが、すぐに光が飛んできた。
「おいおい、なんなんだ、この威力は」
言いながら、通路から姿を現したのはフェンだった。
「ルナさ~ん」
次にカロンがブンブンと手を振って現れた。レイは2人の姿を認めて安心したように息を吐いた。その瞬間に、ものすごい警報音が鳴り、照明が赤に変わった。
フォルティナを見ると、橋を渡った先にある壁に拳を当てていた。警報装置があったようだ。
「セウム博士のレーザー銃……完成したとは聞いていたけど、因縁深いわね」
ニヤリと笑ってフォルティナは呟く。その声に気づいて視線を向けたレイもフェンも驚いた顔をする。
「ザッカス博士?」
呼ばれてフォルティナはフェンに笑顔で頷き返した。
欄干に座っていたエリオット・コピーが立ち上がる。
「エリオット、敵よ。倒しなさい」
フォルティナに命令され、彼女が指さしたルナたちにエリオット・コピーが向き直る。その瞳に感情は感じられない。
警報で室内にパラミシア兵が集まってきた。銃撃戦が始まる。その様子を見て、フォルティナはケタケタと笑った。
「アンタのこと目障りだったのよ。同じ遺伝子を使って作られただけのただの妹のくせに! ティナは婚約者よ!? なのに、エリオットはいつも、ルナ、ルナ、ルナ、ルナ!! 妹の事ばっかり!」
ルナたちは部屋のほぼ中央でベンチを盾にして、着実にパラミシア兵を撃破していく。地下都市内での銃撃戦を想定していたのか、ベンチは特殊な金属で作られているようだ。弾が貫通しない。まさか敵にそれを利用されるとは思っていなかっただろうが。
パラミシア兵は人員を大量投入し、銃を乱射してくる。数に押され、ルナの頬を弾丸がかすめた。ジワリと血が滲む。
「これじゃ、救出どころじゃないですよ~!」
立てたベンチを押さえながらカロスが弱音を吐く。
「それなんだけど! あれは、兄さんじゃない!」
ルナの衝撃の一言に、一瞬、みんなのレーザー銃を撃つ手が止まる。カリーナは飛び交う弾に泣きそうになりながら、頭を抱えて、ルナ、フェン、カロン、レイに囲まれるようにして、バリケードの中央で蹲っている。
「どういうことだ!?」
再び銃を撃ちながら、レイが怒鳴るように聞いた。銃声が響く中では、怒鳴らなければ声が届かないからだ。
「あれは、兄さんの遺伝子から作られたコピーだって! フォルティナが言ってた!」
ルナは彼女に敬称をつけるのをやめていた。
「そんなバカな~!」
カロスの叫びに答えたのはフェンだった。
「あり得る! ザッカス博士はSの遺伝子操作の研究に関わってた!」
ここにいるルナ、レイ、フェンは、フォルティナがまだピリンキピウムにいた頃、遺伝子調査という名目で、彼女の診察を定期的に受けていた。彼女が行方不明になった後、その役は別の者が引き継ぎ、行っている。
唐突にパラミシア兵からの銃撃が止んだ。室内はワインレッドに取り囲まれ、皆、銃を構えたまま静止した。と、魂の抜けたようなエリオット・コピーが、銃を構えてルナに突っ込んでくる。
咄嗟にレイとフェンがルナを庇い、レイは右肩を、フェンは左脇腹を撃たれた。
「アイツ……ルナを狙ったな。マジでコピーかよ!」
悟ったようにレイが言う。撃たれたせいか、口調が乱暴になっている。
「大佐!」
蹲っていたカリーナが青くなって叫ぶ。
「どうしよう! 大佐が!」
「心配なのは、バークシャー大佐だけか」と、フェンが脇腹を押さえて倒れ込みながら呟く。撃たれたと言うのに笑っていた。
「お嬢さん、私たちSは遺伝子操作されて、撃たれても血が出にくい体質になってんだ。肩ぐらいなら心配ないさ」
「腹はヤバめですけどね~」
エリオット・コピーを警戒しながら、カロスが呟く。焦ってはいるが、まだ余裕のある表情だ。
「Nが2人やったぞ! たたみかけろ!」
パラミシア兵から声が上がり、銃撃が再開された。
「照明を撃て!」
レイが叫んで、ルナとカロスが光源となるものを次々と撃っていく。段々と明度が下がり、窓のない地下の一室は真っ暗になった。
「撃ち方、やめ!」
怒号が飛んで、辺りを暗闇と静寂が包んだ。
「照明弾!」
声の後に、シュッと音がして天井近くに光が上がった。目の前に輪郭が現れたと思ったら、ルナの目の前にエリオット・コピーの手が差し向けられる。そこには鈍く光る刃があった。
瞬間、カロスが間に入り、レーザー銃で、ナイフを受け流した。が、脊髄反射で飛び出したため、カロスはバランスを崩し、腕を切りつけられる。ダラリと血が滴るが、切られたにしては量が少ない。Sが出血しにくいのは本当のことのようだ。
光が消え、再び照明弾が打ち上がる。ルナとエリオット・コピーの前に、もう立ち塞がるものはなかった。
「ルナ! 避けろ!」
レイが叫ぶが、エリオット・コピーのナイフは容赦無く、ルナの首を狙っていた。
手に持ったレーザー銃を構える間もなかった。亡くなった兄に追いつこう。兄の代わりに、兄と変わらぬ戦績を……そう想いながら、他人を遠ざけ、自分を追い込んで訓練に明け暮れたルナの過去の日々が、次々と映し出される。
それでも追い付けなかった兄との遺伝子と能力の差に、ルナは大きく目を見開いた。
「兄さん……」
ルナが諦めたように小さく呟いた。
飛びかかるエリオット・コピー。見つめるルナ。天井には照明弾が光り、辺りは静寂に包まれていた。
差し向けられたナイフがルナの喉元で止まっていた。今まで感情のなかったエリオット・コピーの青い瞳に光が宿った。
「る……な」
生まれて初めて声を出したような、掠れた声だった。だが、それは間違いなくルナの兄の声だった。ぽろりとルナの瞳から涙が溢れた。
「照明、急げ!」
どこから持ってきたのか投光器が2つ設置され、ルナとエリオット・コピーが照らし出される。
「兄さん!」
銃声がして、エリオット・コピーが倒れた。くずおれたエリオット・コピーの向こうには、煙が上がる銃を手にしたフォルティナの姿があった。ルナだけでなく、パラミシア兵も驚愕の目を彼女に向けている。
「は、博士! 何を!?」
「あのNは不良品だったみたいね……だけど、安心して、大丈夫よ。また作るから!」
狂気の笑みを浮かべたフォルティナは、そのままルナに向かって立て続けに発砲した。が、それよりも早く、立ち上がったエリオット・コピーがルナに飛びかかり、ベンチのバリケードの内側に倒れ込んだ。
「兄さん!」
「エリオット!」
ルナとレイがエリオット・コピーを助け起こす。息も絶え絶えの彼は、ルナの頬に震える指を当てる。ルナの青い瞳と、エリオット・コピーの青い瞳が見つめ合った。彼は静かに目を閉じた。ルナは兄の胸に顔を埋めて、肩を震わせた。小さな嗚咽が聞こえる。
「これ以上の戦いは無意味だ! 観念して、投降しろ!」
パラミシア兵から声が上がった。そのセリフがあまりにも滑稽で、少し笑った。
皆の視線がベンチのバリケードに注がれている。軽い音がして、白いものが投げ上げられた。それは光を照り返す、レーザー銃だった。ついで、光の線がその銃を撃ち抜いた。
叫ぼうと口に形を作ったパラミシア兵たちの顔を一瞬で白い光が包んだ。衝撃に、その場にいた全ての人間が倒れていた。天井も一部が崩れて崩壊した。出入り口付近を狙って投げられたため、その付近にいたパラミシア兵は体のほとんどが吹き飛ばされていた。
バリケードからフラフラと5人が出てくる。カロスはフェンに肩を貸し、レイとルナは銃を構えながら、カリーナはビクビクとその2人に置いていかれないように懸命にくっついていった。
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