第3話

「もうキャプテンやめたいって?!」


副キャプテンのサトルは驚いて言った。


「僕には向いてないんだ。前から言ってるだろ」

「ほんとにそうか?」

「え?」

「だから、本当に向いてないのか?嫌いなだけじゃないのかよ」

「あぁ嫌いだよ。同じだろ」


サトルの唐突な言葉にぶっきらぼうにそれだけ返した。

「嫌いと不向きは違うさ。オサムはさ、逃げたがってるんだろ。向いてないって言えば責任から逃げられそうな気がするんだろ」

「...っ!」


悔しいがサトルの言ってることは正しかったと思う。ただ言われっぱなしも癪なので言い返すことにした。


「やってない癖にずいぶん好き勝手言うじゃん。しんどいんだよ、この役目はよ」

そう言うとサトルは少し下を向きながら

「それは、わりぃ...」

と言った。そしてこう続けた。


「でもよ、やってなくて、わかんねえからよ。せめて頼ってほしいんだよ。わかってやれなくても分け合って背負うことはできるだろ」


こいつはいつも鋭く、言うこともまっすぐで正しい。頼もしい反面妬ましかったりもしたほどだ。


今回もサトルは正しかったのだ。

でも、サトルはきっと知らない。俺みたいな人間において抱え込むなという命令がいかに難しいかを。 


しかし、なぜだろう。胸がスッとした。身体もなんだか軽い。


「練習中の水筒の水は世界一美味え」とそう一言言ってサトルは練習に戻っていった。


 さっきまで降っていた大雨がおさまったからである。

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