第2話
「新キャプテンはオサムだ!これからはお前がチームを引っ張っていってくれ。」
それが全ての始まりだった。一個上の代のキャプテンはとても熱く、リーダーシップのある人だった。
その次が僕で務まるのだろうか。先生やOB、部員からの期待で潰されそうな僕の体に蝉の鳴き声が重く、五月蝿く響いた。
責任や期待なんて言葉は嫌いだった。僕を縛り付ける枷でしかなかったからだ。期待されることもなく責任も負わず自由でいたいが、そんなことはキャプテンという役割が許してくれなかった。
僕は逃げられないのだ。
風の吹かない日だった。キャプテン歴の浅い僕にとってこの日はとても辛い日となった。
その日先生は遅れてくることになっていた。いない間はみんなで考えて練習しろとだけ言われた。これこそ僕の嫌いなシチュエーションだ。
「キャプテン!次はどうしますか」
「キャプテン、これは無理では?」
「おいキャプテン、あいつらサボってるけどいいのかよ」
やめてくれ、僕に頼らないでくれ...。
そのまま部員はまとまることなく先生はやってきてしまった。
開口一番に先生は
「今までなにやってたんだ?おいキャプテン、チームバラバラじゃねえか。」
と立つ気力も無くなるような説教をされた。
違う、違う...!僕だけが悪いのか?僕がキャプテンだからダメなのかよ...。
煮えたぎる思いを胸にしまった直後、先生から放たれた言葉に頭は真っ白になった。
「前のキャプテンならこんなことはなかっただろうよ...」
気まぐれに吹き抜けた心地いいはずの風によって、汗をかいた背中が僕の心と同様に冷え切っていくのを感じた。
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