新生わからせ完了ルカヌス⑨
「ひどい……」
行為が終わり、着崩れを直したルカヌスが言った。
「初めてだったのに……あんなの」
あんなのって、ない。
まだジンジンとする下腹部を撫でる。
痛みはないけれど、冷静になった今、激しい
「不死王の血は処女の血よりもうまいと聞くが、その通りだったな」
吸血鬼ならば抗うことのできない誘惑だ。そう続けて、悪魔は私の髪にキスをした。
「吸血鬼にとって吸血は食事ではなく性行為という面が強い」
「じゃ、じゃあ血を吸っただけで、え、エッチなことなの?」
「エッチな気分になったらそれはもうエッチだ」
「……!」
じゃあ、私はどれだけ性欲が強いのだろうか。
一度に三人を吸血し、あれだけ不死王とまぐわいながら血を吸ったのに、まだ欲しいと思ってしまう。
「吸血鬼に転じる条件として、性欲が強いことが挙げられる。真祖なら尚更だ」
「………」
もう聞きたくない。
「淫らな女だ。二〇年も処女だったとは思えない。もしかして、毎日隠れて慰めてたんじゃないのか?」
「……!」
もうやめて。私を虐めないでよ、バカ。
「もう……あなたの女よ。好きにして」
悔しいけれど。とても悔しくてやり切れないけれど。
吸い付くように首筋に目がいく。唇の端から涎が溢れ、下腹部から液体が垂れる。
あの味を思い出しただけでこれだ。
あの味を知ってしまったら、もう戻れない。
「好きにしてほしいのはおまえだろ」
「んんっ……!」
再び体を貪られながら抱き寄せられた私は、長いキスのあと、首筋に牙を突き立てた。
もうどうにでもなればいい。
私は、吸血鬼だ。
そして、彼の王妃。
たくさん、彼を愛して愛して、愛されるの。
「――お取り込み中失礼します」
不意に気配が訪れる。上位
「どうした?」
「はい。えと……」
視線を背中に感じる。構わず、私は片足を持ち上げて彼に挿入をねだった。
この血と情欲を前にしてお預けなど、太陽の下に立てと言われているようなものだ。それに五人の上位幽鬼士には、私の痴態をまざまざと見せつけたばかり。今さら恥も外聞もない。
「ぅ、ぁ……っ」
「シンシア、要件を言え。早くしないと……やば、もう出る……ッ」
「ぁ、あ、あ、ふぅ、ぁ——あああああああっ」
膣内に注がれる高潔な液体。都合四度目となる射精だというのに、まだ衰えてはいなかった。
そのまま抜かず、再び腰を動かす不死王。狼狽えるシンシア。
「え、ぁ、えと羨ま――ではなく、ジュリアス・メアリィが目覚めましたのでご報告を」
「そ、うか。わかった、すぐに、行く……い、いくッ」
「は、ハイ……し、失礼します」
消えるシンシアの気配。ほぼ同時に、漏れる液体に栓をするように、再び液体が放たれた。
「……早漏」
「くぅ……コントロールが難しいな。それにおまえも使ってるだろ……性魔術……!」
「だって、もっと私に夢中になってほしいんだもん」
「もんって、おまえ……!」
虚空から小瓶を取り出し、中身の液体を飲み干した不死王。するとすぐに、
「絶対に孕ませてやる……!」
「孕ませて……私のこと、孕ませて……! あなたのあかちゃんジュースたくさん注いでぇ!」
最終ラウンドへ突入した私たち。もはや他の誰にも止めることはできない。たとえ教会の全勢力が集結したとして、この聖剣を手放すことはできなかった。
それから約一時間が経ち――
私と不死王は、身だしなみを整え女が眠る部屋に移動した。
「わたくしは処女です」
「——は?」
開口一番、とんでもない暴露をはじめた冒険者。ジュリアス・メアリィ。
ベッドの上、特殊な鎖に繋がれた彼女は、顔を赤くしながら悔しそうに言った。
「わたくしはこのまま、無様に散らされるのでしょうね……! 得体の知れない不死種に、屈辱の限り何度も……何度もッ」
「………」
「………」
目を合わせる私と不死王。まだ指一本、触れてすらいないのに調教済みとはどういうことだろう。
「絶対に屈しません……! わたくしの誇り高き黄金の精神は、貴方ごとき穢らわしい粗棒に屈したりはしませんわ……!
ああ、可哀想なジュリア。前世は無法地帯で風俗嬢だったのに、今世でも体を殿方にいいように使われるなんて……んんっ」
湿った声音で、艶かしく熱い視線を不死王に送りながら、指先を下半身にそわせた女。状況判断からやってくる想像だけでこうも性的興奮を覚えているなんて。
筋金入りの変態だ。
流石の不死王ですら引いていた。が、ネクロ式精力剤を直前に飲んでいた彼は、やる気満々の様子。
「せっかくだし、不死種にする前に教育をしてやろう。徹底的に」
「不死種しか愛せないという設定はどこへ?」
確か、勃たないとも。
「バカを言うな。設定ではないし、これは愛ではなく怒り、憎悪を伴った鉄槌。いわば、生を貶める行いであり、儀式を円滑に行うための前段階だ」
「ふぅん……私の前で、他の女を抱く気なのね」
チクリと何か鋭いものが胸に刺さったような感覚。口に出すつもりなんて毛頭なかった想いが溢れた。
「妃って言ったのに……」
「う、む」
酷い。あんなに愛しあったのに。
出会い方は最悪で、まだそう長い時間を共にしていないけれど。
私はこんなにも——こんなにも、あなたを愛しているのに。
「好きなのに……」
「……っ、る……ルカヌス。彼女に、人間の限界を超えた快楽を味合わせてやれ」
「……むぅ」
命令口調だが、命令ではないその言葉に私は非難の目線を押し付けつつも了承した。
彼は照れ屋なのだ。仕方がない。恋愛経験も薄いだろうし、それは私にも言えることなのだが。
「眷属にしない程度になら血を吸うことも許可する」
「く……っ! 焦らすおつもりですね! いいでしょう、受けて立ちますわ!」
すでに蕩けきった顔の淫女。私もベッドに上がり、彼女の足先からなぞるように上へ移動させていく。
太もも、腰、お腹、胸、首、そして耳。
かわいらしい耳に唇をくっつけて、私は息を吐いた。
「もうビクビクしてる」
「……!」
「でもまだ足りない。もっとここをぐしょぐしょにして、エル様をお迎えする準備をしましょうね」
「———」
声だけで果てた女に体を密着させて、私は儀式をはじめた。
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