個別ルート149




「姫のこと? 存在?」


 突然告げられた言葉に本日再びの思考停止が起こる。

 姫が? どういうことだよ。


「言葉の通りだよ。今、彼女の状況は非常によろしくない」

「よろしくないって?」

「神の座を下ろされるかもって意味に捉えてくれて構わないよ」

「!?」


 姫が神じゃなくなる!? なんでそんな、


「思い当たる節はないかい?」

「そう言われてもなぁ……」


 正直なところ考えてみても一向に分からない……てか待って?


 お互いに産まれたまま、いや辛うじてタオルで隠しているといっても眼前にはお姉さん。それも角持ちとは角ガチ恋勢の方がいたら興奮物だろう。冷静に考えてみたらやばいわ。


 俺がまともで良かったねお姉さん。


「……まあなんだろうね。興奮されるよりは良いけど……そんな思考の垂れ流しは良くないよ? 今は露音姫の話なんだから」

「え……」


 なんで……別に喋っていないのに……


「そりゃあ神だからね、思考を読むなんてお手のもんさ」

「うわはっず!!!?」


 嘘だろ!? 今の今まで考えていた事が筒抜けだったってこと!? や、止めてくれよ冗談は……、


「角ガチ恋勢かぁ……君がそんな奴じゃなくて良かったよ。この状況……襲われていても文句は言えなかっただろうね」

「マジすいませんでした!! ここからは雑念無しで行きます!!」


 どう考えても雰囲気的に姫より落ち着いていることからこの人は上位の神様だろう。先輩神様的な? よく分からないけど失礼が無いようにしなければ。


「ん、理解が早くて助かるね。それに上位神というのも正解だ。まあ直属の上司というか他部署の仲の良い先輩神様とでも思ってくれて良いよ」

「よろしくお願いします!! パイセン!!」

「ぱいせん!?」


 お、驚いているな。

 やはり先輩といえばこの呼び方だろう。


 まぁ君がそれで良いなら良いよ珍しい呼び方だしね、と普通なら馴れ馴れしい筈が嬉しそうに笑うパイセンは湯舟から上がると、


「透君どうだい? 背中洗ってくれないかな?」


 大人のお姉さんからの誘いを断る理由もないので、


「うっす姉さん!! 背中磨かせていただきます!!」


 えぇもう! 鏡かと思うレベルでピカピカにしてやりますよ!!

 

「それは良いね。是非頼むよ」

「はい喜んで____って待って? 既にツルモテお肌なんですがそれは?」

「さてそんなことより話だ」


 俺の驚きを他所にパイセンは語り始める。


「彼女は現在神のルール違反について咎められている」

「ルール?」


 そんなものがあったのか、よく考えてみると姫に関わることを一切聞いたことがないから知らなかった。どんなルールなんです?


「なに基本的には自由さ、その所為で何年も暇なんだけどね。 不滅の存在の辛いところさ」


 ただ、


「”一個人への過度な干渉を禁ずる”露音姫はこれに違反しているんだよ」

「え……」


 そんなことで?


「と思うだろう? でもこれだけは駄目なんだよ。我々という存在は個々がとんでもない力を秘めているからね、過度なのは駄目なんだよ」

「なるほど! 把握しました!」

「……本当にわかってる?」


 正直よく分かってないが返事だけはしておこう。


「へ、返事だけは立派だねお姉さん的にはポイント高いよ」


 あ、やった褒められた!


「とりあえず分かってないことは理解したよ。そうだねぇ……直近だと君の後輩にかけた呪いとか複数の時間軸への干渉、そして時間停止……直近でこれだよ」

「あ、そうか」


 そういえばそんなこともあった。姫が某子守用ロボット感があってあまり気にしてなかった。


「あれだよ? 主に君が原因だよ?」

「……え」


 嘘だろなんで俺……? そんなわけ____


「君の死を常に回避する為に力を使い、時間停止や呪い……全て君の為に行ったことだね」

「あ、確かに……」

「後は複数の前世の君にも関わっているけれど……まあ良いね今は」


 え、いやそこまで言ったら言ってくれない? 一番気になるやつ……


「ん? お、これは……すまないね。そろそろ失礼するよ」

「も、もう?」

「うんごめんね。なかなか降りるのが難しいんだよ」

「そうなんですか? あれか絶大な力の所為で人間世界に影響とか」

「あ、いやシンプルに仕事が終わってなくてね……実は今もトイレ休憩ついでに降りて来てサボってるだけなんだ……」


 おい神様!! 一気に親しみ感が出たぞ!!? わりと聞くやつだぞおい!!?

 てかトイレ休憩行ったやつが風呂上りの良い香りしてたら秒でバレるだろ!!


「あ、しまった……確かにそうだったよ……」

「気付いてなかったの!!?」

「と、ともかく君がキッカケでこんなことになったんだからなんとかしてくれよ!! 露音姫とは呑み友だからいなくなったら困るんだよ!!」


 うわ!! ミステリアスな美人キャラを偽った私的なことを言ってくるやつだった!! めんどくさ過ぎる!!


「伝えたからね!? 頼んだよ!?」

「いや何を伝えた!!? アイツが大変なことしか分からなかったけど!? 待ってくれよ____!!」


  説明を求めたが残念なことに光の粒子となり、その場から消えてしまったパイセン。もうこれどうすれば良いの……?




 よし。




「……とりあえず風呂を堪能しよう」


 思考を放棄し再び風呂に浸かる。


 ……そうかこれはアレだ。

 



「今考えても知らん。全ては明日の自分に任せよう……」




 結論、これに尽きる。

 明日の透さん、貴方に全てを任せます……。



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