通常ルート128 海編③



 待つことおよそ三十分。


「透お待たせ……」

「先輩遅くなりました……」

「本当に待った____いやテンション低いな」


 姫と遊んでいると露骨に元気の無い心と景ちゃん、それと他の皆がやって来た。

 姫の時と同様に待たされたことに対し言おうと思ったが、


 そんな考えが吹っ飛ぶぐらいに二人の水着姿が衝撃的だった。

 決して水着が魅力的で、とかそんな意味ではなく。


「な、何故にスク水?」

「「……似合うかな?」」

「いや似合うぞ? そりゃ十何年生きてて最も見慣れた水着だしな?」

「「……」」

「おい露骨に凹むなって!」


「心も海野も馬鹿なのよ」


 全く、と杏理が呆れながら腕を組んでため息を溢す。そんな姿をジッと俺が眺めていると杏理が俺の視線に気付き一言、


「な、なによ……」

「いや水着似合ってるなと」

「____ッ!? どこ見てんのよ変態!!」

「逆に何処を見ろと!?」

「うっさい! 馬鹿!」


 罵倒という名の捨て台詞を吐き、離れて行ってしまうツンデレ金髪ツインテールさん。やはり杏理は面白い……それにしても、


「今だにスーパーフラットとは」


 心、景ちゃん、杏理を見比べてみても殆ど違いがない。いやそれどころか杏理を除いた二人はもはや平面というか……二次元というか……。


「とー君?」

「は、はい!?」

「どこ見てるのかな?」


 哀れな二つのスーパーフラットを眺めていた時、真白がどこからともなくナイフを取り出し俺の喉元へ突きつける。

 いや本当に何処から出したんだよ、と疑問が浮かんでいると真白が自身の太ももを指差した。よく見るとそこには何かがある。


「太ももにナイフを入れるベルト着けてるの」

「マジかよ」


 改めて見てみると確かにナイフを収納出来るようになっているのは分かったが、なんだろうか……しっかり固定するために着けられたベルトが太ももに食い込んでいて、さらに水着姿というのが……、


「これ見るやつによってはフェチが歪みそうなんだが……」

「とー君?」

「なんでもないです」


 これは余計なことを言わない方が良さそうだ。それにしても心と景ちゃんが何故スク水なのか気になってしまっているわけなのだが?


 疑問を持ち二人を眺めていると、


「あ〜透が僕のこと見てる!」

「何言っているんですか? 先輩は私のことを見ていたんですよ? 良い眼科勧めましょうか?」


 無駄な争いは辞めなさいな。

 全くお前らは、と何も言わずに黙ろうと思ったが突然身体の自由が失われ口だけが動き出した。

 

「誰が二人のこと見てるかよ。俺は人気ゲームのマインなクラフターじゃねぇんだ。平地より出るとこ出てる山岳地帯が良いんだよ」

「「……」」

「ほら見てみろ真白や天を、立派な山岳地帯だろ? ロッククライマーじゃなくても登りたくなるわ」


 あ、自由が戻った。忘れてた俺にはいつも呪い先輩が見守ってくれてたんだったわ……。


「「え、殺したい」」

「待て待て待て! いっつジョーク! 透さんジョーク!!」

「とー君が私のことそんなふうに見てるってよく分かったよ……」

「誤解なんです真白さん話を聞いてください!」


 クソ呪いめっ!! これじゃ俺が胸にしか興味のないクソ野郎みたいじゃないか!! 酷いわ! あんまりよ!!


 これは例えに出した天も怒っているだろうか、いやアイツ程の変態なら言われた事を喜んでいるかもしれない。さすが変態安定の変態さんは助かるな。


 そうして買い物の時に見た物と同じ黒い水着を身に付けた天を見てみる。


「ご、ご主人様……あまり見ないでくれないか……恥ずかしいだろう……」

「え……今更では……? あ、うんごめんなさい」

「透……てめぇお姉様にセクハラとか良い度胸だな? どうやらこんな昼間から汚ねぇ花火になりてぇようだな?」


 勘弁してください俺じゃないんです。全ては呪い秘書がやりました。

 てか乱華も水着良いな、髪型もいつもと違って可愛い。


「お、お前! 本当にそういうところだぞ!」


 え、何が?


 イマイチ言ってることが分からんが、どうやら褒めたのが良くなかったのだろうか? ギャルゲー人生の教科書をプレイしていても女子心は分からないな。


 しかし改めて思うが皆美少女過ぎないか? 俺以外の顔面偏差値が高過ぎるだろおい。


「透なに考えてるの? 僕達のことジロジロ見てさ」

「いや皆可愛いなと思ってな、天と乱華は可愛いというか美人? というかな?」

「もう先輩ったら! 褒めても何も出ませんよ?」

「……全くとー君は平気でそんなこと言うんだから」

「ま、まあ? 私が可愛いのは当然だけどねっ? 透に言われてもぜ、全然嬉しくないんだからねっ!?」

「他の奴も褒めてるのは癪に触るがよ、褒められるのは悪くねぇな」

「私は褒められるより罵られる方が良いのだがね」


 あ、良かった。こんな状況でも天はいつも通りで安心したわ。


「そんなことより早う遊ぶぞ!! 時間は有限じゃからの!!」

「ちょい! いきなり走るな!」


 こうしてギャルゲーでいうところの大きなイベント、海水浴イベントが始まった。



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