通常ルート127 海編②



「どういうことだ?」


 突然の心からの誘いを受けて仕方なく海に行く支度をし、何故か家の前に停められていた車に乗せられ到着した場所は俺のよく知る場所だった。


「なんで乱華と天の家の神社に?」


 そう、爆弾娘と帯刀娘の東鐘姉妹の実家であり地元民のよく知る”星空神社”に俺達は何故か降ろされ、言われるがまま長い階段を登って神社の敷地内へと着いた頃、俺は皆に疑問を投げかけてみたわけで。

 さあどうしてでしょう? と俺と同じく何も知らされていない景ちゃん。


 そりゃそうだ、なんだったら景ちゃんは心の策略により一人ハブられる所だったわけだし、知るわけがないだろう。けれど皆は違う筈だ。


「どういうことだ心?」

「それは____」

「これについては私が説明をしようご主人様」


 心に理由を聞こうとした時、天が会話に割って入った。

 もう誰でも良いから早くこの状況を教えてくれ。


「ご主人様は知らないと思うがウチの神社はかなり広いんだよ」

「いや広いのは知ってるけど、それが今なんの関係が」

「後ろの山」

「え?」


 天の指差す方を見るとそこには神社の奥に見える山が一つ、高い階段を登って来ていることからこの神社自体が山の上に建てたのが良く分かるけれど、一体それがどうした。


「この神社の階段から後ろの山、そしてその奥の海岸までも東鐘家の敷地なんだよ」


 嘘だろマジか!!?


「因みに道も整備してあるから海まで直行さ」

「いやとんでもねぇな!!」

「それと今日はウチに泊まりだよご主人様」

「聞いてないですけど!?」

「大丈夫だよ僕が着替えとかパンツとか用意しといたから」

「心さん一体いつ用意したんだよ! さっき家出る時は海に行く支度しかしてなかったぞ!?」

「昨日の夜中に家にお邪魔して用意しといたよ」


 不法侵入ですけど!? 

 この親友遂に一線を超えやがったな!? 通報してやろうかコイツ!!


「そんなことはどうでも良いじゃん! もう荷物は朝のうちに乱ちゃんと天先輩の家に持っていってあるから海に行こうよ!!」

「嘘やん」


 逃げれなくされた! 退路を塞ぐってレベルじゃねぇぞ!!


「よし! いざ海へ出陣なのじゃぁ!」

「「「「「「おぉーーーー!!!」」」」」」


 あ、なるほどこれは強制イベントだったのか……(諦め)







「はぁ……」


 少し前の記憶が脳内に流れ思わずため息が溢れる。無理もない優雅な朝から一変して激動の朝へと変わったのだから疲れもする。


「それにしても本当に誰もいないな、これがプライベートビーチか」


 星空神社から裏山に向かい、舗装された道を少し進んだ先にあった綺麗な浜辺、ここが私有地というのだから半端ない。


「一庶民の俺からしたら考えられないな」


 などと考えながらパラソルの下で女性陣を待っていると、


「待たせたのじゃ透……」

「遅かったな姫待って____」


 海を眺めて黄昏長い待ち時間を経て聞こえたのは姫の声。

 その声の方を向きながら待たされたことに対して文句の一つでも言ってやろうとしたが、発した言葉が喉元で留まった。


「な、なんじゃ……言いたいことがあれば言うてみるのじゃ……」

「あ、いや」


 正直言葉が出ないというのが正解だ。

 太陽に照らされて赤髪赤眼が宝石の様に輝き、髪型はいつもと違うがそれがまた似合っている。そして問題は水着、これは前に買いに出掛けた時に試着した水着を着ていた。

 姫の赤い髪に合うようにベースは大人っぽい赤色だが装飾されたフリルのおかげで子供らしさも同化しており、一回見た筈なのに海というロケーションが合わさって……、


「最高に可愛い……」

「な、なんじゃいきなり!? ほほほほ、褒めてもなんも出ぬぞ!?」

「うちの神様可愛過ぎだろ」

「ぐぬ……というか透よお主なんで泣いておるのじゃ……」


 え、嘘……あ、本当だ泣いてる。気付かなかったわ。


「ふむ、泣く程似合っておったのか? まあ良いじゃろう。ほれほれもっと神である儂に見惚れても良いのだぞ?」

「いや見惚れていたのは事実だぞ。本当に可愛いから」

「う、五月蠅い黙れ!! 呪い殺すぞ良いのか!!?」

「いや何故に!!?」


 いきなりの暴言過ぎて流石に驚くわ。てか姫にハッキリ”殺す”って言われたの初じゃないか? あ、いや覚えてないだけか? まあいいや。


「全くお主は全く……」


 ブツブツ、と何やら文句を言う姫は俺の隣に座りなにやら液体の入った容器を渡してきた。え、なにこれ?


「”おいる”? 女子達あやつらに渡されたのじゃ」

「なんそれ?」

「あれじゃ”太陽光対策予防液”じゃ」


 日焼け止めじゃねぇか!! 難解過ぎるなぞなぞやめろ!!

 

「で、これを塗れと?」

「そうじゃ早うしろ」

「お前ならゴッドパワーでなんとかなんだろ」

「その神力でお主の背中に”亀”と彫られたくなければ早う塗れ」

「国民的戦闘民族愛用の道着を着てないのに俺を亀仙流にするな!! 塗るから塗りますから!!」


 脅されながらも日焼け止めを塗り始めると、そういえば、と姫が何かを思い出したような声を発した。


「他の奴らはもうしばらく遅れるのじゃ」

「え、なんで?」

「心と景が阿呆な水着を持ってきた所為で天と乱華が家まで古い水着を取りに行ったのじゃ」

 

 何してんだアイツら……、因みにどんな水着なんだ?


「心は絆創膏なのじゃ」

「あ、待って? もうおかしいわ。それ水着じゃないし」

「景は」

「景ちゃんは?」

「そもそも水着を持ってきてないのじゃ」

「……わ、忘れたとか?」

「いやお主を悩殺する作戦で全裸で____」

「マジでアイツら通報してやろうか!!?」


 本当になにしてんだよ……とりあえず姫? 先に海で遊ぼうか……。



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