通常ルート126 海編①
「暑……」
あまりに強い日差しと熱気。
ジッとしているだけでも汗が噴き出てくる八月中旬に、俺は太陽から降り注ぐ熱視線からパラソルに入るという解決策で逃れていた。
「いやにしても暑いわ……」
誰もいない綺麗な海で俺は一人水平線を眺める。
そんな寂しい中、事の発端たる今朝のことを思い出す。
◆
「透よ、ふりかけを取ってくれなのじゃ」
「ん、なに味だ? ”しゃけ”か?」
鮭の躍動感のある絵が描かれたパッケージの小袋を手に取り見せると、
「ふりかけと言ったら”のりたま”に決まっておろうが! 本当にお主は阿呆じゃのう」
イラッ
「んあぁぁぁぁ」
「ぬあぁぁぁぁ!!?」
怒りを覚え俺は手に取った”のりたま”の袋を開けて自身の口へと全てを流し込んだ。
全くせっかく清々しい朝だとボリボリ……いうのに、なんで人のことを罵倒するかねボリボリ……姫の悪い癖だぞ? 気をつけボリボリ……ろよな。
「お、お主ぃぃぃ!! なに全部喰らっておるのじゃ!! 吐き出せぇぇぇ!! 今すぐ吐き出せぇぇぇぇ!!!」
「美味いなぁぁぁぁぁ!!!」
「ぐおぉぉぉぉぉ! 処す! 絶対処す!! 呪いも増加じゃ!!! ブッコロじゃブッコロ!」
「あとで新しいやつとデザート買ってやるよ」
「なら許すのじゃ」
チョロいな、心配になるレベルだ。
姫の今後を心配しながら二人で優雅な朝食を味わっていると、玄関から鍵を開ける音が聞こえた。
大方、心が勝手に入ってきたのだろう。もう慣れたものだ。
「いやそれは慣れてはいかんじゃろ」
細かいことは良いんだよ、そんな気にしているとアイツらとは付き合えないぞ?
さて、じゃあ不法侵入してきた親友を出迎えるとしようか。
「おーい心どうしたこんな朝っぱらに……」
茶碗と箸を一度テーブルに置き玄関の方を確認してみると、
「え……なんで皆いるんだ?」
そう皆がいる。主人公とヒロインズいつものメンツだ。
心や真白と杏理、東鐘姉妹の勢揃いで……あれ? 景ちゃんがいないぞ外にいるのか?
「透おはよ!」
「あ、はいおはよう心」
「おはようとー君って何してるの?」
「おはよう真白……え、朝ご飯中ですけど?」
「透遅いわよ! 何してるのよ!」
「杏理落ち着けよ? 牛乳飲むか?」
バックの牛乳を見せ、聞いてみると俺がまだ飲んでる途中の牛乳の入ったコップを奪って飲み干してしまった。
えぇ……それ俺のなのに……。
「透おはよう。サッサと行くぞ」
「お、おうおはよう乱華……え、何処に?」
「ご主人さ____」
「うるせぇ雌豚、飯食ってんだから大人しくしてろ」
「ブ、ブヒィィィ♡」
段々と繰り返される挨拶に嫌気が差してきたので天でオチをつけ、味噌汁を啜りながら彼女らに聞いてみることにした。
「で、どうしたんだよ皆こんな朝早くに?」
「透! 海行くのっていつだっけ??」
コチラに質問する心の発言に忘れてしまったのかと思い、素早くスマホのメッセージアプリを開いて約束の日を確認して安堵する。
「明日だよな? ほら心からのメッセージもあるし」
送ってきたのも心だろ? と聞き返すと心はニコニコしながら頷く。
「そうだね僕が送ったやつだね」
「だよなそうだよな? 良かった間違えてなくて……」
「透! 透!」
「ん? どうした心?」
「サプライズだよ!!」
……
…………
………………
え、何が?
「実は透に教えてた予定の日は嘘でしたー!」
「え」
「透を驚かせたくて内緒にしてたんだよ!」
「何故に?」
「本当は今日なんだよ透!! 早く行こう早く!」
「朝ご飯中なの見えない??」
「サプライズだよサプライズ!」
いやその言葉そんな万能じゃないから!? どう考えたって迷惑過ぎんだろ____っておい!! お前ら人の部屋勝手に荒らすな!! 止めろパソコンは触るな!!
姫も言ってやれよ! こんないきなり言われても準備ができてないってよ!!
「ぬ? あ、儂はちゃんとした日を聞いておったからの、準備は万端なのじゃ」
言! え! よ!
コイツ本当俺の困る姿が好きなのか性格が終わってやがる! 外見は可愛いのに本当にタチ悪いわ!!
「透! 早く準備して行くよ!」
「いやいや待てよいきなり過ぎるわ!! 全然準備出来てないし、そもそも今日俺に予定があったらどうしてたんだよ!! 今日は無理だ! 俺は今日グダグダして過ごすんだ____」
瞬間、包丁が俺の眼前にあった。
もちろん包丁だけではない。首にはナイフが置かれ、顎下には拳銃、乱華はダイナマイトを構え、綺麗な波紋の刀が胴に向けられている。
「「「「「早く」」」」」
「イ、イエスマム……」
あ、この感覚懐かしいなぁ……(諦め)
~おまけ~
「そういえばなんで景ちゃんはいないんだ?」
「あの生意気なクソ後輩にはちゃんとした日を教えてないから」
お前は本当に仲悪いな……もうちょっと仲良くしてくれよ……。
すると、再び部屋の扉が勢い良く開き放たれた。
「隣からでも聞こえてますよ。男女先輩貴方本当に幼稚なことしますね。不愉快ですからぶっ殺してあげましょうか?」
「はぁ? やってみなよ? お前のその不細工な顔もっとズタズタにしてあげようか?」
「あ?」
「あ?」
まーうんある意味仲良いのでは? よしこれで全員集合ですねぇ!!
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