個別ルート124 紫 オフ会④



 グレープ侍改め、紫先生とのオフ会が始まってしばらく、何故か俺達は突然現れたアサシン少女真白ちゃんの恋バナを聞くという展開になっていた。


 なんだこの超展開……?


「では改めて、初めましてジョニエルさん私は星空高校二年の琴凪 真白です。紫先生はクラスの担任なんです」

「は、初めまして……ジョニエルです……」


 グッ!! 恥ずかしい!! 何が恥ずかしいって、目の前で俺の正体を知っている先生の前で別人のフリをするのが一番恥ずかしい!!


「ぶふっ」


 おい笑ってんじゃねぇよ!! アンタの為でもあんだろうが!! 夏休み中にオシャレして生徒とカフェに来てるとか、バレたらアンタの教師生命もヤバいだろうが!!


「えっと名前がジョ……?」


 ジョニエルです。


「ご出身はどちらなんですか?」

「ぐふっ……」


 え、どこ? ヘイジョニエル? 出身は何処なんだいジョニエル?


 間違いなく名前的に外国だろう。ただ俺の頭はそこまで良くないから思いつかない。


「「「……」」」


 ヤバい! 沈黙が痛い!!

 正直なところ今の動揺している俺にこの状況を切り抜ける力はない。ならばどうするか……いやその結論はもう出ていた。


 ここで俺の忘れてはいけない情報として一つ、俺には嘘がほぼつけなくなる”真実の呪い”先輩というものがあるが、姫の所為でその呪いには”余計なことを言う”という追加効果もあるのだ。ならつまり、


 ここはこの効果に頼ることにしよう。

 なぁにもうこの呪い達とは仲良くしているんだ、アイツらならやってくれる筈だ。


「え、えっと……ご出身は……?」

「出身? 出身かい?」


 さあ、やってくれ呪いパイセン!!


「上かな……」

「う、上? 北ですか?」

「あぁそうだぜっ北だ」

「北の国となると……」

「あぁそうさ北海道スノーワールドさっ!」

「スノーワールド?? 北極的な?」

「オウ! イエス!」


 あ、ダメだコイツ……。

 でももう駄目だ。口が勝手に動いてるわ。


「フルネームって……?」

「ジョニエル……」

「ジョニエル?」


 ジョニエル? 何?


「ジョニエル・J・クロフォード さっ!」


 おのれはどこのモンスターズの生みの親だゴラッ!! 代われ! 今すぐ俺に身体のコントロールを返せ!!


 と思ったところで一向に身体の自由は戻ることなく、


「なんかどっかのカードゲームの生みの親みたいですね」

「あはは、それな」


 もう本当に助けてくんろう……。




「それで話なんですけど……」 

「あ、うんうん。そういえばそんなこと言ってたわね。ジョニエル関連の所為で忘れてたわ」


 ジョニエル関連は俺が原因じゃないですからね? 主に姫が悪いですからね?

 それに俺の身体はいつ解放されるのだろうか……?


「実は私、昔から好きな二人がいるんですけど」

「「うんうん」」

「それが二人とも同じくらい好きだったんですけど、片方の自分を顧みない優しさにイライラして一方的に敵視? しちゃってて……」

「あー分かるぞ! 自分のことも大切にしろってな!」

「ゆかりちゃんも分かる!!?」

「おう分かるぞ!」

「ゆかりちゃん!」

「琴凪!」


 お互いに理解出来る何かを感じ取ったのか、二人は力強い握手を交わす。

 分かるよジョニエルにもね、自分を顧みないのは駄目だよね? 自分のことは自分が一番大切にしないとね、うんうん。


「少し前まではまともに話せなくなってたんですけど、とあることがキッカケでまた話すようになったんです。それで久しぶりに接するようになってソイツのことがずっと好きだったんだなって知れまして……」

「良いわね。時間を空けたことで認識するやつだな」


 先生おばさんっぽいわよ? ……あ、すいません睨まないで?

 

「一緒に出掛けたり、助けてくれたりとか、最近だとなんでも自分だけで解決しようとしてたアイツが……頼ろうとしてくれて……」

「それが嬉しかったと?」

「はい……」

「良いわね良いわね! 青春してるわねぇ! ねぇジョニエル!」


 え、そんないきなり言われても、


「オウ! そうだねユカリン!!」


 呪いお前は黙ってろ!!


「でもソイツの事を好きな人もいっぱいいて、私の親友もソイツのことが好きなんです……」

「諦めた方が良いかな、と?」

「……はい」

「んーなるほどなぁ……」


 幼馴染とはいえ知らないことはいっぱいあるようだな、まさか真白がそんな考えをしてるとは……というか、


 まさか真白にも春が来たとは……ヤバい感動して涙が……


 ここはなんか気の利いたことを言いたい。一人の幼馴染として、ただ未だ身体の自由が効かないわけなのですが……。


 そんなことを考えていた時、突然俺の身体は勝手に動きだし余計な口が開いた。


「マインドスキャン!!」

「え?」

「ぶふっ!!」


 は?


「貴女が想う悩み、長く想い続けた結果の苦痛、その気持ちとても尊いものでーす」

「ジョニエルさん? キャラが定まってないですよ?」

「ですがそこまで考える必要はありませーん。貴女がやることは一つでーす」

「あ、無視ですか……それはなんですか?」


 すまんな真白、俺もコントロールできないんだ……。

 そしてジョニエルは真白の顔を真っ直ぐ見て言い放った。




「YOU告っちゃいなよ」

「「へ!?」」




 あ、身体の自由戻ったわ……え、待って?


 なんちゅうところで俺に返してくれてんの!? やるならキッチリ最後までやれや!!



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