個別ルート110







「心ここよ。ここでお昼を食べましょ」

「へぇ〜杏理ちゃんこんな所で食べてたんだね。僕達と一緒じゃ嫌だった?」

「え……あ、いやそうじゃないのよ?? それは……そう! 雨上がどうしても私と人気の無い場所で食べたいって言うから仕方なくね!?」

「おいコラ嘘を言うな嘘を」


 ……本当なの透? って心の眼光が怖いじゃないか。その子最近超人に進化してきてんだからマジで怒らせないであげてくれ。

 俺の命なんて今じゃ何が原因で無くなるか分からないんだからね??


 君達と違って俺はただの一般人なんだぞ? 

 例えるなら地球人のク◯リンが戦闘民族や、緑色触角星人達と一緒に修行したり強敵と戦ってるあれだよ。

 いくら地球人最強でもあんな超人達の中にいたら可愛らしい子猫みたいなもんだからな。

 

 ゴリラな君達と、可愛いハムスターな俺なんだから丁重に扱ってくださいお願いしますはい。


「「今ゴリラって思った??」」

「お、思ってないのだ」


 ラッキーだ、真実の呪いパイセンも空気を読んでくれたらしい。

 そうだね。ここで本音を言ってたら死んでたからね。乙ってたからね。危ないね。


 ついつい何処ぞのアニメのハム◯郎みたいな喋り方になったわ。危ない危ない。


 そんな思考を永遠に繰り広げていると、杏理が階段に腰を下ろした。


「とりあえず座りましょう。ここなら滅多に人は来ないんだから」

「そ、それもそうだな。ささ心! 杏理の隣に座ってくれ! ささ!」


 じゃあ失礼します、と杏理の隣に心が座る。


 回転寿司打ち上げから翌日、学校の昼休みに杏理や心と共に約束の昼飯を食べる為、いつもの廊下奥にある階段へと来ていた。

 緊張からか強張った面持ちの杏理は少し頬が赤くなっているので、ソッと声をかける。


「大丈夫か杏理?」

「だ、だだだだ! 大丈夫って何よ!? なななな! なんのことかしら!!?」


 己はどんだけ緊張してんだよ……。大事なところで舌を噛むなよ??


 とりあえず俺はサポートに徹するとしよう、と座る二人から少し離れて自動販売機に向かい、三人分の飲み物を購入し手渡した。

 杏理にはミルクティー、心は麦茶、俺は相変わらずココアだ。


 因みにだが心は炭酸は苦手だし、食事の際はジュースなども飲まないので必然的にお茶か水になる。今回は俺の気分でお茶となった。

 お礼と共に飲み物を受け取った二人、僅かな沈黙の後に杏理がお弁当を心に渡す。


「こ、心!! これ食べて欲しいんだけど!! 私が作ったお弁当!!」

「良いの?」

「も、もちろん! 心に食べて欲しくて作ったのよ!!」

「ありがとう凄く嬉しいよ杏理ちゃん!」


 じゃあ早速、と可愛らしいお弁当の蓋を開けると、心は嬉しそうな声をあげた。


「わぁー凄い美味しそうだよ! 見て透!!」

「本当に美味そうだな」


 美味しそうなお弁当には心の好きな厚焼き卵やアスパラベーコン、それにこれまた心の好きなポテトサラダとプチトマトが添えてあり、見た目的にも大変食欲をそそる素晴らしい出来になっている。


 ただ一つ心が思ったことは、


「ご飯の代わりにいなり寿司なんだね。透の好きなやつじゃん」

「え、あ、本当だ」


 え、何故に俺の好物を気になってる奴のお弁当に入れるの?


「……最近いなり寿司作るのにハマってるのよ」

「「あーなるほど」」


 ハマったなら仕方がないな、これもいなり寿司の持つ魔力というものかね? さすがいなり寿司最強だな。

 うんうん、と一人納得をしていると心がお弁当を食べ始め、目を見開き声を上げた。


「美味しい!! 美味しいよ杏理ちゃん!!」


 頬張り膨らんだ頬を押さえ目を細めて「ん〜♡」と唸っている。料理が上手な心がここまで喜びを表すとはよほど美味しいようだ。

 杏理の努力を近くで見ていた者としては正直自分の事のように嬉しく思う。


 が、当の本人はというと、

 

「ふ、へ、へぇ〜? な、なら良かったわねぇ〜?」

「って、おいおい」


 嬉しそうに笑顔を見せたくせに一瞬でクールぶりおってからにコイツは……全く、


「良かったな杏理」

「べ!? 別に全然嬉しくなんかないんだからねっ!!?」

「おぉ……もはや伝統芸と化しているぞ……」

「……うっさいわね」


 照れる杏理は再び黙ってお弁当を食べ始めてしまった。


 どうしたのだろうか、このままじゃただお昼を食べるだけで終わってしまう。

 杏理は心に何かを伝えようとしたのではないのだろうか? それともただ料理を振る舞うだけ?


 正直気になりはしたが、ここで俺が余計な事を言うのはおかしいので大人しく三人で昼飯を食べ進め、しばらくしてご飯を終えて弁当箱などの片付けを済ませた後、突然杏理は真剣な表情で心に向けて言い放った。


「ねぇ……心?」


 なに? と聞く姿勢に入った心に杏理は大きな深呼吸をしてから突然告げたのだ。




 


 私、アンタのことが好き____だったの。




 と、


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