個別ルート109
◆
あれから数日後____
現在俺達は待ちに待った体育祭の打ち上げ場所の回転寿司へとやって来た。
人数は俺と姫、いつものヒロインズでの計八人といつものメンツだ。
誘ってはみたが残念ながら銀ちゃんはゲームの開発が忙しいとかで不参加となった。銀ちゃんとはまた個別で行くとしよう。
「お待たせしましたー! お客様はえーと……」
「八人でお願いします」
店員さんは人数を聞き、コチラを改めて数え確認すると、
「そうしますと、席を二つに分けて四人で分かれて座って頂く形になりますがよろしいでしょうか?」
提案をしてくれた。
それもそうだろう。流石に八人が一緒に座れる席がある方が驚くしな。
「皆それで良いか?」
「じゃあ僕は透と一緒」
「私はここちゃんと一緒だから必然的にとー君と同じ席だね」
「ほら私は怪我人じゃない? 何かあった時の為に雨上の側にいた方が良いと思うのよね。べ、別にアンタと一緒にいたいわけじゃないのよ?」
じゃあ別に席別で良くね?
「ペットはご主人様と一緒にいるのが当然だからね。私はご主人様と同じ席だろう。乱華はどうする??」
「お姉様わざわざ言う必要あるか? もちろん透と一緒に決まってんだろ」
おーちょっと待てよお前ら、
「えーとね? 四人ずつで分かれるって言ったよな?? おかしくない? 既に席の内訳が全然分かれてないんですけどお前らは計算も出来んのか??」
見てみろ店員も困ってるだろうが全く……、呆れてため息を溢すと、隣の景ちゃんが皆に告げた。
「皆さんあまり先輩を困らせないでください。ここは揉めないで潔く分かれてください良いですね? 他のお客さんに迷惑ですし」
「おー珍しく景ちゃんがマトモなこと言ってる……感動したわ」
「皆さんは好きに決めてください。私は先輩の隣ですから」
「ブルータスお前もか」
景ちゃん相変わらずブレないな折角見直したのに一瞬にして裏切られたわ。
景ちゃんの一言をキッカケに皆が睨み合う。
やめてくんない? 本当に迷惑だからな?
仕方ない止めに入ろう。
そう思った時、俺よりも早く行動した奴が満面の笑みて興奮を抑えきれずに店内を駆け出した。
「お主ら何やっとるのじゃ!! 早く席に行くぞ!!」
「おい待て姫! 店の中で走るな!」
分かったのじゃ、と姫は大人しく歩いて決められた番号の席へと早歩きで向かう。
●
「早う来い透! 儂の隣に座るのじゃ!!」
「分かった分かった」
「ぬ!! 何をしておる!! レーン側は儂じゃ! ここは決して譲れぬ!!」
はいはい、と相変わらず細かい指示をする姫に対し、軽い返事をしてからとりあえず大人しく座る。
因みに席へと向かう前にヒロインズでじゃんけんをした結果、俺と姫のテーブルには杏理と心、残りの景ちゃんと真白、乱華と天が隣の席となった。
別席の四人の不満そうな顔は忘れない。
とにかくなんとか納得させお疲れ様会が始まった。
「とりあえず皆何頼む?」
この店は寿司が流れてくる以外にタブレットで注文を行うとレーンで注文した寿司が席までやってくるシステムが取られている。よくある回転寿司というやつだ。
タブレットを使い注文をする者もいれば流れている寿司を取って食べ始める者と、各々が好きに食べ始める中、姫のテンションは爆上がりになった。
「のう透よ! 儂中トロが食べたいのじゃ! この機械のどこをどうやれば良いのじゃ! 教えよ!」
「これ”にぎり”とか色々項目があるだろ? そこを押して後は注文して来るのを待つだけ____っておいどんだけ頼んでんだよ!? しかもお前全部高いやつ!!」
「なんじゃい! 儂の働きを考えれば当然じゃろがい!! 儂は今日三桁は食らうぞ! 透よ財布の貯蔵は十分かの?」
「己はどこの傲慢な王様だ?」
覚悟するのじゃ、と吐き捨て頼んだ注文が届くのを待つ間流れる寿司を取って食べ始める姫。
ぐぬぬ……何も言い返せない。事実コイツのおかげで包帯は巻いているが肩の怪我は殆ど治っているし感謝もしている。
ただ、
「ちゃんと足りるかな? 心配になってきた」
姫はこのメンバーで一番身体が小さいが一番食べる。世に出れば全てを塗り替える大食い選手として一躍有名になるだろう。
いや本当に俺の生活費大丈夫か? なんなら親父達に頼んで少し仕送りを増やしてもらうか。
「いっそのことバイトでもするか……」
などと考えていると、
「ねぇ雨上?」
唐突に俺の目の前の席に座る杏理が話しかけてきた。
「どうした杏理?」
「え、いや、そのね?」
「?」
「……」
なにやら歯切れの悪い反応に首を傾げ、しばらく黙ってしまった杏理の言葉を待っていると、彼女は静かに呟く。
「……がと」
「え、なんだ?」
「……ありがと……助けてくれて……」
「……」
なんだそんなことか、おそらくノア撃退の件を言っているのだろう。
そんな律儀に礼を言わなくても良いのに、杏理本人も決して無傷じゃないしな。
現在の杏理は足と腕に包帯を着けている状態で見るからに痛々しい感じになっている。姫が怪我を治し過ぎてしまうと不自然に思われてしまうからと意外な気を利かせたことでこうなった。
そんな姿を見て俺は素直にお礼を受け取る気になれない。
「気にすんなよ。元はといえば体育祭の日に怪我した杏理を一人で帰らせたからそうなったんだ。寧ろ俺が謝りたいレベルだ……悪かったな杏理」
「そんなこと……」
「それに俺は何もしてないぞ? これは俺以外の皆の力だ」
「……」
不満そうに黙ってしまう杏理、俺も自分の不甲斐なさに次の言葉が見つからずにいると、先に杏理が口を開いた。
「……でも私はアンタが来てくれて安心したし嬉しかったし勇気だって貰ったのよ? 最初に会いに来てくれたのは雨上アンタなのに……何もしてないなんて言わないでよ……」
「……杏理」
「「……」」
「え、えーと……」
重い空気に耐えられず気まずそうになる心、その空気を気にせずバクバク寿司を食べる姫、そして「あ、これなら別の席で良かったですね」と隣席から覗き込む景ちゃん達と色々とカオスな状況になっていると、
「良いわよ……ならアンタがどれ程私に勇気をくれたか教えてあげるから……」
ソッと何かを言った杏理、残念ながら俺には聞き取れなかった。
「ね、ねぇ心?」
杏理は大きく深呼吸をすると、隣に座る心に言い放った。
「あ、明日の学校で……私とお昼食べない?」
「……え? 僕と?」
「そ、そうよ」
「杏理ちゃんから誘ってくれるのって初めてだね。じゃあ明日は僕も美味しいお弁当作って来るね」
意外と乗り気の心は嬉しそうに応えたが、
「いいえ明日は私が作った料理を心に食べて欲しいのよ」
俺はその言葉に目を見開いた。
だってそうだろう。杏理はいつか心に……いや心太郎に手料理を食べてもらいたくて色々頑張っていたのだから……
「そうなの?」
「えぇ」
「じゃあ明日楽しみにしてるね!」
「……」
「ほらほら杏理もお寿司食べよ!」
「ありがと心」
仲良く食事を始める二人だが、杏理は皆に聞こえない声で俺だけに静かに告げた。
「雨上……アンタも明日来なさいよ。明日アンタにも見ていて欲しいから……」
~おまけ~
「そういえばノアからやたら際どい写真が送られて来るんだけど……これはなんなんだろうな……」
「際どいって……どんな写真よ?」
「裏垢女子みたいな際どい写真」
なんでアイツはこんな写真を送りつけて来るのか……(困惑)
送り先間違えてるとかかな??
「「「「「「死ね」」」」」」
「え、なにその唐突な言葉の暴力……」
皆酷くない??
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます