通常ルート90 体育祭スタート
◆
体育祭当日、紅白に別れて皆が勝者を決める戦いの幕が開けた。ちなみに俺達のクラスは赤組。
「赤組勝つぞー!!」
赤組三年のリーダーが声を張り上げ周りを鼓舞し、それに応えるよう合図なく一緒に声を出す。殆どが見知らぬ生徒達だというのに凄まじい団結力だ。
グラウンドを半分に分けた相手陣地にいる白組の声もこちらに聞こえるあたり、今年はなかなか気合いが入っているようだ。
俺はといえば、
「皆毎年ある行事なのに凄い熱量だな……」
どうしても俯瞰で見てしまうせいか、どうにもこの時期になると体育祭を行う当事者だというのに第三者のような遠目から見守る感じになってしまっていた。
特に三年ともなれば最後の体育祭ということもあってか先輩達の熱気が後輩達にも伝わってくる。
そんな中でも心は平常運転だ。
俺の腕に抱きつくと頬擦りをしながら優しく言葉を発した。
「僕は透と今年も一緒の組だから体育祭最高に嬉しいよ♡」
うんそう言ってくれるのは嬉しいよ? でもね?
「ありがとな心、とりあえず周りの目が怖いから抱きつかないでくんない?」
「えぇ〜♡」
お前一応可愛いんだから周りの目がヤバいんだよ。
クラスメイトの奴らは良いけど、他のクラスや先輩後輩達みたいに俺達の状況を知らない人達からしたらマジで良くないんだ。
他人から見たら甘えてくる美少女を雑にあしらってるハーレム野郎的になってるからね? それと、
「あと暑いから」
「もぉ〜♡ そこは”当たってんだけど”って言うんだよ透♡」
「何がだよ。肋骨か? ____痛っ!!」
「次言ったらグーでやる」
「驚く程早い拳……俺じゃなきゃ見逃しちゃうね……」
てか既に拳でやったのに次のグーがあるのか? そう聞いてみると心はドヤ顔を見せ応えた。
「よく言うでしょ? ”右の拳で殴られたら左の拳でも殴られなさい”って」
「まさかの殴る側の気持ち!? 言わねぇよそんなこと!」
「多分」
「多分!?」
雑だし嫌過ぎるだろそんなの!
あ、待って? 思ったけど俺の周りの女子って胸が小さくない? 大きいのは天くらいか?
いや大きいのが良いわけじゃないからね? いや本当マジで。
でもそうか……、
「……天、真白、乱華、心と景ちゃん、そして杏理の順番か……」
心と景ちゃんは同率、ここが重要だ。
……あ、いや何がとは言わないけどね。
「なんか透余計な事考えてない? グーで行く? グー」
「あ、いや勘弁してください……」
「雨上失礼なこと考えてるんじゃない? 風穴?」
「い、いやそんな軽い感じで殺害予告しないでくれない?」
「皆体育祭なんだからふざけちゃ駄目だよ」
真白から止められたがコイツらの嗅覚は異常か? あ、いや嗅覚じゃなくてもう動物的本能がおかしいんだな。さすが脳筋集団だ。
「「「今なんか変なこと考えなかった??」」」
もう怖いこの人ら……
●
改めて自分の赤組を見てみる。
同じクラスだからだが、赤組には俺と心、真白や杏理、あとは姫と銀ちゃんがいる。
後ろを見ると景ちゃんが手を振っている時点で赤組の勝利は確定的だ。
だがそこで白組を見てみよう。
「我々白組は敵を徹底的に倒す!」
「「「おー!」」」
「さすがお姉様!」
「角の無い赤なんて恐れることはない! 敢えて言おう! カスであると!」
「「「おー!」」」
「お姉様最高ーー!!」
「私達の白を奴らの血液で真っ赤に染めて真の赤組になるんだーー!!」
「「「おーーー!!!」」」
………………
…………
……
「なんだあれ……」
「のう透? あの皆を指揮しているのはもしや天か?」
「一応そうだな……なんか普段と違うけど」
白組の熱量が違う。それもこれも白組のリーダーをしている天の影響だろう。なんかとんでもないこと言ってるし、殺気立っている。
今見た通り天と乱華は白組なのだが、恐れなくてよいと思っていたけれど、どうやらこれは一波乱起こりそうな予感が……
てかあれだ、あの光景には既視感があると思ったが分かった。
昔見た海外の画家の絵に凄く似ている。あれは確か題名は”民衆を導く戦乙女”的な……
いやそっくりだなおい、と納得していた時、
「先輩……」
「ん? あぁ景ちゃんか」
先程まで俺から離れた場所にいたはずの景ちゃんは、いつの間にやらかなり近くまで来ており、鋭い眼光で白組を見つめ言った。
「……今回の体育祭は険しい戦いになりそうですね」
「そ、そうだな?」
「あれは……まさか私を倒せる年齢まで無理矢理身体を成長させた?? ……やられるのが王じゃなくて私で良かったです……」
「お前には何が見えてるんだ???」
大丈夫か景ちゃん? 興奮し過ぎて意味分からんこと言ってるけど??
てか今年の体育祭って言ったけど、君一年だよね? 今年初だろおい。
「私には分かります。あのオーラ……とても洗練されてる……凄い修行をしたんですね」
「眼科行ってこい」
テンションが上がり過ぎて意味の分からんことを言い出す景ちゃんを落ち着かせ、いよいよ体育祭が始まった。
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