通常ルート87 皆でゲーム 前編







「で、なんだっけ? スゴロクやるんだったか?」

「ただのスゴロクじゃないよ! 僕達が作ったスゴロクだよ!」

「そうですよ先輩! ”私達が”ってところが重要です!」

「「ねぇー」」

「いやお前ら実は仲良いだろ」


 この二人が作ったとなると凄く変な物になってる可能性があるぞ……、と考えていると真白と乱華から一言。


「と、とー君私も少し手伝ったんだよ」

「私もな」

「あ、真白が手伝ったんなら安心? だな」

「少しだけどね?」

「おい私は無視か? おい」


 その少しを強調しないで? 不安だからね?

 あ、乱華は静かにしてくれない? お前に関しては安心できないから。


 常識に関して信用のない乱華を無視していると、


「透この完璧なスゴロクを見てみてよ!」


 ジャーーン! と声高らかに心は大きめの画用紙を俺に見せつけた。そこのマスに記された文字を見て俺は困惑を露わにする。


「え、なにこの”透に頭を撫でてもらう”って?」


 よく見てみれば他にも様々な内容、というか俺に対しての要望が複数書かれていた。


「……なにこれ」

「私達が考えた先輩とやりたいことを叶える魔法のスゴロクです!」

「”透を抱き枕にする”って?」

「先輩にして欲しいことです♡」

「んー? あー?」


 チョイチョイ真白さんや? これはどういうことかな? 真白が手伝ってくれたんじゃないの?? これはどういうことよ?


「……これでも良くなったんだよ?」

「マジかよおい」

「私が提案した”透の頬にチュー♡”が真白先輩に消されたんだよ。許せねぇよな透? なぁ?」

「真白ナイス」


 ど、どういたしまして? と苦笑いをしている真白。さすが真白だなんだかんだ信用できる。俺のことを襲って来た第一号だけど。


「それにしても……」


 これで良くなったとか変更前が気になってしまうな……、


「一部モザイクありで良ければ変更前の写真とー君見てみる?」


 なんで伏せられてんだよ! なんの配慮なんだそれ!!


「……年齢制限十八歳以上かな」

「この二人が私の透にえげつない事を要求しようとしてたんだぞ。やべぇよなコイツら」


 心と景ちゃん俺に何を要求する気だったんだよ!? え、待ってコイツら天才的な阿呆か!?

 呆れて言葉を失っていると、


「ささ! 透始めるよー!」

「いや……やりたくな……」


 断ろうと思ったが心の行動は早かった。


「姫ちゃんもやるよねー!! はいこれ遊びながら食べる用のお菓子もあるよー!!」

「わーいありがとなのじゃー!!」

「くっ……このやろう……」


 心の奴め……俺が断るのを瞬時に判断して姫を味方にするとは分かってるな……。

 恐ろしいな、俺の親友ってこんなにも出来る奴だったとは……侮れないな心さん。


「じゃあ早速始めよー!」

「「おー!!」」

「や、やりたくないんだけど……」

「あ、とー君やらないは駄目だよ?? 殺すよ??」

「別に良いけどよぉ? 透分かってるよな? ここら辺が吹っ飛ぶけど?」


 俺の味方はいないのか? 真白と乱華の脅し方えげつないからね?


「あ、透これ今日部活でお姉様来れなくて『ご主人様に渡して欲しい』ってお菓子持って来たぞ」

「あ、ありがとなわざわざ」


 あ、今日の一番まとも枠は天かもしれない。まさかあの変態がしてくれたことで安心するとは世も末だな。


 しかもくれたお菓子は高そうなチョコレートのようだ。これは本当に嬉しい。



 スゴロクが始まり、スタートのマスに皆が自分の駒を置いた。最初の順番は事前のジャンケンで決めた姫からである。


「よし! じゃあ儂の番なのじゃ!!」


 元気いっぱいテンション最高値の姫が一つのサイコロを振ったことで進む数が現れた。


「六じゃな!」

「最初からかなり良い数字だな」

「まーこれも神としての実力じゃな!!!」

「おい隠す気ゼロかよ阿呆」


 もうこの馬鹿を止めてくれ、と俺の儚い願い事は届かず、姫が駒を動かしマスに止まる。そしてそこに書かれた内容を読み上げた。


「なになに……”一回休み”? なんじゃこれどういう事じゃ?」

「姫ちゃん次皆が一巡するまで姫ちゃんの番来ないよ」

「む……ま、まあこれも仕方ないの。大人しく指示に従うのじゃ……」


 思いっきり不満そうですけど??

 不貞腐れる姫を心と真白は扱いを既に理解しているようで、


「まあまあ、はい姫ちゃんお菓子あるからこれ食べて待っててね?」


 などと、アッサリと餌に釣られ姫はお菓子を食べ始める。それで良いのか神様?


「じゃあ次は僕だね」


 姫にお菓子を渡し、心がサイコロを振るう。


「三だね」

「「「あ」」」

「え、何どうした皆その反応?」


 心が出した数字を見た瞬間、皆の表情が曇った。何があったかとマスを見てみた時、俺はその意味を理解したのだ。


「あー見てみてぇ? ”透にあーんしてもらう”だってぇ♡ なんか恥ずかしいね透ぅ♡ 皆が見てるのにねぇ♡」

「「「ギリッ!」」」

「ちょっと三人共歯軋り止めてくれません? 怖いからね?」


 それに心も皆に見せびらかす様な態度は止めた方がいいからね?? 命に関わるから……主に俺の、悲しい事ながら俺の命が危ないのだ。

 恐ろしい眼光で俺達を睨む三人を視界に入れないようにパパッと済ませる事にした。


「ほら透あーんしてぇ? あーん♡」

「ほいほい」


 まるで親鳥に餌を要求する雛鳥の様に可愛らしく小さな口を開ける心。こう近くで見るとコイツも美少女なのが分かるくらい可愛らしい。


「どれにしようか……」


 お菓子は姫が独占しているし、なら仕方ないから天から貰ったチョコをやるか。

 包装を開けて見るからに高そうなチョコを摘み心の口へ運んだ。


「ほらあーん」

「あーん♡」


 チョコを食べた心はわざとなのか俺の指も一緒に咥えている。あ、いや絶対わざとか。


「あざといな」

「ん〜♡ 透大好き♡」

「「「ギリッ!!!」」」

「儂も食べてみたいのじゃ! 透あーん! あーん!」


 カオスな空間の中、姫にもチョコを渡す。

 とりあえず皆さん落ち着いてくれませんかね? 怖いから本当に……。


「……次は私です」


 そう言い景ちゃんがサイコロを振ると、またも三が出た。


「あぁ〜凄いですぅ〜! 偶々、偶然、奇跡的に連続で三が出ましたぁ〜! じゃあ先輩私にもあーんしてくださいね♡」

「いやその言い方絶対になんかしたな??」


 はてなんのことですかね、って絶対仕組んでんじゃねぇかよ!! 景ちゃんめ全くコイツは……



 その後何故か皆三を出すというミラクルを起こした。ただ皆反応がわざとらしかったとだけ言っておこう。




        ~おまけ~




「む!? 皆がご主人様と楽しそうなことをいているような気が!!?」

「東鐘先輩ー? 練習再開しますよー?」


 ペットは何かを察知していた。



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