第307話 大 勝 利 !!!

初代にして最強の勇者・アルスを最初に倒したのはやはりアシュレイだった。


無敵時間の付いた大技の撃ち合いと言う…俺たちザコから見たら超絶クソゲーの対決を制したのはアシュレイ。

どこかで見た光景だなと思ったが、まあ結局こうなるのだ。

上手い技など火力で蹂躙してしまえば良いのだ。

これで1と2の主人公をボコり、アシュレイは歴代最高のブッ壊れキャラだという事が判明してしまった。まあ知ってたわ。



しかしまあ最初に突破するのはやはりアシュレイだったか。

このメンバーじゃなくてもこうなると思ってた。

魔族の3人の中じゃアシュレイがもう一番強いし、3倍補正が効いているグロードよりもすでに強いのだ。


そのグロードはというと、3倍補正無しの人族相手なら対等のはず。

じゃあ…って思ったけど、まあ年の功なのかな、アルスは強いわ。


「対等だとは思うが相性は悪い」

「何でだよ?属性的には大差ないだろ」


グロードは雷と土、勇者アルスは光属性を得意とする。

まあこのへんは特にどっちがどうとかない。若干光有利か?という程度だ。


「何と言うか…全部手が読まれているのだ」

「それはそう。君の剣術…その基本を作ったのが僕だからね。いやあ、それにしても2000年近く経っても大して進化してないとは思わなかった」

「アルス様の方が進化され過ぎだと思いますが…?」


どうもグロードが言うには、アルスの一番弟子が開祖となった、『勇者流剣術』…随分ドストレートな名前だが。その流派でははドンドン新しい技が作られ、練られているらしい。

元となった古式では大きくて強い魔族やモンスターを相手とした戦いが基本だ。


当然古式も教えるが、新しい物ほど魔族より盗賊や古式を習得した者を道場で倒すための技術を導入して…そうするとそれに対して…って、つまりカウンターやメタという概念が当てはまるだろうか。

メタにメタを重ねてメタメタのメタが今の人間界の剣術では主流な訳だ。


どうしてそんな事になるんだと思うが、グロードに聞くと理由は簡単だった。

ここ千年魔族との戦いはほとんど起こらず、人間同士での戦いばかりだったからだ。

魔族となら一撃必殺の強力な攻撃や、力に任せた攻撃を受け流してカウンターを狙う。


圧倒的な力に対し、うまく守るための技術が重んじられていたのだ。

俺の聞いた所の古式勇者流はそんな感じだった。


それが最新式の勇者流は対人の概念が多くて…じゃあ、それを学んだグロードが負けるはずないと思うんだけどな。まあ結果は見てのとおりと言ったところか。

結局はゴチャゴチャになった剣術より、塔に来た強者から最新式の武術を取り入れつつ、改良に改良を重ねたアルスの方が優っていたらしい。


「僕だってここに閉じ込められて下界の様子をチョコチョコ見るだけ。あんまり暇だったからトレーニングしてたのさ!」

「寝とけよ」

「寝るにも程があるんだよ。一回だけ、何か月か居ただけの君にはわからないと思うけど…千年以上この牢獄に閉じ込められたらやることがないにも程があるのさ…」

「…そうか」


まあ俺は気が付いたらアシュレイの応援してて気が付いたら生き返ってたから体感時間は数時間って所だったけどな。


そんなこんなもあったが、結局のところ次に勇者アルスに勝ったのはグロードだ。

さすが、現在の人間界では最強の名をほしいままにする達人である。

相手が一つ一つの技を上回ると知るや、上がったレベルを活用した力とスピードでゴリ押しする戦術に移行。アルスも力で押される戦いに離れているのでその拮抗は長かったが…最後は何とか押し切ったと言ったところか。


そしてその次はガクさん。

身体に着いた岩を上手く分離して煙幕を作りだし、アルスの光属性攻撃を軽減。

そこから脳筋攻めに行くかと思ったが、小技を多く繰り出し、その鉄壁のガードを分散させて本命をズドンと決めた。カッケー。


「で、残りはお前だけだぞ」

「ソッスネ」

「魔王様の本領発揮として頂きたいところだ」

「ハイ」

「儂を下した実力を見せてくれ」

「…ハイ」


皆の期待を一身に背負い。

俺はいつものように足止めと嫌がらせの連打からちまちまと削り倒すという方法で…何とか誤魔化して勝った。アルスも最後は苦笑いしていた。

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