第305話 特訓!


グロードが戦った後、ガクさんが挑戦してもやっぱりだめだった。

俺たちとアルスが戦う時、アルスには勇者補正の戦闘力3倍が効いているはず。


つまり相手は通常より3倍強いのだが、グロード相手にはそれが効かない。

ということは素のステータス同士の訳で。

じゃあグロードならワンチャン勝てるんじゃないかと思ったがそう上手くはいかなかった。


レベルやステータス的にはたぶんグロードと勇者アルスは大差ない。

グロードの奴も猪武者と言う訳ではなくクレバーな戦いが出来るタイプなのでいい勝負が出来るかと思ったのだが…まあ結果は御覧の通り、ゼーゼーと荒い息を吐きながら寝転がるグロードとそれを見下ろすアルスという構図になっている。まあ予想通りだ。



「さて、1巡したね」

「もっかいおなしゃっす!」

「良いだろう。カイト君からかな」

「おうよ!行くぞ!」


相手の手は散々見た。

基本的に後の先を取ろうとして来る。


分かってるから迂闊には動けない。と思えばズバッと動いてくる。読みが強いんだな。

暇に飽かせて訓練ばかりしているからだろうか。

塔のメンバーを思い出すと、強者ばかりと言うしかないようなメンバーだった。


あの中で何年どころか二千年近く毎日することがないから修行…うーん。

控えめに言っても拷問だな。


「来ないのか?なら…」

「どりゃあ!」

「ん!でも甘い!」


焦れて前に出ようとしたタイミングで突っ込む。

どうにか機先を制することが出来た。

だが、短剣の攻撃は盾で防がれる。


いや、盾を使わせたと思った方がいいな。

防がせた時点で今までより少しマシだ。

本気で受けに回られていたら簡単な刺突は受け流され、カウンターを喰らっていただろう。


アルスは俺の短剣を盾で受けた。この流れは前にアシュレイとグロードがやっていた時に見た。

受けた所で斬撃かあるいは蹴りだ。

反撃のためにごく一瞬、盾を持つ力が抜ける。そこに。


「ツリーアロー、アローペネトレイション!」

「ッ!フレアボム!」


短剣の先、盾で抑えられている所から矢を放つ。

盾を縛り付ける矢と盾を貫通して本体にダメージを狙う矢。

貫通ダメが当たらなくても良い。まず盾を縛り、その持ち手も縛る。

そこまで出来なくても盾が使えなくなれば…と思ったが、そこは反応される。


アルスは炎爆弾フレアボムを自分の手に。

貫通していた掌からは樹が焼かれ、成長する事も出来ず。

だが、盾はボムで弾き飛ばされてカラカラと転がっていった。


「まだまだあ!」


チャンスだ。

盾が無い事を活かす。

左腕側から攻める。


斬り、突き。

上手く流される。

盾を封じてもまだまだ手はあるようだ。だが…


「スラスト!」

「…甘い!」

「ウオーターボム!」


斬り、盾で押し、そこに単純な斬撃スキルを放つ。

当然見慣れているアルスはそれに対してカウンターを狙う。この流れはさっきグロードとやってた。覚えているぞ!

足下にウオーターボムでさらに加速!これで!


「もろた!シールドバッシュ!」

「まだ甘いと言った!」

「ごへ!?」


弾き飛ばしたはずの盾。

何でさっき使えなくした盾が…何でそこに…

なんで盾で殴ろうとした俺が盾で殴られて…なんでや…ねん(ガクッ





気が付くと俺は床で寝ていて、アシュレイとガクさんとグロードの3人はみんな交代でアルスに挑んでいたようだ。

時折惜しい時も有り…もう少しで防御を抜けそうで抜けないという感じだ。


それはいい。

それは良いんだけどココはあれだろ?

俺は愛するハニーの膝枕で目を覚ますとかじゃないか?

何で床で転がってんだよ…


「起きたのか。カイト」

「ああ…膝…」

「ヒザ??」


よく考えたらアシュレイの装備はめっちゃごつごつしている。

膝枕なんてしてもらったら逆に硬くて眠れないだろう。

まあ、こいつにそんな女の子っぽい所を期待するのはやめよう。やめた方がいい(涙


「いや…アルスの防御は鉄壁だなと。肘や膝もうまく使ってるなと。」

「ああ。練習相手になってくれているようだとグロードが言っている。触手のような防御力を再現したいと言っているが。」

「…ああ、あれか」


教皇は斬っても斬っても切れない、と言う訳ではない。斬られると傷を治していた。そこに無駄に魔力を消費している事は間違いない。

あまりに膨大な魔力で…魔力が減っているのかどうかが良く解らないだけで。


それより問題となるのはあの触手。

攻撃自体を当てることが出来ないのだ。


アルスはいつの間にか背中に背負う変なアイテムを使っている。

魔力を流すとそいつが障壁を出すのだが、教皇の触手を上手く再現してくれているのだ。


「器用だなあ」

「こればっかり二千年もやってたからね。多少はね…続ける?」

「おうよ!」


俺は挑み、また転がされた。

何種類かのパターンはおぼえたが、この人は手の内が多すぎる。

粘ったものの…まだ見ぬ攻撃を繰り出され、逆にカウンターを喰らう。

俺たちが何を狙っているかが分かってそれに付き合い、さらに一枚上をいく。

そんな戦い方。

一言で言うと、鍛えてくれているのだ。

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