第303話 99層

久遠の塔 91層


90層のボスである大魔王様っぽいイケオジモンスターを日頃の恨みを込めてフルボッコにした。

続けて91層から現れたモンスターは今までに見たモンスターたちの色違いだ。


91層は1~10層に出て来たモンスターがいろんな属性で。

92層は11~20層の…って感じでそれぞれ違う階層のモンスターが色違いで出て来る。

まあ…大して問題はない。


「変わった構成だな。属性を持ち、大きさも魔力も上昇しているのだな」

「…そうだなぁ」


グロードの言葉に生返事をする。

だって、俺から見ればこれは…


これは古いゲームでよくあった手法なのだ。

ドット打つのが面倒になったとか、時間がなかったとか。

要するに容量の問題とか。手間の問題とか。


そういう問題で色違いのモンスターをホイホイ出すってあるあるだったのだ。


そして同じモーションをし、同じように攻撃を繰り出す。違うのは体の大きさと出す炎や水が氷や雷などに変わったというところ。アニメのバンクシーンのように同じアクションをするのだ。


うん…まあ、はい。

何とも言えない気分になった。


俺は技の起こりとかを観察するのが好きだった。

友人がやってたモンスターをハントするゲームでこのモーションはコレ!みたいな説明をしてくれていた。それを横で見てりゃ覚えられた。

そして覚えた俺は友人に横から次は尻尾だぞ、次は前肢だぞなんて言ってた。

…つまりは。


「ほい、はい、へい」

「おお、カイト凄いな」

「何故そこでカウンターを…?」


つまり俺は一度視た動きを覚え、それに対応するカウンターを当てることは得意なのだ。

そして序盤のモンスターはアシュレイと散々苦労して、アカとまた登って…観察する機会はいっぱいあった。まだ覚えてるくらい。


でもまあこの特技は初見の敵じゃあんまり効果がないんだよね。

何十回も戦わないと…つまり実践じゃほぼ使えない能力なのだ。



嘗て新選組は同じ技ばかり鍛えていたとか読んだことがある。

真剣で戦う以上、二度三度と同じ相手と戦う可能性は極めて低い。

その為、戦場では初見殺しのような技がハマるのだと。


逆にいうとめっちゃ見たことある相手なら割と対応できるという事だ。

俺がこうやってモンスター相手に無双できるのも当然。

夜のアシュレイ相手に毎回無双出来るのも当然なのだ。げっへっへ。


「戦いの最中に何を考えておるのだ!破廉恥極まりない!」


ベチコン!と槍の柄でシバかれる。

何故分かったし!?





95階はボスがおらず、普通に41~50層のモンスターが出てきただけだった。

正直拍子抜けだ。

大きく強くなったとはいえ、根幹部分は変わらない。グロードのパーティーは苦労したと言っていたし、ガクさんたちも大変だったと言っていたからどんな強敵なのかと思っていたのだが。


「カイトはいつもこうなのか?」

「あいつは基本的にそこらの強者とはタイプが違うのだ」

「何かやりづれーとは思ってたけどなあ…」


グロードとは何度か戦場で出会い、話すだけの時も有れば槍を交えたこともあった。

俺はめっちゃやり辛いと思っていたが、彼方も同じだったようだ。ならうれしいかもな。


そして99層。

90層台は特に新しいモンスターが出てこなかった。

じゃあ?って事で開けると。


「これは…」

「あー、何となくそうかなとは思ってたわ」


今までのいわゆるボス、5層毎のボスフロアと10層毎のボスモンスターが集結していた。


「このパターンか…じゃあみんなテキトーにやろう」

「お、おう」

「フハハ、楽しみであるな」

「私の相手は…ふむ。久しぶりだな」


俺が80層と75層の巨人に85層のイケメン、アシュレイが70層の氷龍に90層のイケオジ、ガクさんとグロードでその他、と言う組み合わせになった。


80層の巨人はさらに大きく、雷を帯びた状態になっており…まあ、雷属性化したのだな。


「これぞまさに雷親父」

「戦っている最中に下らんことを言うな!」


水は雷を通す。

少しやり辛いが、樹で拘束してつついて斃すといういつもの方法に戻っただけだ。

3体ともサクッと拘束したので、一番大きい80層の巨人から先に殺ろう。

そう思ったが、全身に纏った雷は厄介だ。短剣もパリパリしてやり辛い。


めんどくさいなと思った俺は…素手でボコボコにした。

素手を伝って雷はビリビリ来る。

ハッキリ言って短剣越しよりよほどビリビリ来る。そりゃそうか。


だが、分かっていればどうという事はない。

短剣を適当に首にブッ刺し、それからはヒールしながら顔面をボコボコにした。


80層の番人を倒した後は75層の巨人だ。

75層の巨人は何か火噴いてたけどまあ誤差だった。

火を水で防ぎ、拘束されたままの巨人をひたすらボコると終わった。

85層のイケメンは氷を吹いてきたが今更である。片手間にボコって終わった。


楽勝楽勝。ってことで、ガクさんとグロードの加勢に行く。


アシュレイ?あいつは放っといていいやろ。

むしろこいつらくらいなら一人で片付けてしまうんじゃないか。

そのくらいのぶっ飛んだ能力はある。


光と闇が混じった中二病のような狒狒をグロードが戦っている後ろから倒し、コイツ何処のボスだったっけ?なんて思いながら4属性混じった虎と狼を倒す。

ガクさんとグロードが残りのボスを倒し終り、振り返るとアシュレイは炎氷龍と全属性をドカンドカン撃っていたイケオジを倒した。さすがすぎるわ。

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