第302話 たからもの
4人を乗せるとアカは飛べない。
なので普通に徒歩でダンジョンまで移動する。
言うて大魔王城から久遠の塔まで1時間もかからない。
馬車を用意するのも面倒なのでそのまま徒歩だ。
このメンバーなら走った方が並みの馬よりはるかに速い。
「じゃーいってくる。俺らがいない間に戦争になったらお前が街を守るんだぞ。」
「おー!まかせろ!」
「強い奴がいっぱい来て死にそうになったらパーッと逃げて、アフェリスにでもお願いして傷治してもらって…そうだな。夜に一番偉そうな奴がいるところにブレス連発するんだ。んで撃ち逃げしちゃえ」
「夜?わかった。カイトはいやがらせが上手いな!」
「ほっとけ!」
アカはお留守番だからダンジョン前でバイバイする。
アイツに踏ん張ってもらわないといけないような事態にならなきゃいいが…
ダンジョン前に着いた。
ココから転移なわけだが、一つ問題がある。
其々が攻略した階層までしか転移は出来ない。そりゃそうだ。
「俺81層までだわ」
「俺は93」
「私は95」
「儂は96だ」
「…ごめん」
「…まあソレは仕方ないな」
そんな気はした。
俺だけ81層までだった。
うーむ。
パーティーで80層までしかクリアしていないのにソロで80層クリアしたのはどうなんだ?とか、そもそもペアで…と言うかペットと2人(?)でダンジョン攻略ってどうなんだ?とか。
色々と突っ込まれながら82層から攻略を開始する。
言うてもうこの辺のモンスターたちは雑魚である。
雷や氷、光や闇の…いわゆる上位の属性を纏ったモンスターたちが次々と現れる。
その属性に対して耐性を持つ装備を使うだとか、あるいは弱点を突くだとか。
そう言った対策を取って戦うのがセオリーなのだろう。
だが。
「せい!」
「ふん!」
「どらあああ!」
昔、偉人が言った歴史に残る名言がある。
『力こそパワー』
この偉大なる言葉は神々の間で伝承として…まあそれはいいわ。
レベルとは偉大なモノだ。
そしてギフトによる補正もドッカンドッカンと効いているのだろう。
多分アカと一緒にようやく80層をクリアしたころの俺なら雷でビリビリし、氷で固められて光や闇で右半身がピカピカ明るく左半身はどんより暗くなり…半泣きになりながら帰っただろう。
だが今は何ともない。
短剣でホイホイと攻撃を捌き、魔法は見てから避けることが出来る。弱足を見るより簡単だ。
アシュレイがやってるのを見て真似ればできた。
魔法って避けれるんだ…と感心しながら見ていたが、氷弾は避けれるわ確かに。
ほー、と思いながら雷を避けようかと思ったけど雷は無理だった。
なんでアシュレイは避けれるの!?
そうこうしている間に85層を過ぎ、90層へ。
85層のボスはまた人型の、誰だか分かんねえオッサンみたいだった。
これモデルはだれだ?ダンジョンのシステム上、モデルがあるはずだが…とりあえずイケメンだったから瞬殺した。
全てのイケメンは等しく滅ぶべきである。
90層のボスは大魔王様っぽいオジサマだった。
ふむ、正しくは髭とロンゲのイケオジ風の敵モンスターだ。
大きさは特に大きくなっていない。親父みたいなバカでかいサイズではない。
185㎝くらいの高身長イケメンである。
「イケオジ死すべし!アロートルネード!タイダルウェーブ!」
「まて、あ…」
アシュレイが何か言っていたが関係ない。
大魔王様によく似た感じのイケオジだとは思ったが、大魔王様は俺の事を可愛がってくれて…何かいっぱい無茶振りをしてくれて、領地経営やダンジョンに行く邪魔をしてくれたイメージが強い。
良かったのは師匠を付けてくれたことくらいだ。
つーか師匠を生き返らせないと。
俺が90層攻略すれば生き返ってくれるだろうか。
大丈夫だと思うんだが…
それもコレも早く戦争を終わらせないと。
いや、とりあえず追い返してるうちにパパッと生き返らせればいいのか?何か雑な感じするけどそんなんでいいんだろうか。
…まあいいか。どうせただのイケメン風モンスターだ。
そんな思いを込めて大魔王様によく似たオジサマをぶっ殺す。
アシュレイの時はどうだったか知らんが、どーせここにあるのは魂の入ってないタダの容れ物である。知ったこっちゃない。
「クソジジイ死ねえええ!」
「…何かアイツ恨み籠ってない?」
「儂もよく知らんが、大魔王様に色々と命令されて実は嫌だった時期があると…」
「私は散々邪魔されたと聞いているぞ。ゴチャゴチャ言ってくるから予定がさっぱり進まなかったとか、その割にケチ臭くてとか。食い物いっぱい貢いだのにお金くれなかったとか?注文したものと全然違うのを送ってきたとか?金と食い物の恨みは怖いんだぞ、なんて言ってたな」
後で3人が色々言っているが、まあそんなに恨んでない。
世話になったなあとは思うし、大魔王様も立場上色々言わなきゃなんなかったんだろうな。とか思ってる。だが…
「それは、それ!これは、これええええ!」
最後は片手剣装備の最終奥義とでもいえる技、無限刃で締めた。
片手剣、もしくは短剣と盾と足技をうまく使い、相手に反撃を許さず無限に攻撃をし続けるという技である。勿論、術者の体力の続く限り…という制限はつくが。
今の俺なら無呼吸連打で3分は楽に殴り続けられる。
我ながらもう人間辞めとるな完全に…
「おおっと」
突然大魔王様型モンスターがぶしゅっと消えた。
バターンって倒れてからにしてくれよ。いきなり消えたから思いっきり空振りしたじゃん。
煙のようになって消えた所には箱。あー、めっちゃ久々の宝箱だ。
「宝箱めっちゃ久しぶりだなあ」
「ササッと開ければどうだ?」
「うむ…じゃあ開けるぞ。いいな?…せい!」
皆はよ開けろって顔をしていたので遠慮なくフルオープン。
中に入っていたのは…小瓶だ。薬か?酒か?
「何じゃこりゃ?」
「おお…これはノーブルエリクサーだな…瀕死の重傷や部位欠損も治る。おめでとうカイト殿」
「やったではないか!これで腕も目も治るぞ!」
「おお…?」
ガクさんとアシュレイは喜んでいる。
グロードも良かったではないかって顔だ。
でもな、今更かって感じなんだよな…
「まあ、コレは今はいいよ。おいとこ。」
「なに?」
「治さんのか?何故だ」
「俺はもう慣れてるし、このままでそれほど不便でもない。…それより、今後の戦いで誰かが瀕死になった時に使えば良いと思う。あんまり古い傷だと治らないってパターンもあるだろうし。お前らが瀕死になった時、あの薬があれば…なんて腕生やした役立たずが言ってるとか、ありえんだろ」
「「「…」」」
そう言う事態が、今度あるかもしれん。
いや、ハッキリ言うと俺はマークスとユグドラシルのジジイの事を思い出していた。
あの時、この薬があれば…腕を斬り落とされ、片肺を潰された状況であったとしても、マークスを連れ帰ることが出来たのではないか。
ジジイだって…血がビュービュー出てたし、結局は自分の意思で足止めしたのだと思うけど…
いや、無理やりにでもヒールで命を繋いで殴って連れ帰っておけば、この薬を使って助かったかもしれん。そう思うと…つらい。
「すまんな、お前の気持ちを考えてなかった。腕があった方が嬉しいだろうと能天気に考えていたのだ」
「…戦いが終わって、それまでに使う機会が無ければ使わせてもらう。その時はみんなにお礼に何か買うとでもしよう」
「儂は酒でいいぞ。100年物の古酒をパーッといきたいものだ」
「俺は金でいいぞ。なに、ほんの毎日遊んで暮らせる程度でいい」
「私は…そうだな。魔導書か武器だな。普段買えないような良いのを頼む」
「みんな地味に高いんだけど!?」
ワハハハと笑いながら進む。
さあ、ここからが本当の闘いだ。
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