第249話 蒸気機関車で行こう!②
線路を敷いた。
といってもまだまだ実験を兼ねた路線。ごく短いものだ。
どうも、大魔王城の近くに行く道に沿ってレールを敷けばいいと思うのだがそっちは大魔王城の官僚やそこに権利を持つ商人がうるさい。だからリヒタール行きを先に作ってしまおうかとも思っている。
大魔王城前駅を作ってそこからヴェルケーロ方面やベラトリクス魔王城前、ユグドラシル方面にと線路を伸ばす計画なのだが…まあ、なかなかうまく交渉が進まないのは仕方ないが。
見たこともない物を作るから道開けて!立ち退いて!って言われて素直に動くわけない。
特に戦時中なんかは…嫌戦時中だからこそ、力でどかせればいいか?でもそうやると反発も大きくなる。ままならんな。
まあそんなこんなでお披露目会だ。
まだレールが短いから乗って動いたらすぐ降りるようになると思うがな。
斯く言うアークトゥルス駅、路線も城内にあるとはいえ少し中心から離れた所を計画している。
商店街のど真ん中を通すのも考えたが、今ある街並みをぜーんぶ破壊するのもどうかと思って駅は商店街とは少し離した。後々線路をリヒタール方面に伸ばせば店は何軒か立ち退きしてもらうようになる。
まあそういうのはしょうがないな。
駅前のいい所にでも移設すれば然程文句は…まあ出るだろうけど。
「では出発しますぞー!」
「おー」
ブッシュー!という音とともにゆっくりと動き始める列車。吹き出す煙。
うむ、やはりぶしゅーはロマンだ。
カッコいいなと素直に感じる。
ベイダー卿のぶっしゅーもカッコイイ。アレなんて思い切り蒸気機関車イメージだとおもうが。
動き始めると「おお!」とか、「きゃ!」とかって声が聞こえる。
ふへへ。俺が作ったわけでもないのに驚きの声が心地いいぜ。
ゴンゾなんて俺の比じゃねえだろうな…ニヤニヤしやがって。
カタンカタンとレールのつなぎ目で独特な振動。
そして順調に加速、それから…って所で減速して止まった。まあ1㎞程度じゃこんなモンだ。
最大速度に至るかなり前に停車してしまったようだな。まあ仕方ない
「なんだ。もう終わりか?」
「そうだ。これからってとこだけど、まあレールの長さ的にこんなモンだ」
アシュレイも不満そうだ。まあしょうがないだろ。いきなり脱線事故起こすわけにもいかん。
というわけで乗客を促して外に出る。
「なるほど。そこそこ早いようだな…速歩くらいか?駆歩くらいは出てたかな?」
「最大加速すれば襲歩より速いくらいまでは出ると思うがな…まあまだまだこれから開発するところだ。そのうちヴェルケーロまで半日くらいでたどり着くようになるだろう」
「はあ?いくらなんでもそれは無いだろう?」
「なるとは思うがな…馬や人、飛竜とこの機械の一番大きな違いは休憩が必要無い事だ。おまけに乗っていて楽なんだよな」
「確かに楽だった。尻もいたくない」
「だろう?まあこれからどんどん改良して早く、一気に沢山運べるようになる」
「ふむ…速度は話半分で聞いておきますが、これはどのくらいの重さを運べるのですか?」
速さばかり気にしてるアシュレイに比べ、伯母上は重量を気にしている。
わかる。補給やら何やらを考えたらそこにいくんだよな。
「うーん、今の車両だと…ゴンゾ、荷重試験はまだか?」
「まだですが、客車をもう1両繋げた状態なら普通に動きましたのじゃ。人数は満席分、砂袋を載せて試験してありますですじゃ」
「だそうです。人を乗せて運ぶ用の客車は1両あたり50人でつくってありますから2両で100人分の重量を乗せた試験では問題なかったようです。」
「100人を一度に…これだけの速度で…」
「多分もっと多くの人数を乗せられるとは思います。改良はこれからですから。な?」
「そうですじゃ。もっと効率よくできるはずですじゃ」
まだ試運転の段階である。
これからさらに回転力をうまく伝えられるよう効率化し、軽量化する。
あるいは巨大化して出力を大きくしてもよい。
そうすることで積載量もパワーも増える。
ヒトだけじゃなく、モノもいっぱい運べるようになる。
マジックバッグがあればさらに効率的に運べるだろう。そうなると物流に革命がおこる。
ヴェルケーロで取った朝取り野菜や○○地方特産の海の幸なんかを夕食で食べることができるようになるのだ。あ、保存のための冷蔵庫とかもつくらないと。氷いっぱい置いて、窓の無い冷蔵車両なんかも作ってもいいな。
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