第247話 内政はじめました③

ギフトとレベルの効果によって俺の力はこれからもどんどんと強くなる。


身体的にもまだまだピークは先だし、領地もこれから頑張って幾らでも開発できる。

土地が広いと何でもやり放題である。

それに加えて配下の粒も揃ってきた。これから感満載だ。



配下は粒がそろってきているが、まだまだ全体に若い。

その分未来に希望が持てるが、逆に言えば今は頼りない。

何かが起こるとアタフタしそう。

これから上手く育てていかないといけないな。



その為には学校だ。

ヴェルケーロには俺が作った学校がある。

アークトゥルス魔王領にも大魔王領にも学校はあるが、入れるのは主に高位魔族だけ。

実家で家庭教師を付けて勉強して、それから入るって形なのだ。

家庭教師を雇える家=豪商や貴族 という事になるので自然と優秀だが金が無い子の芽を潰すことになってしまう。



カリキュラムもかなり偏っているので見直す必要があるとおもう。

貴族学?だとかはもう無しにしていいんじゃないか。

所謂帝王学なので学ぶべきことも沢山あるとは思うが、この戦時に今までと同じようにかつての風習や裸マント舞なんか教えててもな…って感じ。



まずは多くを受け入れる小学校と、優秀な成績を修めた物のみ集める高等学校を作ろう。

小学校は勿論飛び級可である。

読み書きに四則演算、分数や少数くらいまでは教えたい。


科学は…俺の元居た世界とこちらの世界とは法則が違うように思う。なんて言っても魔力や魔法があるので、これを応用しない手はない。

ヴェルケーロで自然科学の得意な奴が結構いる。


そういうのは殆どが卒業後にゴンゾの弟子みたいになって機械をいじったり妙な実験をしたり…まあそいつらに好きなだけ調べさせよう。

金は渡してやらんといかんが。



ああ、魔法に特化した学校も作るか。

いや、武術学校を作って武術科と魔法科に分けるか。

分けたら派閥が出来て争いの素になるかもしれん。切磋琢磨はいいけど派閥争いはアホらしいな…うーん…


ダンジョンでレベル上げさせても良い。

効率よく鍛えて…鍛えて、効率よく兵にするのか。守るべき民を。



ふと冷静になり、自分の考えに少し驚いた。


俺もだいぶ領主っぽくなってしまったな…

だがまあ、その方針が間違えているとも思えない。このまま行かざるを得まい。


気を取り直してこれからの事だ。

学校はアークトゥルス魔王城で暇そうにしているマナト先生に丸投げするとして。

マークス…はもうジジイだからこのくらいで頭打ちだと思うけど、他にも優秀な人材はたくさんいる。


アカだってまだまだガキンチョだし、ベロザは血気盛んな若者と言った感じだ。まだまだこれから。

忍者部隊は皆ガンガン強くなれそうだし、マークスの孫であるレリラとかも鍛えりゃ強くなりそうだ。

アシュレイとアフェリスは言うまでもない。

あの二人は才能も何もかもが俺とは比べ物にならんくらいの素質だと言って過言ではないだろう。

姉だけではなく妹も、だ。


それにリヒタールの代官をしていたオズワルドは熟練の老指揮官であり、上手く戦場をコントロールできそうだし、ウルグエアルさんは…あの人は年が不明だ。竜人族は長生きする分成長が遅いようだが、まあまだまだ元気そうだしこっからガンガン伸びるんじゃないか、たぶん。


人間のシュゲイムとリリーはそろそろピークを迎えるだろう。シュゲイムは30手前、リリーは20そこそこなんじゃないかと思う。リリーは特にこれからガンガン伸びて欲しい。対勇者や魔族同士で争うときの切り札になる…がまあ、争わないのが一番いいな。



配下を考えると最も強くなりそうなのはどう考えてもアシュレイだ。

元々クソチート野郎だと思っていたがいよいよその本性を現し始めている。

アカは俺と一緒に80層まで登り、戦争やらなんやかんやで俺はレベルは1000、ソロで登っていないアカも700を超えている。


アシュレイは100を超えたくらいだけど、アカとそこそこいい勝負をしている。

レベルでいえば7倍差である。


普通じゃどうにもならないはずなのだが、公式チートによる倍々ゲームが酷いようだ。

俺だってすぐに抜かれるだろう。尻に敷かれる日も近い。

もう敷かれてる?うっせえ。アレはいいものだ、なんだよ!


配下はさておき、農林水産業も商工業もまだまだ開発が始まったばかり。

とりあえず…と言っては何だが、まずは魔界全土を繋ぐ大魔界鉄道計画をブッ建てよう。

鉄道を作るのに必要なのは木材石材に何と言っても鉄だ。


ものっすごい大量の鉄をドロッドロに溶かしまくって加工する技術が何より必要なのだ。

どうやって加工するか。現代のような大規模な溶鉱炉を作るのか。

未来から来た人造人間ですらホイホイ溶けるような高温の溶鉱炉を…無理だろ?

今の技術じゃ窯が割れるぞ。一体何で出来てるんだアレは…?


だが幸いにもここは剣と魔法の世界。科学で出来ない事は魔法でやりゃいい。

ってな訳でウチの技術顧問であるゴンゾにその辺の話をしたら、『個人の魔力じゃどうしようもない』だそうだ。

作るモノの量が半端じゃないからな…まあでも鉄道に使う鉄はそれを使って戦う訳でもないから強度は武具に比べれば大したことは無い。むしろもっと柔らかくて柔軟性がある方がいいとも言える。

現に元の世界でレールに使われている鉄もかなり柔らかいみたいで、洪水でぐにゃっと曲がっているのを見たことがある。

あんなので戦えないじゃんと思うから、何時もほどしっかりした作りじゃなくっていいと思うのだが…



技術顧問でこだわりやさんのゴンゾにカチカチに硬いのじゃなくって柔らかいので良いから適当なの作れよって言ったら随分お気に召さなかったようだ。

それはそれで最適な柔らかさ、硬さが、粘りが…なんて言い出してそれ以降蒸気機関の開発も止まりそうになった。

まあご機嫌を取って何とか誤魔化したが…。


ご機嫌を取る方法に使ったのが旋盤だ。

何を作るにも基礎の基礎になる旋盤だが、旋盤を作るのにも旋盤を使いたいというよくあるジレンマが生じる。


某テレビで耐火煉瓦を作るのに耐火煉瓦を使ってみたりとか。

某ゲームで中型に大して特攻のアイテムを集めるのに中型の敵を狩ったりだとか。あるあるだな。


そしてゴンゾは出来上がった旋盤で旋盤を作り、さらに旋盤2号で旋盤を作り、制度の上がった旋盤3号機でさらに…という無限ループに入った。

どんどん工作精度が上がっていくさまがタマランらしい。何かを作るための旋盤が旋盤を作るためにしか稼働しない。


俺はそんなモンいいから蒸気機関車の模型というか見本というか…何なら実物でもいいから作れと言ったんだが、そうはいかんと。

万全の精度の物を作らないと許されないのだと…くそ!これだから技術屋は嫌なんだ!


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