第246話 内政はじめました②
アーク歴1506年 什の月
アークトゥルス魔王領
リヒタール領の代官を務めているオズワルド殿がアークトゥルス魔王城に来て引継ぎ作業をする事になった。というか俺としてはどうせリヒタール領を直接治めることなんてできないんだからそのまま代官やっといてちょ。と思うのだがそうもいかないらしい。
しょうがないからマークスを呼び戻し、アイツをリヒタールに。
マークスは後進を育てて執事に戻るとか言っていたが今度はアッチに栄転だ。
喜べよ?
というわけでじゃあヴェルケーロ領は…
「…というわけでヴェルケーロ領の代官はマークスからベロザ君に引き継ぐことになりました。拍手!」
「「「おめでとうございます!」」」
パチパチパチパチバチバチパチパチ
壇上に上がった俺とマークスとベロザ。
俺たちはニコニコ顔だがベロザはカチコチに固まっている。
「あ、ありがとうございますだ。オラが代官…オラが…」
「まあ言うて大して変わったことをさせるつもりは無い。内政については官僚たちはそのまま置いておくし、学校を優秀な成績で卒業した者たちも出来るだけ補佐をしてあげて欲しい。みんなでヴェルケーロを今以上に盛り上げよう」
「「「はい!」」」
ベロザだって学校の第一期の卒業生である。
妹のベリスちゃんにだいぶ勉強を教えられて、そのおかげで何とか卒業できたようだが…まあそれはいい。
街の代表にしたい人材は一番勉強のできる子ではない。
皆に好かれて皆の仕事を良く手伝う、あるいは逆に皆によく手伝ってもらう事のできる人材だ。
ベロザは平時は酒造りのトップであり、いざ戦いになると武将にもなる。
最近は小さな部隊ではなく軍を動かす勉強もしている。
内政、軍事の両方で活躍できる素晴らしい人材なのだ。…って事で褒めちぎって代表をやらせることになった。
村一番のガキ大将がいつの間にやらオラが町の町長だ。
まあ…悪くない。よくあることだ。
シュゲイムを、というのも考えたが、彼は騎士団を率いる身だ。
その上領主もやらせると権力が集中しすぎる。それにいずれエルトリッヒに戻す可能性がある。
その辺を本人に説明したところ、シュゲイムも何の反対も無くベロザを推してくれることになった。
やはりエルトリッヒに戻る可能性を示唆したところが大きかったのだろう。
俺としてはもし自由連合をぶっ壊したら連合全部を新エルトリッヒ国 (仮)として彼やその子供たちに国王になってもらいたいと思っている。そうすれば人間界との境目に緩衝地帯が生まれる。より魔界の安全も確保できるだろうし、エルトリッヒ勢からすると
タラモル国王を討ち取った。
そうすることで強国タラモルに押さえつけられていた連合は内部から争いの火種が尽きないようである。要するに宗主国がいなくなって属国同士の争いが始まったのだ。
おまけに、その小国たちにアルスハイル帝国やエラキス教国などの周辺国からちょっかいを出されているようだ。
というかエラキス教国はかなり勢力を伸ばしているらしい。
帝国を裏から併呑し、タラモルも支配下におさめようとしていると聞こえて来た。
さらに自由連合にもチョッカイをかけている。
という訳で旧エルトリッヒ国やその周辺は今グチャグチャの内戦になっているらしい。
これをチャンスと見て介入すべきかどうかで悩んでいると言った所だ。
シュゲイムとアリシャ姫…もう人妻で子持ちなんだけど姫でいいのかな?まあそこはいいか。二人とその周囲、初期に避難してきた騎士団は特に国に帰りたいという意思が強いようだ。
でも避難してきた民は帰りたいような、もうコッチである程度落ち着いたからまあ良いか…のような。って所らしい。まあ気持ちは分からなくもない。悩ましい所だろう。
最初はどんな酷い所でひどい扱いを受けるかと思っていたようだが、来てみると寒さ以外は前よりマシな生活を送れているらしい。
これは何人かにアンケートのような物を取ったので…ちょっと気を使って良い所に多く○を付けてくれたかもしれんが、まあ住めば都というし。
今更戻った所でなあ…って所はあるだろうなあ。
俺だって元の世界に帰って冬は暖房を効かせてコタツで蜜柑やアイスを食べて。夏はエアコン全開で肉焼いてビールの生活に戻りたい。そしてゴロゴロしてスマホを見てゲームをして、気が向いたら近所のラーメン屋に…って生活に戻りたいって気はあるのだ。
トイレだって水洗どころかウオッシュレットで…まあトイレはもう慣れた。
コッチに来て20年以上経つし。
あの後、調べてみたらトイレは汲み取って肥料にするほかは土魔法で埋めたり固めて捨てたりなんてことをしていたらしい。捨てる先はその辺の山とか、ダンジョンの中。
ダンジョンに捨てると吸収されてちょうどいいらしいが…そんなのやってたらダンジョン内が冨栄養化しすぎて苔がいっぱいになるんじゃないかと心配してしまう。
まあ、ダンジョンが近くにない、山もあんまりない、市街地の場合はどうするかなんてのも考えないと。下水道を作るのが一番なんだろうけどな…その後処理場を作って微生物に処理させて…うーむ。
風呂は何としても欲しかったので作った。
アークトゥルス城にも叔母上に頼まれて作ったのがあるからまあ良い。
というわけで、欲しいのは飯やエアコン、パソコンにゲームに本に…って娯楽くらいか。やっぱ現代は恵まれてたんだな。
でも今の生活を全部投げ捨ててか?と言われるとどうか。
アシュレイや師匠を放ってこのまま…って女ばっかりだな。
もうちょっと生活を見直した方が良いかもしれん。
なんてことをタクシーに乗りながら考えた。おっと、アカはタクシーじゃなくて
それにしても支配領域がぐんぐん増えた。
ヴェルケーロだけの時から比べると今は土地の広さでおよそ10~20倍くらい?
人口だと何倍なんだろう。最初は1000人スタートだったからな。
今は10万どころじゃないだろうし。まああまり考えないでいいか。
俺の力は待てば待つほど強くなるのだから。
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