第242話 激突必死

正装して飯食って。

アシュレイ復活記念パーティーは無事にとは言い難いが終わった。

どの辺が無事じゃなかったかと言えば残りの2魔王も来てたことだ。


以前に会った事のあるベラトリクス魔王とガクルックス魔王。何故この二人がいるかと言えばもちろん伯母上が招待したかららしい。

和やかな雰囲気で顔合わせした後、唐突にそれは始まった。

同じテーブルを3魔王と俺と師匠の5人で囲む。


「ところで貴様は魔界を統一すると言っているようだな」

「ブホッ…ゴホゴホ…失礼。」


メイドの入れてくれた紅茶を吐き出しそうになったが、何とか咽るだけで堪えた。


「ああ。その為には貴君らも軍門に下ってもらう必要がある」


師匠!?

俺が咽てる間に何で勝手に答えたの師匠???


「ふむ。では軍による戦いか、或いは一騎打ちにて決めるかであるな。お主らはどちらが良いのだ」

「俺はどっちでも良いぞ」


気だるそうにベラトリクス魔王ことベラさんが問い、ガクルックス魔王ことガクさんはどっちでもいいけど早くやろーぜって新作ゲームを買ってもらった子供のような顔をしている。


「私もどちらでも良いですわよ」

「なんでやねん」


何で伯母上もやる気満々なん?

これだからもう…魔族ってホントバカ。バカばっかりだわ…


「はぁ…人族との戦いも有ります。兵の損耗は好みませんな」

「良い答えだ。さすがはカイト殿よ。」


指揮官として、魔族の上に立つものとして。

いたずらに兵を損ねるような真似はしたくない。と思ったがベラさんには褒められた。

これはつまり個人の武勇でも譲る気はないという意味で取られたのだ。

…そんなに褒めるなよ??


「うむ。ベラトリクスの言うようになかなか良い若者ではないか。儂の娘はどうだ?儂に勝てばくれてやろう。ああ、儂の軍門に下ってもくれてやろう」

「どっちにしろじゃないですか。駄目ですよ、カイトの正妻はもう我が娘のアシュレイと決まっております。ね?」

「…そうですね」

「側室でも良いぞ」

「ハハハ…」


なにやら、師匠の方向から妙な圧を感じる。

気のせいだろう。


「アシュレイ殿と言えば、復活されたのだな。カイト殿が復活させたのだろう?」

「ええ。つい先日の事ですが」

「という事は久遠の塔80層か。うむうむ、これは楽しめそうだ。幾つになったのかね?」

「えーっと…?22歳になります?」


レベルの事か?と思ったけどここは年の事だな。


「若いな…将来有望だな。ところでアークトゥルスの。お主は…」

「女性に年を聞くのはどうかと思いますよ?」


メシリ、と嫌な音が響いた。

厚さが10cm以上ある頑丈な木のテーブルが伯母上が手を置いている所だけ凹んだのだ。握りつぶしたとかではない。手を置いただけなのに…


「伯母上…」

「あらやだ。おほほカイトちゃん、直してくださる?」

「はいはい。」


魔力を通してテーブルを再度成型する。

木の加工ならナンボでもやりまっせだ。なーんてことは無い


「うーむ、便利なものだ。儂の所の橋がいくつか崩れて酷いことになっておる。直してくれんか」

「いいですよ」

「ほう」

「配下の領地は私の領地ですから…領の整備に労力は惜しみません」

「…ほう。良いことを言うものだ。」


にやりと笑うガクルックス魔王。実に愉しそうである。

『お前の魔法、便利そうだからちょっとウチの領まで来いよ。便利に使ってやるからよ』に対して、『どうせ俺のモンになるんだから言ってもいいよ』と返したのだ。

彼にそんな意図はなかったかも知れんけど、まあソレはソレでいい。


ガクルックス魔王はゴツイ岩のゴーレムみたいな魔族だ。

岩魔族とかって名前の種族らしいが…兎に角防御力が高く、その重量から繰り出す攻撃もかなりえらい事になるらしい。

代わりに動きは重く、移動は遅い。らしい。ってマークス情報だ。

ならば石製の橋くらいスパッとかけてくれるんじゃないかと思うが…


もう一方のベラトリクス魔王は所謂魔族です、って感じで翼が生えて角がある。

魔族のエリート中のエリートである。強そう(小並感 ってところか。

戦ってるところを見たけどいい意味での器用貧乏。

何でもできるオールラウンダータイプで。

何でも出来て隙が無いらしい。


おまけにイケメンだ。

魔界屈指のイケメンでモテモテ。奥さんもいっぱいらしい。

畜生、爆発しろ。

俺もあんな風に生まれたかった。



あと何故か戦う事になった伯母上は普通に強い。

ただし後衛タイプで、親父とか叔父上と組んでいた時は弓メインで戦っていたらしいが…詳細は不明だ。少なくとも魔力は今の俺より多そうである。

うーむ…後でアシュレイにこっそり聞こう。


ああ、こんな強そうな3人と戦う事になるとは。

参ったな、って思いと楽しそうだな、って思いがある。

どうも俺もこの能天気な魔族たちに毒されてきたようだ。

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