第219話 復興計画

復興については俺が居なくてはいけないところと、居なくてもどうにでもなるところがあると思う。


基本的には嘗ての状況と同じか、あるいはそれ以上のモノにしたい。当然だな。

という訳で果樹園や畑をも度の状態に出来るだけ戻す。


でも街のすぐ近くにあった畑はこの際なので移動する。

もっと街を発展させないといけない。

もう住宅や商店、それから劇場や公園なんかの施設を作るスペースが畑で埋まってしまっていたのだ。


今までにも公園は作ろう作ろうと思って、どうにかブランコがある幼児向けの公園くらいは作った。

でも本格的な大きな滑り台やプール付きの公園、大人がゆっくりと遊べるスペースなんかはまだ無い。この際だからそういうのも作ろう。


戦争の後、焼け野原になった所に前と同じような状況ではなくさらに良い物を作ろうとして街を改良するというのはよくある事だ。

という訳で内壁と外壁の間の荒らされまくった区間に色々楽しい施設を作ろう。


内壁の中にも新しく娯楽施設を作ってもいい。いちいちあっちまで出かけるのも遠いし?

でもまあ、出かける間に知らない店があったりすると購買意欲が沸くかもしれん。

あえて少し離したところに施設を作るのもアリか…ぐぬぬ。


「どうしよマークス?」

「若、マークス殿はまだ戦場ですよ」

「あー、そうか。いかん忘れてた。急いでアッチにも行かないと」


そう言えばこっちのゴタゴタですっかり忘れていたが、リヒタール方面ではマークスがまだ戦っているはず。アカに乗ってまた見に行くか…俺が行って大暴れすればこっちヴェルケーロ側の侵攻が失敗したって分かってあっちリヒタール側の兵も退くかもしれん。


「マリア、俺また出かけるわ。」

「リヒタールにですか?もう少しお休みなされては」

「まあそうもいかんだろう。シュゲイムとウルグエアルを呼んで」

「はい」


執務室でうんうんと唸りながら町の計画を考えていると二人が戻って来た。


「失礼します、シュゲイム殿、ウルグエアル殿をお連れしました。」

「失礼します。」「失礼、お呼びだとか」

「おう…」


時間は…昼前って所か。

飯食いながら話そう。


「二人とも、飯食いながら話そう。マリア、師匠も呼んでおいて」

「はい」


しばらくして食堂へ。

今日のランチはカレーモドキか。

香辛料はある程度同じようなのを見つけたが、ここらじゃ採れなくてまだまだお高いから色々足りない味なのだが、これはこれで気に入っている。

出汁は鳥ガラじゃなくて豚骨だ。これもいつもの事だな。

つーか具が…これ朝とほとんど同じで味付けが味噌かカレーかの違いだけなんじゃないか?


なんて思いながら食べる。

ちくしょう、大体同じなのに美味い!

カレーを皆でハフハフと食べながら話す。


「…マークスがまだリヒタールの戦場に居るからあっちを見に行こうと思う。こっち側は師匠に任せると言いたいところだけど、師匠が体調悪そうだから二人に任せたい」

「私はまだまだやれるぞ!」

「まあそう言わずに。部下を育てないとダメじゃないですか」

「そうか…?」

「割り振りは難しいが、シュゲイムは復興を、ウルグエアルは軍事を頼む。まず軍務だが、ウルグエアルは賊となって残っている者の討伐を第一に、そしてトンネルを再度封鎖するように頼む。降る者は受け入れても良いが、当面の間は監視をしっかりするように」

「ハッ!」

「続いて復興についてだが、とりあえず前の収穫量を再現できるようにしたい。だが、色々新しい物も作りたいと思っている」

「新しい物とは何でしょう」

「公園やプール、競技場…などかな?内壁と外壁の間に幾つかあるスペースの一角を使ってそういう施設を作ろう。出来れば雪に埋もれないようなところが良いが。作物についてはは帰ってきてから魔法を使う。苗と種を確保しておいてほしい。」

「ハッ!商人とも協力します」

「うん。それから…敵兵の死体はどこかにまとめて埋めて塚でも作って供養してやろう。敵も味方も死ねば人は人だ。住人達の健康には気を使ってやってくれ。寒いから腐敗も遅いと思うが、疫病の原因になんてなられても困るからな。出来るだけ死体には触らないように、マスクや手袋を付けるように。可能なら火葬した方が良いが…」

「燃料も魔力も厳しいだろうな」

「数が数ですからね。まあ大きな穴を掘って埋めるしかないでしょう。力自慢たちには優先的に穴掘りをさせてくれ」

「「ハッ!」」


とりあえずはこの辺か。色々言ったが、そんなにリヒタールに長居するつもりは無い。

サクッと帰ってこれると思うんだが…


「あと、二人と師匠にもこれはお願いしたいのだが。いい加減、法をキッチリと決めないといけないと思う。今ある法はフワッとしている所が多すぎる。魔界で基準になるような法にしたいし、出来れば将来、もし人間界を領するような事になっても通用する法を作りたい。」

「すばらしきかと」

「ありがとう。俺は領主であろうと法の下にあるべきだと思う。偉いから盗んでいいだとか殺していいだとか……今、うちの領にそういうクズは居ないと思うが、今後、魔界や人間界まで領土が広がった時のためにきちんと法を定めるべきだ」

「「ハッ」」

「素晴らしい考えだ。良いではないか」

「ありがとうございます。それで、法を作るには今までの各国の法律を知っていた方が良いと思う。シュゲイムはエルトリッヒをはじめ人間界の法律関係を、ウルグエアルは魔界の領主たちの法を、師匠は大魔王城に伝わるかつての法を…どうにかそれぞれ調べて欲しい。他も忙しいだろうからとりあえず部下に集めさせるくらいでいいと思うが…まあ頼む」


3人それぞれに頷いてくれた。


「じゃあカレー食べ終わったら出発する。アカ、お前の元気はどうだ?」

「おれは元気いっぱいだぞ!」

「おう。…ねえ、何かまたでかくなってない?」


柴犬サイズだと思っていたがいつの間にやらバイクから軽トラに、そしていまや2トントラックサイズになろうかとしている。うーん、俺大型免許は持ってないんだよな…そろそろやばいかも。つーか家の中に入るのもそろそろ限界かも…ここが大型魔族でも大丈夫な造りの館だから何とかなるけど、日本のアパートだともう玄関から入れないしベランダからも溢れる。


「おれは元気わいてきてるぞ!カイトも強くなっただろ!」

「そうだな。そう言われりゃそうだ。でもなあ。」


今回はたくさん人族を殺したはずだ。

かなりレベルが上がっていると思う。でも街がぶっ壊されたからギフトの補正は下がっているのかも。

なのに結構強くなった感がある。

街が壊されたことが反映されていないか、もしくは…これは恐らくあの怪しいアナウンスが関係しているんじゃないか。

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