第185話 80層攻略戦
アーク歴1504年 壱の月
久遠の塔 80層
領地で頑張っているゴンゾたちは放っておいて、不良領主である俺はサクッとダンジョンへ向かう。
年も変わり、力がグンと上がった感じもある。
今度こそ80層のボス『巨人:タイプクソ親父』をブチのめす。
ボッコボコにしてやるのだ!
「行くぞアカ!」
「おー!まかせろ!」
80層に踏み入る。
中にいるのは前回と同じくより巨大になった親父である。
こんなもんどうしろってんだ。
…いかん、もう弱気になってしまっている。
だが、今回の俺は違う。
押しても駄目なら引いてみな!って訳ではない。
肉弾戦を諦め、文明の利器を使うのだ!
お試しで火縄銃を、次に大砲を作った。
どちらも人族軍の使っていた物は前装式である。
という訳で俺たちは後装式に挑戦した。
そこまでは上手くいった。と言っても大砲の後ろから丸い球と火薬を入れて蓋をし、ぎゅっとねじを締めてそこに着火するというモノだ。
着火については雷管をどうしようか悩んだ魔石があれば良い事に気が付いた。
火属性の魔石はある程度の温度に熱すれば燃え上がる。なので砲のお尻を100度程度まで温めてやれば勝手に燃えて火薬に着火し、爆発を起こして球を押し出す。完璧じゃないか!
「まあ問題は威力なんだけど」
ゴンゾに作らせた砲を並べ、発射の準備をする。
ありったけ持ってきて、10門だ。
そしてアカが引っ張ってきた親父型巨人に向けて、撃つ!
「アカ!目瞑って耳塞いで口開けろよ!クソ親父!日頃の恨みをくらえ!」
ドドドドドドドドン!
火魔法でケツを暖められた大砲は順調に球を吐き出す。
ものすごい衝撃と音。デカい地震か雷かって感じだ。
対ショック姿勢はとっていたし耳栓もしていたが、頭がくらくらする。
煙がすごくてどうなったかは分からないが、とりあえず今すぐ殴られたりはしなさそう…っておっと、撃ったら回収だ。
ちゃんと持って帰らないとゴンゾに叱られる。
10門ぽぽぽいっと回収し、敵の様子を伺う。
アカ?アカなら俺の横で目回してひっくり返ってるよ?
「ぐうぅぅぅ…」
「ひでえ腹の音みたいだな」
煙が晴れた所にいたのは。
足が陥没し、腕が変な方向に曲がり…あちこちに傷を作った巨人だった。
「あれ喰らってもこの程度か」
ゴンゾさん謹製大砲の威力は中々やばかった。
試しにウチの城門と同じような目標を作り、外さないようにすぐそばから撃ったら1発でぶっ壊れた。うぬ。大砲がやばいのかウチの城門がやばいのか。
次に土魔法で作り、固めた壁…ユグドラシル王国防衛の時に戦った城壁とほぼ同じものを作った時は一発で壁にめり込み、5発も同じところに撃てば壁に穴が開いた。まあ実際の戦場だと同じところを狙うなんて無理だと思うが…まあ威力の検証だからね。
とまあ、そんな高威力の砲を10発も喰らってもまだ生きてるのだ。
うーむ、さすが親父。頑丈である。
「でもまあここまでだ。ツリーアロー・トルネード!ダブル!」
木矢の竜巻を二重に出し、二つを融合してさらに強力にしたものを巨人にぶつける。
目標は樹々に拘束されながら空高く舞い上がり、天井にぶつかって落ちてくる。
落ちてきたモノは無数の矢で本体が見えなくなった巨人だ。
「何か魔法の威力も上がったような…いや、今はそれどころじゃない。
「グ、グオオ」
「すまんな親父。これで終わりだ…ヘル・インフェルノ!」
地獄の炎を召喚し、相手が死ぬまで燃やし尽くす技だ。
アシュレイが成長後に使えるようになる魔法で…その中二臭さは最高だった。
「ぐおおおおん…」
ズシン。と倒れ、動かなくなる巨人。
よし、無事討伐完了だ。
俺も強くなったものだ。ふふん。
つーか何時もの木→火コンボでも倒せたかもしれん。
強くなってしまったものだ。
「かいとどこだー?なにもみえぬ!なにもきこえぬー!」
「何でそんな喋り方なんだよ…ヒール!ヒール!」
喚きながらパタパタと飛ぶアカを抱き寄せ、目と耳を中心に回復魔法をかける。
脳にまで障害が逝ってたら喋れないし飛べないだろうから、眩しいとか鼓膜が破れたとかその辺じゃろ。ならヒールで治るはず。
「お、なおった!やるなカイト!」
「おう。こっちもお前が釣ってくれたおかげで倒せたぞ」
「おー!よかったな!」
「ああ。これで目標は一応達成だ」
80層攻略で手に入れたアイテムは巨人族の指輪。と謎のカバン。
カバンは分かる。恐らくマジックバッグだ。
そしてこの大きな指輪は。
「『ニーベルンゲンの指輪』…か。」
ニーベルンゲンの指輪
DEF+150
MDEF+250
●●●を▲▲する
ふむ。
防御力は高い。
それと、隠し性能があるみたいだが分かんねえな。
だが何よりその大きさが問題だ。
俺には腕輪にしてもまだでかい。
足輪?くらいのサイズである。使いにくいな。
これも保留だな…いっそ売ってもいいか。
「まあ疲れた」
「ひどいめにあったぞ!」
「すまんすまん。帰ろっか」
アカは後半寝ていたが、良い囮になってくれた。
良い仕事をしてくれたのでたくさん食べさせてやろう。
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