第184話 炭と花粉


アーク歴1503年 什の月


さあ、今年も本格的に冬がやって来た。


冬と言えば我がヴェルケーロ村では農作業はほぼお休み。

ヴェルケーロ領の山間部では雪が降るわ水は凍るわでまともに農作業は出来ないのだ。


という訳で家の中や工場で出来る作業をする。後は寝る。

積んであった綿花やら刈りっぱなしで放ったらかしになっていた羊毛、それに麻なんかを紡ぎ、布を織る作業がメインになる。

寒い冬に水をたくさん使う作業も多い。

出来るだけ暖房をつけるようにしているし、暖房器具は色々と作ってみている。

でもなあ…限界あるんだよなあ…


今年はそれとゴンゾの所が頑張ってる。

製鉄所…というか、炉は無事に作れた。

たたら製鉄から一気にランクアップして高炉を作ってみたのだ。


一番のネックになる耐火煉瓦はあっさり土魔法で出来た。これに悩んでいたから手を出さなかったのに、マークスに相談したらあっさりと出来たんだからふざけんなだよね。

そう言えば昔、アカをテイムした時にどこからともなくレンガ出してブレス吹かせてたけど何とも思わなかったわ。くそ、抜けてるのは俺か。



燃料は勿論石炭である。

火魔法と言いたいところだが、火魔法をそれほどうまく操る人材が今我が領内にはいない。

アシュレイが復活したら火力担当として大活躍できるだろう。

製鉄所で大活躍するお姫様、魔法少女ならぬ魔法プリンセスだ。どうなんだ。


アカ?あいつのブレスは火力は高いが不安定すぎてダメだ。

確かに鉄鉱石を溶かして鉄を取り除くことはできるだろうけど、その後結局残ったの全部溶かすから不純物を取り除くどころか不純物だらけになってしまうだろう。


転炉も作りたい。

転炉ってのは鉄を溶かす大きなお鍋で…溶かした後、料理でいう所のアクを上手く取り除くことが出来るようになるのだ。

つまり不純物を取り出しやすくなる。


鍛造の時に木炭を使ってカンカンとやるのはつまりは不純物を取り除いているわけだが、あの作業がいらなくなる。いや、少なくできる。かな?

…でも昔の玉鋼から出来た刀剣を令和の技術じゃ再現できないらしいってんだから不思議だよなあ。



兎に角ゴンゾたちは外が真冬でクソ寒い中、滅茶苦茶に熱い溶鉱炉を作って鉄をコネコネしている。その熱でそこら一体だけ雪が積もらんらしい。暖かくていい事だと思わなくもないが、これは熱が逃げてるんだ。

熱が逃げるのはあんまりいい状態ではない。ロスが多くなり、燃料が余分にかかる。どうにかならんもんか。


…と言う訳でどうせ逃げる熱ならと工場の下にパイプを通してお湯を循環させるようにした。どうせ溶鉱炉部分はいつも燃やして熱を出しているのだ。

熱が逃げるのは効率が悪くてもったいないかと思ったが、適当に熱を逃がさないと…と思って改造してみたら思ったより評判が良かった。暖かくて腰が痛くならないそうだ。


良い事をしたと思ったが、今度は町中があそこの工場だけズルいと言うのでゴンゾと一緒に防寒具ではなく普通に暖房を作ることになった。

よくある煙突が付いた暖炉もあれば炭を使った囲炉裏や火鉢、それに練炭を作って七輪…


七輪と練炭の組み合わせはいい感じで飛ぶように売れた。おかげで炭焼きも七輪を作る窯も大変だ。

この間作った炭焼き釜が大活躍している。いちいち崩すタイプの窯を使っていたようで効率がクッソ悪かったが、大型で一度にいっぱい焼けておまけに何回も使える。


通常は炭焼きをする前に時間をかけて乾燥させて、それから焼かないといけない。

でもそこは樹魔法さんが大活躍して乾かしたいなあ~と思うと奇麗さっぱり乾燥して木も割れない。

こんなんチートや!って炭焼き職人さんに言われそう。

おかげで山でいっぱい出た端材が次から次へと炭になっていく。


山の方もいい加減禿げ散らかしてきたのでまっすぐ生えそうないい感じの木を見繕って育てて植えて…植えてから気付いたけどこれたぶんスギかヒノキだ。

将来花粉でえらい事になる。


そう思ったから違う区画にはいっぱい楓を植えてメープルシロップ生産&販売でぼろ儲けをする事にする。

ちなみにやっぱり花粉はえらい事になる。



――――――――――――――――――――――――――――――――

日本じゃスギ花粉が一番有名ですが、メープルシロップの本場カナダではメープル花粉で大変困っているようです。

まあしょうがないね

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