閑話 第一回大食い大会 後編


まさか大食い大会で前後編に分かれるとは…

――――――――――――――――――――――――――――――――――



もう駄目だ。限界だ。

だが、こんなところで負けていられない。

俺は、俺は今日限界を超える。

限界とは超えるために在る、一つの目安に過ぎない。


その事をこの俺が証明し「しゅうりょ~~~!お疲れさまでした!」

ふええ、終わっちゃったよおお…というややっと終わった。終わってくれた。


脳内では頑張って戦っていたが、後半はほとんど手も口も止まっていた。


まあ俺だけじゃあない。

ほとんどの出場者は、後半晒し者になっただけの時間だった。


60分一本勝負は長すぎたな。

30分でいい。

むしろ10分でもいいかも。最初の勢いで押し切るしかないわ。

1時間はとても無理だ。

いっそ一回トイレで吐いて戻ってきた方が食えそうだが、そんな勿体ないことは出来ない。生産者は絶対そんなことやんないと思うんだけどな。


「皆さんお疲れさまでした。優勝者は…」


どーせロッソだろ。

ロッソは俺の隣で2つ目の『大人のお子様ランチ』の殆ど最後まで食ってた。


やっぱり体がでかいと胃袋も半端ないんだな。

10kg食うとかどうなってんだ。

誰だ体重なんか関係ないとか言ってたやつ。後で俺がシバき倒してやろうじゃないか。


「『大人のお子様ランチ・超特盛』を見事2杯完食!マリラエール様です!おめでとうございます!」

「うおおお!」「キャー!」「すげえ!」

「え?…えええ!?師匠!?」


勝ち名乗りを挙げたのは何と師匠である。

うそだろ?

あのほっそりした体のどこにこの王様ランチが2個も!?


「うむ。大変美味であった。こんなに美味い物をこんなに大量に食べたのは初めてだ。調理した者は?」

「私どもです」

「マリア殿たちか…なかなか美味であった!大儀である!」

「有り難き幸せに存じます」




マリアには俺渾身の日本お気に入り料理レシピを仕込んである。

カレーだけは香辛料の手配の難しさから中々厳しいが、それ以外は大体イケるのだ。


大人のお子様ランチのメニューはオムライスにハンバーグ、ステーキに唐揚げにウインナーにスペアリブにナポリタンに…とにかくこれ嫌いな奴いる?ってメニューなのだ。

文句は言わせん!


「ではカイト様より優勝の記念品を」

「あ、はいはい」


重い体を引きずって前に。

マリアの所に行って渡すための記念品を受け取ろうとするが何も出してくれない。

どうすりゃいいんだ?ってアピっても首を振るだけ。


ええ?用意してないの?どうすんだ?


「何をくれるのだ?」

「えーっと…じゃあちょっと待ってくださいね…」


魔力を込めて木を産み出し、そして成型する。

イメージは『大人のお子様ランチ・超特盛』そのものだ。それに足をつけて…


「できた!どうぞ師匠!」

「う、うむ。なかなか立派だな…」


嬉しそうな師匠。

色はともかく、やたらと最限度の高い巨大お子様ランチの像が出来上がった。コレで着色すればお店のディスプレイに使えそうだ。


うん、美味そう。

と言うか実際にすごく美味しかったんだけどね。量がね…


しかしまあ、我が領も最初は食べ物に困っていたのに。

今や祭りの時に豚を潰すことなどなんとも思わなくなってしまっている。

今回は牛まで潰している。すげー美味かった。

そのうち牛にランク付けしたりしちゃうんだろうか。



食べ物にランクをつけて美味いとか不味いとか言っちゃうんだ。

まったく、贅沢になったものだ。けしからん。

やはり粗食だ。贅沢は敵だ!?


とは言っても優勝してニッコニコの師匠を見るとやって良かったと思う。

大人のお子様ランチはともかく、通常サイズのお子様ランチは定番メニューにしていいと思うし。


「今回も盛況でしたな」

「そうだな…腹がちぎれるかと思ったがな。それにしても師匠は嬉しそうでよかった。俺だってロッソとベロザには負けたがシュゲイムには勝ったぞ!フフン!」

「そうですな…あちらは負けても嬉しそうですがな」

「なぬ」


チラッとシュゲイムを見ると、どうでも良いむさ苦しい騎士団のメンツはともかくとして、美人の奥さんと子供たちに囲まれてデレデレしてやがる。


畜生!やっぱりこうなるのか!

リア充爆発しろ!


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る