第158話 訓練の日々
「んじゃー俺はダンジョン行ってくっから」
「…いって…ぃ」
「おれは!?」
「アカはお留守番。行ってきまー」
「ひどいぞカイト!ずるい!」
「ふふっ。残念だったねぇ」
大して残念がってないアカと茶番をした後はダンジョンへ。
久遠の塔ではなく、ヴェルケーロにあたらしく発見されたダンジョンだ。
このダンジョンは最下層の一歩手前から降りる階段の先にある門をくぐってからが本番だ。
通常ボスがLv100だとすればLv120くらいの強ボスが出現するらしい。
久遠の塔に行くことが時間的に難しい身としては何としても強敵の沢山いるダンジョンで少しでも稼がないと!という訳で主に経験値稼ぎのつもりでダンジョンに挑む。
「まあ強ボスはソロじゃあ倒せないんですけどね」
「あ、坊ちゃんお帰りなさーい」
行ったと思ったらもう帰って来た。
そのくらいの感覚である。
移動含め2時間くらいか。ほんの昼飯前って感じである。
なお、移動時間に20分くらいはあるのでダンジョンでの実働時間は1時間もないくらいなものだ。
久遠の塔だとそれでもそこそこ時間が経ってしまうが、ここのダンジョンは内部と外部の時間の流れは大体同じ。経験値を稼ぐのにはとってもお得なダンジョンだと思う。
強い方のルートに出現するボスはアカと一度倒したことはある。
何度も再生する水属性の巨大なドラゴンで…
ぶっちゃけ俺らと相性はすごく悪かった。
ブレスは巨大な水のようなドラゴンの表面に波紋を起こすだけで消え、俺の樹魔法は味噌汁に割りばしを突っ込んでグルグル混ぜたような状態に。
つまり二人とも属性魔法は何の効果もなかった。
樹は水を吸って育つので相性がいいと言うが、ドラゴンの巨体の水分を吸い尽すことなど到底できず。
翼を切っても手足を切断しても、水の力でペタッとくっついたり再生したり。
何度も何度も再生されながら物理火力でごり押しした。
ぶっちゃけ俺の一番苦手なタイプである。
アカさんがいたから物理火力はかなり補えたが、ソロだとだいぶ厳しいだろうな…
属性相性も悪く、物理的な攻撃はそこそこしか効果が無い。
そして再生能力持ち。
圧倒的な火力があるのならば苦労もしないだろうが、悔しいけどカイトの物理攻撃性能は著しく低いと言わざるを得ない。
こういう時アシュレイならどうかと思ったが、アイツなら魔法の相性が悪くても脳筋でボコボコにして終了なんだろうなと遠い目をしてしまうほどだ。
まさに力こそパワー、レベルを上げて物理で殴る、である。
嘗ての偉人の格言通りだ。
素晴らしいな。
だが、上を見ても仕方がない。
手持ちの武器で何とかするしかないのだ。
という訳で強ボスには挑まず、通常ボスを周回してお金を稼ぐ。
雑魚を狩り、ボスに挑む。
雑魚と一口に言っても相手の数によって動きは違う。
それをできるだけ一撃も喰らわず、最小の手数で葬る。
同じ相手に何度も挑むことによって動きを最適化するのだ。
すると次第に対人などでも技の起こりを感知できるようになる。らしい。
マークスがそう言うからそうなんだろ。
ただし、モンスターではなくヒトの場合はフェイントなんかも織り交ぜてくるからそこを気にしないと…という事をダンジョンから帰ってきての模擬戦で思い知らされる。
マークスもロッソも、アフェリスが回復できると知ってからは手加減が少し減った。つまり俺はボコボコにされるようになった。
自分の魔力で回復していた時は回転が悪かったが、アフェリスに回復させるようになってからはぶっ倒されて起きてぶっ倒されて…の起き上がりこぼしのようになっている。
弱いから仕方ない。
兎に角、日々トレーニングだ。
ダンジョンで、対人で。
これを繰り返すことでさらに強敵にも挑めるように…
訓練の日々は続く。
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