第154話 再会

アーク歴1501年 陸の月


アークトゥルス領



「お、アークトゥルス城が見えてきたな」

「行きにも寄った城ですな。たしか、ご領主様の従兄妹姫がおられるのでは?」

「そうなんだけどな…そういや行きの時は顔も出さなかった。ちょっと見ていくか」


帰り始めてから2日目。

シュゲイムと話しながら馬に揺られているとアークトゥルス城が見えてきた。

スルーして帰る領主もいれば町で休憩する者も、補給をしていく者もいる。

俺たちは町に寄って飯を食って、お土産でも買って帰ることに。


「じゃあこれ渡しておくから。皆にうまく分けて」

「これは、ありがとうございます。おーい!カイト様から頂いたぞ!土産を買って帰るぞー!」

「イヤッホー!ありがとうございます領主様!」

「おう。喧嘩すんなよ!酒は帰ってからだぞ!」

「「「はい!」」」


お金の入った小袋をシュゲイムに渡し、俺はお城の方へ。


「こんちわー。アフェリスいる?」

「いらっしゃいますが…」

「勝手に入るぞー」

「ちょっとお待ちを。カイト様!?」


のっしのっし勝手に入る。

何だか知らないが、前回の時といいアフェリスは俺に会いたくないのか?

もし会いたくないとすれば、伝言なんか頼んでも断られるだろうから勝手に入るのだ。


「カイト様?お待ちを!」

「アフェリス何処だ~?」


何だか隠れんぼをしている気分だ。

メイドさんが後ろから追いかけてきているが当然スルーである。


さて、隠れんぼか。アフェリスは昔はどこよく隠れていたか。

…思い出してきた。

あいつはいつも母である王妃の部屋のクローゼットに隠れていたのだ。


「み~つけたっ!」

「…」


見つけた。

前と同じところで前と同じように隠れている。

コイツも全く成長しないやつだ。


「ほら、出て来いよ。久しぶりだな」

「…」


コクンとうなずくが、一言もしゃべらない。

しかし、成長しないのは行動だけで身長も大きくなったし何だかアシュレイに似て来たような。

その割にまだまだちびっこい感が抜けないが…俺と同じでエルフの血が濃く出たのかな?


「アシュレイに似てきたな?」

「…」

「どうした?何か喋れよ」

「…」

「ん?怒ってんの?」


無表情のまま、口を開こうとしないアフェリス。

あれだけ喧しく俺たちの後ろをついて回り、何をするときもキャンキャン喚いていたアフェリス。


俺たちが汚れないように注意している真横で泥んこになって親父に怒られたりもした。まあ、あの時怒られたのは俺だけだが…ぐぬぬ。


でも今は彼女は喋らない。

いや、喋れないのか?


「カイト様!どちらに!」

「ここだ」

「カイト様…アフェリス様も。」

「レリラ?アフェリスが喋らないんだけど?」


『レリラ』という名の昔からいるメイドが追い付いて来た。

彼女には、昔俺らがお城の中で遊びまわってた時によく追いかけて来て怒られていた。

全てが懐かしい。あの頃はいつも3人で遊んでいたのだ。


「アフェリス様は、その…あの事件の後から徐々に…」

「…そうか。」


父と姉を一度に失い、母は仕事でロクに面倒を見れない。

たまに遊びに来ていた従兄妹は…まあそれはどうでも良いかな。


「アフェリス様、こちらにいらしたのですか?今日の分はどうなりましたかな?ン?」


なんだか変な奴が来た。

偉そうな態度、おかしなヒゲ。


「そこの兵は一体なんだ?アフェリス様に何をしているのだ?」

「…」


兵ってなんの事だと思ったら俺か?

そう言えば俺はそんなにいい鎧じゃない。

というかダンジョン用の中古鎧で、ちょっとくたびれて小汚い。


でもまあそこらの上級冒険者が使っててもおかしくない…かもしれん。その程度。

まー、とても貴族が使う一張羅ではないな。


「応えぬのか?一体何かと聞いている」

「…レリラ、このアホは何だ?」

「アフェリス様の家庭教師です。女王様は自分で手配すると言われたのですが、大臣共がコレにしろと」

「ふむ。アフェリスはコイツ嫌い?」

「…(コクッ」


ふむ。

俺も嫌い。

どこがとは言いづらいが、すっごく嫌らしい感じなんだよね。


おまけにアフェリスを見る目もなんだか気持ち悪い。

欲情したオッサンの目つきである。

うーむ、という事は俺も時々あんな顔しているのかもしれん。

気を付けないと。


「き、貴様アフェリス様を呼び捨てに!このお方はアークトゥルスの時期女王様だぞ!何という口の利き方を!それに私に対してアホだなどと!衛兵の皆さん!不審者ですよ!」

「不審者はお前だろこの…ボケ!」


アホがダメならボケでいいか。

そんな思いを込めて、渾身の右ストレートを放った。

奇麗に決まったストレートは変態の体を壁にぶつけ、変態は無事に壁際でミンチに…はならなかった。駆け寄ってきた衛兵に起こされていた時にはちゃんと生きてた。

くそう、修行が足りぬ。


親父ならボケをミンチにして後ろの壁に塗り込んだだろう。

まだまだだ!

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