第111話 ユグドラシル防衛戦 終幕


12日目の朝が来た。


いつもの様に防衛を開始。


増援が来てからはすっかり楽になった。

飛竜部隊は半分くらいが出張してしまっているが、それでも全然戦力は違う。

それに何よりみんなの士気が全く違うのだ。



というわけで相手の数や質が上がっているのに10日目までよりはるかに楽に防衛が出来ている。

それもこれも俺が中央で指揮をするおかげ…ではないことだけは確かだ。



だって指揮らしい指揮なんてしてないんだもん。

ロッソがいればいろいろ教えてくれるんだけどな。

知らない人ばっかりの所で指揮するなんて怖い。

…と前世の陰キャリーマンゴーストが俺に囁くのだ。


そんなこんなでお昼前くらい。

そろそろMP回復薬のお世話になろうかと思っていた所で、怒涛のように訪れるモンスターの波が突然止まった。


これは、アイツ等やりやがったか?と思っていたらモンスターがダンジョンに帰り始め、それと入れ違いになるように飛竜に乗って帰ってくる攻略部隊が見えた。

1,2,3…よし。いっぱい。

飛竜は出発時と同じくらいいるようだし、ちゃんと人も乗ってる。負傷者は兎も角、死者はいないようだ。


『うおおおお』と雄叫びのような声があちらこちらから聞こえる。

気が付いたら俺も叫んでいた。アカもなにごと!?って顔をしながらついでに『うおー!』してる。俺も一緒にうおー!みんなでうおー!


終わった。いや、勝ったのだ。

犠牲はかなり有った。

恐らく数百の命が失われ、その何倍もの数の治らない負傷者が出たとは思うが、勝った。


そして、これでようやく休める。

恐らくそう思った者がほとんどだったのではないか。

一頻り叫んだあとは城壁の上に腰を下ろし、へたり込む者がたくさんいる。

城壁の下を見ても地面に座り込んでいる人がいっぱいだ。


「よし、勝鬨を上げるぞ!」

「おう!」

「えいえいおー!」「えいえいおー!」


帰ってきた攻略部隊は城門の中に降り立った。


「おいアカ、俺らも行くぞ」

「おー!」


もみくちゃになる攻略部隊。


「師匠!」

「おう、カイト!倒してきたぞ!」


師匠がガバッと抱き着いてきた。

むほおう!この顔に押し付けられる2つの柔らかいのがたまらん!たまらんぞ!


「師匠凄い、凄いです!(すごい大きさです!)」

「そうだろう!凄い (すごくカッコイイ)だろう」


褒めるとなお押し付けてくる。凄い。凄いが、凄すぎて息が出来ない。

えらいこっちゃ。

アシュレイが究極だと思っていたが、これもまた一つの頂。

これぞ、まさに至高のπ…ぐふっ





………ガヤガヤという声が聞こえてくる。

俺寝てたっけ?と思いながら目を開けるとそこは室内だった。

知らない天井ではない。

一回だけ来た謁見の間だ。


「おう、英雄が起きたぞ」

「弱気になった王の使者を一喝したそうだな。さすがは次代の王よ!我らがユグドラシル王国は安泰だ!」

「そうだそうだ!」「ワッハッハ!」


うるせえなあ。

何やらガヤガヤとうるさい。この感じは酔っ払いどもだ。そうか、つまり


「あー…?祝勝会でもやってんのか?」

「そうだ。お前も主役の一人だぞ。それなのに…それほど嫁の胸は良かったか?ワッハッハ」


上機嫌の爺ちゃんに照れている師匠。

そうか、そう言えば師匠の強力な胸力によって俺は落とされていたのか。


「胸は大変良かったですが嫁ではありませんよ。武の師匠です」

「おまえの事情はそこのロッソに聞いた。その上で言うが、嫁は何人いても良いではないか。むしろ多い方が楽しい事も多い。そう思わんか?」

「それは…」

「側室でもハーレムでも何でも呼び方はあるがな。色々と楽しめるぞ?どうだ?」


どう、と言われても。

控えめに言って素晴らしいとしか言いようがない。


ただそれは、『家庭内が平和であるならば』だ。

正室と側室、その子供同士の争いなんてあっちでもこっちでもありふれた話である。


正室の長男と次男や三男で争うくらいなのだから、数が増えれば増えるほど揉めるのは当たり前で…それを考えると楽しいハーレムでウッハウッハでなんて。

どうだ?って聞かれても。

そんな…


「すっごく楽しそうです!」


そりゃハーレムはすごく楽しい。

そんなモン決まってるぞ!


「ほう、良い度胸だ。どのくらい強くなれたかキッチリと見てやろう。なあに、私は2番目でも3番目でも構わんぞ。ただし、私を嫁にしようというのなら最低でも私より強くないとな…なあ?」

「あわわわ…」


声が聞こえなかったから、てっきり居ないのかと思っていたが、師匠は俺の隣に座っているロッソのそのすぐ隣にいた。


ちゃうねん。ロッソがでかくて見えなかっただけやねん。

いやあ、静かだし居ないのかなと思って…そんな訳ないよな。

師匠は大魔王領からの援軍を率いてきた。祝勝会の場に居ないわけないのだ。つーか立場的には俺より上座の筈なのに何で俺の配下のロッソの下の位置になんて…はわわ。


「えーとですね、それはまあ言葉の綾と言いますかなんといいますか。そう言うのって一つのあこがれだよねーって事で…実際にそういう事になった場合は跡継ぎがどうとかで揉める原因にしかならないので…ね?ロッソもそう思うよね??」

「マークス殿はいつも世継ぎの心配をしておられます!私も若には早くお世継ぎを作っていただきたく!」

「おまちょ」

「ほう。私に勝てるなら何時でも良いぞ?うん?」

「ハハハ…精進します」


やや赤い顔をした師匠がいつでもいいと。

まだまだ無理に決まってんだろ。変な汗出て来た。


そこらに置いてあったジュースを飲む。

なかなかうまい。トロッとしているが、するすると入って体に沁みこむ。

何やら疲れも吹っ飛んでいくようだ。


最初の頃は兎も角、ここ数日は本当にきつかった。

爺ちゃんが逃げろって言ってきた時はつい何弱気になってるんだ!的な事を使者に言ってしまったが、実際俺も弱気になっていた。半分諦めてたところはあるしなあ。


しかしこのジュースうまい。

何だかふわふわしてきた。


「しかし、美味いなあこれ」

「そうですな。持って帰りたいくらいですな」

「お土産にもらおう。爺ちゃんこれお土産にちょーだい―!」

「おう。樽でやろう。お前の所の酒も美味いな。それに布も良い物みたいだ。また持って来い、あるだけ買うぞ。」

「まじで!あざーっす!あ、虫系の素材で余ってるのも安く売ってよ」

「良い良い。持てるだけ持って帰れ。どうせ処理しきれんわ」

「あざーっす!」


げっへっへ。

美味しい物をもらっておまけに商談も上手くいってしまった。

まあ実際素材となるものが多すぎて困るだろう。


肉には困らんと言いたいが、どうせすぐ腐るし、干し肉にするも限界がある。塩漬けにしようと思っても燻製なんかよりよっぽど塩がいるし…まあ大半が廃棄になるだろう。


甲殻なんかは中々腐らないけど、それを解体するのも一苦労だ。

細かい仕事が得意な種族は今こっちには…バラゴ爺さんくらいしか来れていない。

連れてくればよかったな。

そういや、無事にスタンピードが終わったって連絡もしないと…まあいいか。



それにしても俺の世継ぎの話か。

前にもチラッと考えたけど領地が安定すりゃそりゃ次は未来のことを考えないと。


俺もお世継ぎの作成自体は何時でもOKだ。

ただまあその前にいっぱい練習をしたい。

お互いの体をぶつけ合った『ぶつかり稽古』をた~っぷりしてから、実際のお世継ぎちゃん作成行為を行いたい。こう、ラブラブな感じで。


そんな感じの事をふわふわとした頭で考えていた。

時折ロッソやバラゴ爺さんに聞かれてふわふわ答える。

師匠の事はもちろん大好きだし見た目も性格も全く悪いところはない。

何時でもウェルカムではある。


でもまあ、アシュレイの事を忘れてはいけない。俺の目的はアシュレイの復活にあるのだ。

子供がどうこうとか、恋愛に現を抜かすのはそれからでいい。

そうだろ!?




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


見直してみても防衛戦が長すぎだったんじゃないか感。

前章の逃避行編も長かったけどこっちはもっと長い。


でもあんまり短いと、長く苦しい戦いだったはずがアッサリ終わった感しかない。

長くつらい籠城戦を描きたかったので1話や2話でアッサリ援軍が来てもなあ…感があって。某スパロボのように援軍は小出しに来ても良かったのですが、それもどうかと思って一気に援軍が来てパーッと最後は片づけたのですが。。。


普段読み専ですが、長くてダラダラしているとすごく飽きてきます。

その反省を生かしてパパっとやりたいけど結果としてはすごくダラダラしているのだった。ぐぬぬ。


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