第112話 帰宅就寝

あー、頭が痛い。

この頭が頭痛で痛いのはきっと酒によって二日酔いなのだ。あー、アタマ悪い。



どうも、カイト・リヒタールです。

目が覚めたらまた知らない天井で…隣には裸の…



裸のロッソがいた。



「うおおおお!?おお…?頭いてえ!?」


一気に頭が覚醒して飛び起きたが、よく見るとロッソはいつもの褌マントだった。

大丈夫。ただ親父をリスペクトしてるだけだった。

一瞬ビビったが俺の貞操は前後とも守られているっぽい。

ケツは特に痛くない。痛いのは頭だけだ。

どうなってんだ??


「カイトはよっぱらってねてたぞ!」

「あー?俺酒飲んだっけ??」

「あまいあまい!っていいながらいっぱいのんでた!」


そうか。

あのトロッとしたのお酒だったんだ。


「どうりでふわふわしたと思った…ヒール!」


頭痛がスッと消えた。

さすがは俺のヒール。さすがの二日酔い魔法よ。

ああ、おしっこしよ。




祝勝会の跡は惨状としか言いようがないほどに酷いことになっていた。

部屋の隅には酔っ払いと寝ゲロが、部屋の中央付近には頭痛と酷い臭いに悩むオッサンたちがいた。

奥様方はあまりの惨状に怒り心頭であり、片付けは飲み過ぎたオッサンたちにさせることになったらしい。というか奥様方も色々と戦のお片付けが忙しいのだ。




「じゃあお疲れっした。また交易よろしくねー」

「おう、また来いよ!」

「おれはもうにどとこないぞ」


戦が終わって3日、やや落ち着いたかなという所で俺たちは帰ることになった。

スタンピードが終わったことについて飛竜部隊のお兄さんに伝令をしてもらったし、師匠を含む大魔王様からの援軍は昨日のうちに帰った。

アカはもう最後の方には緑の塗装は剥がれまくり、ほぼ真っ赤だったが周りに気にする人はいなくなっていた。

今度からは赤色のままでも大丈夫だろ。たぶん。


俺たちは交易の事もあるから、約束してた商人さんとケンタウロス達に乗せてもらったり歩いたりしながら帰った。







「ただいまーっと」

「「お帰りなさいませ、若!」」


ヴェルケーロに帰ったのは一週間後。

帰りは馬…じゃなく、ケンタウロス君たちに乗せてもらったから早かった。

でもまあ、途中で山道の道路の整備をしたので思ったよりは時間がかかった。

木はポイポイ引っこ抜けるが、地面を均すのに苦労した。

ついでに道幅も広げたしまっすぐに直したりもしたから余計に時間を食った。


山道を拡張して、ついでに休憩所っぽいところも何ヵ所か作り、モンスターを間引き…

まあ休憩しながらで2泊くらいすれば到着できるんじゃないか。馬でなら。

馬車の場合はもっとかかるし徒歩だとやっぱり1週間くらいはかかるだろう。


そう考えるとバラゴ爺さんはかなり急いで往復してくれたみたいだ。

急いで帰って、それから援軍の用意して再度出発。そして到着するまで10日だったのだ。

まだ道は良くなかったし、道中でモンスターとも遭遇したらしい。

…危ない事をさせたな。

というわけで今回、俺の中でのMVPは援軍を呼んできたバラゴ爺さんだ。








帰ったらそこで待っているのはお帰りなさいの宴会である。

エルフたちが作っているお酒や野菜、今回いっぱいゲットしたモンスター肉の干したものをお土産にもらったのでメインはその辺。


他にお土産に貰って来た苗や木、種なんかも植えないとな。

蚕も貰いたいけど蚕は門外不出だから絶対だめなんだって。

ゴネるとまたお前が王になれば~って言い始めたのでスルーして帰った。


「若の活躍で国が守られたと感状も送られておりますぞ」

「俺の活躍?そんなに言うほどあったっけ?」


言うほど活躍した気はしない。

防衛最初の方はいてもいなくても楽々だっただろうし、後半は足止めに精一杯で右往左往してたという記憶しかない。戦力的には俺よりロッソとアカの方がはるかに大きかっただろうし…。


「防衛の一翼を指揮され、死傷者を最低限に抑えられたと。最終日には中央で王の代理を務められたと。あとは若個人の武勇も優れていたと書いてありますが…」

「むむ。良く言えばそうなるのか??」


凄く良い方に拡大解釈すればそうなるのか。

まあ感状に『大した攻撃力じゃないけど足止めは上手かった』とか『小細工ばかりしていた』とか、『コミュ障のせいで他人とほとんど交流しなかった』…なんて書かないよな。チクショウ。


「若は立派にやっておられたかと」

「がんばってたぞ!」


ロッソとアカは褒めてくれている。

そうか?でも褒められると照れちゃうだろ?

照れたのを隠すためにその辺にあるジュースを飲む。


「うおっ!炭酸だ!」


桃のような味の付いた炭酸ジュースだった。うめえ!


「これ美味いな!お土産だろ?いやあ、爺さんも中々気が利くなあ!うんうまいうまい!」


炭酸は前世で大好きだった。

一人暮らしの時の食い物はビッグマックとコーラとポテトが定番だったのだ。

でもコッチに来たら炭酸ジュースなんてなかった。苦いエールだけしかなかったのだ。


俺が欲しいのは蕩けるほど砂糖を使った甘あああああい炭酸ジュースだ。

虫歯量産してやるって作った奴の意気込みを感じるほどの甘いの。

それを飲む機会がやって来た。うめえ!


うまいうまいと飲んで、肉を食ってしていると、何やら突然ふわふわしてきた。んんん?


「マークス、俺なんかフラフラしてきた」

「若、それはお酒ですぞ」

「ええ…ちょっ、マークス!そう言うのは先にだなあ……う~ん」


気持ちよくなってきてそれからはロクに覚えてない。

気が付いたらアカを布団にして自室のベッドで寝ていた。

酒は飲んでも飲まれるな、だ。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


師匠「MVPは援軍を呼んできたバラゴ爺さん…?おかしいな?私は??」

カイト「やっベ忘れてた…!?」

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