第104話 ユグドラシル防衛戦 2日目~


2日目、3日目と特に何事もなく終わった。

段々とて気が強くなってきている感じはあるが、まだまだどうって事はない。

只々疲れただけ。やっぱり疲労は貯まる。

そして大きな変化と言えば…


かいと は れべる が いっぱいあがった 。 


サイコーかよ!






4日目、少し空気が変わって来た。

中層のモンスターが出現し始めたのだ。

でもまあ、うちらの区画だけでなく全体を見てもアカとロッソは飛びぬけて強い。

おかげで周りの防衛隊もゆとりを持って倒すことが出来ている。

物資の供給、作成にも人員を回せている。まだまだ大丈夫だ。

強くなってきたおかげでレベルも上がった。言う事なしである。



7日目になると周囲の疲れがハッキリと目に見えてくるようになった。

そして、疲れた体に追い打ちをかけるように上級モンスターたちが現れ始めた。

大きなムカデのモンスターを始めとする巨大な昆虫、大型の猛獣、それに亜竜などが入り混じっている。こいつらは30層以降のモンスターらしい。


そして今はようやく7日目の攻勢が終わった所だ。

周囲を見るとみんなだいぶ疲れてる。

アカとロッソはまだボチボチ元気だけど…


「だけど、そろそろちょっとやばいな。みんなかなり疲れてる。援軍欲しいねえ」

「そうですな。ただの石ではあまり効果がなくなってきましたな」

「ただの石…か?」


ロッソの方もチョコチョコとレベルが上がったみたいで、投げる石のスピードも上がってる。というか最初は手を抜いていたのかも。オーバーキルもいい所だったし。


今は割と本気に近い感じで投げているようで、時速500㎞くらいでてんじゃないか?ってくらいだ。

衝撃波や変な音が無いからマッハは超えていないと思うが…スピードガンが欲しい。メジャーのスカウトも顔真っ青だ。ああ、顔真っ赤にして金積み上げて来るかな?


人間は可動域やら何やらから170㎞ちょいが投球スピードの限界だってのをどこかで聞いたが、んなモン異世界やゲームの世界に関係あるはずがない。

強さも速度もどこまでもインフレしていくのだ。

そしてそのスピードで投げられたこぶし大の石は重力の加速もついて地上に入るモンスターに一撃で大ダメージを与えている。ように見える。


「おれもつよくなったぞ!」

「そうだな。体も大きくなって…太った?」

「ふとってない!」


何と言ってもアカのエサはそこら中にあるから倒してはつまみ食いを繰り返している。

『あれ美味そう!』と言って戦闘中に降りて好きなのを咥えて城壁に上がってくるのだ。

フレンドリーファイアしそうになる。危ないからやめろ。


それと、アカの出す火球もかなり強化されている。

どう見ても火を噴いているのに大丈夫か?

火竜ってばれたらめんどくさいんじゃないのか?

…と思うが、色が緑ってだけで緑竜、あるいは地竜だと思われているのだ。


エルフたちの節穴っぷりが半端ない!


実はあんまり火竜だって気にしてないんじゃないか。…と思ってしまうほどだ。

まあ、休憩時間に飯食いながら火竜ってどう思う?って聞いたら怖くてしょうがないとか、見かけたら俺が討伐してやるとかみんな色々言っていた。

とりあえず分かったのはあんまり友好的ではないって事だ。



でもその『火竜なんぞ俺が討伐してやるよ!』とか、『火竜怖いよお…』とか言ってるのをアカはすぐ横で肉をモゴモゴ食べながら聞いていたのだ。

顔も体も緑に染められてるとは言え…こいつら本当に大丈夫なのだろうか。


まあ何でもいいや。

とりあえずエルフは全員アホで節穴!





8日目が始まった。


初っ端から大型モンスターだ。

とてつもなく大きなムカデに足がいっぱいあるゴキブリ。最悪だ。

そして他には5mくらいありそうなクモにカマキリにめっちゃ臭そうなカメムシ。…何で虫系ばっかりなんだ!


「ツリーアロー・ストーム!」


出来るだけ遠くに、広範囲に矢の嵐を振りまく。

俺の矢が当たるとモンスターは拘束される。

そして矢で拘束されたモンスターは続々と現れる後続に踏まれ、潰される。


ぱぱらぱっぱぱ~ん


はい、レベル上がった。

こうすることで先頭のモンスターは何もせずに死んでくれる。

レベルもホイホイ上がるし、防衛は楽になって褒められるしサイコーだな!



俺がいる正門西側の防衛は毎朝の風景である。

今日もいつもと同じように始まった。

大型モンスターも小型モンスターも大差ない。

自分と同じ程度か、それより軽くても次々と踏まれるとそりゃいつかは死ぬのだ。


先頭集団はこうやって潰れるが、すぐに次のモンスターの波が先頭の集団を乗り越えて襲い掛かってくる。ここからが本当の闘いの始まりだ。

いつもの様に城壁からエルフの矢と魔法が飛び、アカの火球が飛び、ロッソはひたすら石を投げる。

石集めも一苦労だが、俺の袋に石はいっぱい入れてある。ロッソがひたすら投げて投げて投げ続け、休憩の時に石をザバーッと足元に落とす。そしたらそれをまた投げる。


このままじゃロッソが肩や肘をぶっ壊しかねないと思っているので時々ヒールはかける。

この世界じゃトミー・ジョン手術も出来るわけないし。

肩は消耗品だっていうから大事にして、一日の試合スタンピードが終わるとキチンとアイシングしている。未来の俺の野球チームのエース候補だ。

球団名を考えておこう。


『ヴェルケーロ・オニーズ 第一巡選択希望選手 ロッソ ヴェルケーロ領』


…うーん、チーム名がかなり微妙だな。

センスが無い。

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