第103話 ユグドラシル防衛戦 1日目

防衛のために聳え立つ壁の上に上がった。

土煙を伴い、襲い来るモンスターの大群。思わずテンションが上がってしまう。


だってこれ、上手くいけばレベル上げ放題のアゲアゲ祭り待ったなしじゃん?

どうでも良い|(どうでもは良くない)交易の為に、虫がいっぱいの中野営して何日も歩いてジジイの顔見に行くクソイベだと思ってたけど、それが一転とてもおいしいレベル上げイベントに変わったのだ。

こんなの嬉しいに決まってるじゃないっスか!


「いよっしゃー打ちまくれー!」

「おおー!」

「うおおお!」


先頭に来る雑魚モンスターたちに俺は矢の雨を降らしまくり、アカは火球をボコボコと打ち込みまくる。ロッソは積み上げてある石をポイポイ投げているが、その右腕からは300㎞くらい出てそうな石の塊が打ち出され、次々と群れの中に着弾しては土煙を上げている。


俺はいつの間にか西側の壁を守る防衛隊の指揮官というポジションになっていた。

ユグドラシル王国側の人も一人副官という形で補佐に付いてくれているし、ロッソも一応副官という形になっている。


そして俺の指揮下に入る守備隊…総勢1000名程か。

1000名が一斉に攻撃するとそりゃまあ中々すごい。

エルフが多く、遠距離攻撃が割と得意な種族ばかり。

敵はあっと言う間に、まさに溶けるように死んでいく。

そして…


ぱぱらっぱっぱっぱーん!

ぱぱらっぱっぱっぱーん!

ぱぱらっぱっぱっぱーん!

ぱぱらっぱっぱっぱーん!

ぱぱらっぱっぱっぱーん!

ぱぱらっぱっぱっぱーん!

ぱぱらっぱっぱっぱーん!

ぱぱらっぱっぱっぱーん!

ぱぱらっぱっぱっぱーん!




経験値とか、レベル上げ的にどういう計算になるか心配だったが、どうも爺ちゃんの軍団に編入された扱いになっているようだ。

レベルがホイホイ上がる感覚がある。

低層の雑魚モンスターばかりで、一体ずつの経験値はたかが知れているとは言え…数が物凄く多い。


そして全体を均等に割っているようだ。

まあもしかしたら西側だけかもしれないが、そこは問題ではない。

俺が休憩してる間にも時々レベルアップしてる。


共闘が入った奴だけ経験値が手に入るのかと思っていたが、パーティーメンバーが倒した分だけでは到底ありえない。


そのくらいの途轍もないレベルアップだ。

もう何回上がったかわからん。

これこのまま続いたらどうなっちゃうんだろ。げへへへ!


待ってろよアシュレイ!

俺がいまからレベル上げまくってアッサリとダンジョン攻略してやるぜ!



「うらうら!撃ちまくれー!レベル上げ祭りじゃー!ギャッハッハ……あら?」

「引いて行きますね。時間ですかな?」

「何だよ時間って…あら?もう夜か?」


愉しいレベル上げ祭りをしていたらいつの間にやら夕暮れだ。

いい時間は過ぎるのが早い。というかモンスターは夜になると引くのか??


「若はご存じなかったですか?モンスタースタンピードが起こるのは昼だけです」

「なんじゃそりゃ…」

「なんじゃそりゃー!ぎゃはは!なんじゃそりゃー!なんじゃー!」

「うるせえ!」


アカは俺のまねをしてなんじゃそりゃを連呼している。

何かのツボに入ったみたいだけど、そりゃまあいいんだ。


モンスタースタンピードが昼にしか起こらないってどういう状況!?

夜になるとダンジョンもモンスターたちも寝るのか?

でもまあ経験値美味しいし、俺らにしてみれば昼夜襲い掛かられるよりは夜はゆっくり寝れる方が文句ないんだけど。



さて、戦闘が終わったら夕食の時間・・・にはならない。

ダンジョン内の戦闘だと倒したモンスターは消える。

でもなぜかスタンピードで出て来たモンスターは倒しても消えない。

という事は、積みあがったモンスターの死骸を片付けなければならないのだ。


大量の死骸をどうやって片付けるかというのが一つの問題になるが、とりあえず食べられるのは食べる。素材になる物はその部分だけ剥ぎ取る。

そして、食べられないし素材にもならないモノは埋める。


これしかない。

出来ればちょっと離れたところで、一回燃やして体積を小さくしてから埋めたい。


埋める穴を掘るのも大変だからな…って事で俺達も運搬に駆り出されている。

俺は袋があるから死骸を袋に詰めまくる。

ロッソはリアカーっぽいのを借りて積めるだけ積んで運ぶ。

巨人族の力は半端ないからこういう所でも大活躍だ。



死骸を埋めないと積み重なった死骸を踏み台にして壁を乗り越えてくるらしいし、焼かないとゾンビ化したりするらしい。

ってなわけで面倒な事だが仕方ない。

とりあえず死骸を回収し、食えそうなのはコッチ、ダメそうなのはアッチと分けてポイポイ捨てる。


そして、火属性魔法使いと土属性魔法使い。

それに剥ぎ取りの出来る町のおじさんおばさん、残っているお年寄りに子供まで総動員で肉やら皮を回収。

その間に休憩して飯食って…飯が終わったら使えそうな矢を集めて、ダメな場合は矢尻だけでも回収して新しく矢を作って…結構忙しいなもう!


途中で間食を取りながら、作業が終わったのは夜中だ。


「つっかれた…」

「疲れましたな…」

「ぐがー。すぴー。」


ロッソと二人、疲れた体で割り当てられた部屋に戻ると気持ちよさそうなアカの寝息が。畜生、羨ましいな。まあ、コイツも火葬の役には立ってたからな…


やや疲れたし興奮しているから寝辛い感じはあるが、キッチリ寝ないと明日から戦えない。まだ静かに寝れるだけマシか。

昼も夜も闘いなら煩くって寝れたもんじゃないだろうしな。



スタンピード1日目はこうやって過ぎて行った。

色々忙しかったがレベルがいっぱい上がったしそれほど危なくなるような局面も無かった。

ずっとこうならいいが。


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