第86話 ここは武器と防具の店だ
いくら最弱魔王のカイト様でもダンジョンの1層や2層は楽勝だ。
そして簡単な階層から徐々に、少しづつ難しい所へ行けばいい。
強い人なら一足飛びに行っても問題ないだろうが、俺は最弱のはず。
慎重に行くに越したことはない。
焦らず。一つ一つ丁寧なプレイを心がける。
エラーや4球を出しても落ち着いて。一つ一つのプレイを大切にするのだ。
…なんて気合を入れ直してダンジョンに突入したが、結果からいうとダンジョン低層は思ったより全然余裕だった。
こないだふらっと来た時に苦戦した20層の敵にも何の苦労もなかった。どうやらしれっとレベルが上がったのか、それとも年齢が上がって体が大きくなったからか?
初日に10層まで、翌日に20層まで走破した。
マップも前に来た時と全く同なのでほとんど走っていた。まるでマラソンだ。
偶に戦っても今更ミミズやネズミなんか屁みたいなものである。
ふっ、どうやら強くなりすぎてしまったようだな。
まあ、小さいころからアシュレイとリヒタールにあるダンジョンでそれなりに頑張ってたのだ。
ボチボチステータスも上がってんだろ。たぶん。
20層をクリアした時に鑑定してみた。
カイト・リヒタール
リヒタール伯爵家 嫡男 14歳
Lv36
職業:ヴェルケーロ領主
HP 139+0
MP 231+0
STR 53+0
AGI 80+0
VIT 51+0
INT 140+0
DEX 81+0
LUK 60
ATK 123
MATK 168
DEF 63
MDEF 16
固有スキル
樹魔法Lv3 鑑定Lv1
ギフト
富国強兵
武器:アルカネイオスの短剣
防具:普通の服
レベルは無事に36まで上がっていた。
武器は短剣を辞めて槍を持とうと思ったが、幾ら片手持ちの槍とは言え本当に片手じゃやっぱり使い辛かったから短剣。
ステータスのなんか不思議なところに『+0』が増えたが、たぶんこれはギフト関連のがまだ反映されていないからだ…と思うんだけど。どうすりゃ反映されるんだ?領地の忠誠度的なやつか?
アカのステータスも鑑定させてもらったが、
アカ
ベビードラゴン Lv27
カイト・リヒタールの従魔
でもこれだけしかわからない。もっと詳細に見えるはずなのに見えないのは鑑定レベルの問題なのか?
あー…もしかすると俺の方が弱いからとか…いやいや、そんなことない!
ないはず!ないよな!?ないだろ…?
「カイトもつよくなったな!でもおれのほうがつよいぞ!」
「なんやて!」
「おれのほうがつよい!ぎゃはは!」
「ぐぬぬ」
謎の上から目線にイライラ。
でも実際コイツの方が強い。
俺が一匹倒す間にアカは3匹倒している。
俺の方がレベル高いのに…ぐぬぬ
アカは秋田犬サイズだが、3mくらいある猛獣の喉笛を一撃で掻き切り、尻尾で薙ぎ払われた個体は壁にめり込み…くそう!不公平だろ!
まあ一方で俺は足止めからの短剣チクチクコンボだ。
だってこれが一番安全なんだもん。
「ふむ、カイトの戦い方は悪くない。やや積極性や覇気にかける感じはするが、一軍の長と思えば当然ともいえる。武将なら兎も角、将軍や王が蛮勇でも困るからな…」
「そうでしょうそうでしょう」
「だがお前はまだ1000人程度しかいない弱小領主だ。普通なら率いるのは100にも満たんだろう。ならもっと前に出るべきでは無いか?」
「…そうですね」
ダンジョンから出てアカと話しているといつの間にかとなりに来た師匠に説教される。
確かにそうだ。言ってることはその通りだ。
その通りなんだけど、この人ずーっと付いて来てたのかな?まあいいんだけど。良いんだけどね?
しかしまあ、大部隊の将軍とかなら兎も角、100人隊長くらいの立場のやつが尻込みして後ろに隠れたりしてたらカッコ悪いにもほどがあるし、部隊の士気も上がらん。撤退戦の時も騎士達は前に出て民衆を守り、鼓舞していた。うーむ。
「もうちょっと積極的にやるか…」
「そうしなさい。骨は拾って差し上げます」
「そりゃどうも。骨にならない程度に頑張りますよ」
死んでも生き返ることが出来るRPGのようなダンジョンなら兎も角、このダンジョンは死ぬと…死ぬのか?ん?試したことがないからわからんな…
「師匠、つかぬことを聞きますが、ダンジョンで死ねばどうなりますか?」
「はあ?そりゃ死ぬに決まっているだろう?」
「ですよね」
そりゃそうか。むしろダンジョンで死んだのにコッチに生きて帰れるなんて、ゲーム脳にも程がある。
でも、それなら逆に俺のチキン殺法はなに一つ間違ってないという結論に至る。
目的は強くなることじゃない。アシュレイを生き返らせることなのだ。
強さはあくまで手段。手段と目的があべこべになってはいけない。
領地を開発して金儲けするのもただの手段だ。
儲けた金で領地をもっと強くし、他領を制圧してアシュレイを生き返らせるための力を得る。
得た力でダンジョンをクリアし、『特別報酬』をもらうのだ。
選択肢や行動によって道は違うが、目的はあくまで『特別報酬』である。
そこをはき違えてはいけない。
などと供述しつつ、明日からは21層でチキン殺法を行う事を心に誓った。
ああ、でもその前に武器と防具の店に行こう。
大魔王様の城下町にはさすがにお店がい~っぱいだった。
でも俺には金があんまりない。
20層までは火属性が多いダンジョン、30層以降は水のダンジョン…つまり20層でドロップしたアイテムを30層台で使うというのは、属性的にダメダメだって事だ。
ってな事を大魔王様から紹介されたお店の人に聞いた。
気難しそうな鍛冶屋じゃない。人当たりの柔らかい、ほんわりとしたお兄さんだ。
「じゃあやっぱり素材はあんまり使えないですかね?」
「武器には微妙ですが、防具に組み込めば防寒具替わりにはなりますよ。何しろ寒いですからね」
「なるほど…」
ゲームじゃ寒さとかあんまり関係ないからなあ。
ホットドリンクとか一部であったけど面倒くさ過ぎるからか廃止されるような有様だし。
俺のレベル的にはまだ20層前後が丁度いいくらいらしい。
ぶっちゃけ30層のボス部屋だってサクサククリアしたのは全部アカのおかげだ。
俺もう農家テイマーとして生きて行こうかな…ってだめだ。
農家じゃアイドルにはなれてもアシュレイは生き返らせることが出来ない。
目的と手段がってさっき言ってたところじゃないか!
「いい感じの見繕ってください」
「畏まりました。武器はどうします?」
「武器もお願いします。槍か剣が良いです」
「分かりました。この『風斬りの小太刀』はどうです?それかこっちの『大地の槍』なんかもいいですね。鎧はこちらのウインドドラゴンの竜鱗鎧が最もおすすめです」
「でもお高いんでしょう?」
「ほんの2億zほどです」
「オツカレサマデーッス」
サクッと帰った。
そんな金有ったら領地に使うっての!
「㌧だボッタくり武器屋じゃねえか!」
「大魔王様からの紹介だったからな…おカネに糸目はつけないと思ったのだろう。」
「それにしても程がありますよ。2億もあるならもっと他の事に使うでしょ!?」
「そうでもないが?」
…あれ?そうでも無いのか?命を守る、あるいは助ける武器や防具だと思えば。
そりゃめちゃくちゃな値段になってもしょうがないのだろうか?うーん?
「まあ結構いい値段だったとは思うがな。私の剣も一本3億zくらいする逸品だ。ある程度仕方ないさ」
「ふええ…」
「しかしお前の短剣と盾はともかくとして防具は頂けぬ。もっとしっかりした防寒対策は採った方が良いし、当然のことながら防御力をもう少しどうにかしろ」
「はい」
「片手剣と盾のスタイルは悪くはない。火力は低そうだが…まあそれは仕方ない」
「はい。どこかそこそこいい感じのリーズナブルなお店を探しましょう」
「…そうだな。だが、ある程度は金を使った方が良いぞ」
「はい」
こういう時こそ先祖伝来の武器防具の出番なのだが、全部ごっつい体格のオッサンが使ってたろ?って武器防具ばっかりなのだ。
槍は丸太かってくらいぶっとくて長い。片手槍の筈なのにパンピーじゃ両手で何とか持ち上げられる程度。
盾を左手にはめると腕が上がらない。岩かってくらい重い。
全身鎧なんて組みあがったのは俺の身長の3倍、横幅も3倍くらいあるんじゃないかって大きさだし…こりゃ装備できる人が少なくて売れないってのも分かるわ。
そりゃこんなモン作ってるから金がなくなるんだよ!既製品でええやろ安モンの既製品で!とおもうが、ウチは代々
既製品なんてあるわけないのだ。
一方で剣は大きいのから小さいのまで色々あった。
何代か前の爺さんが刀剣マニアでいっぱい集めてたらしい。そうそう、そういうのを待ってたんだよ!
…まあ今回俺が持ってきたのは前回の
どんだけでかい爪なんだ!って話だ。
そんなわけで2軒目の武器屋さんで防具を買った。
風属性が付与されていておまけに断熱性も高く…これから行こうとする20層台にとっても最適な、いい感じの革鎧と外套を買った。
昔、小人族の冒険者で活躍した奴がいてそいつの中古品だ。ピッタリサイズである。
つまり俺は小人族と同じサイズって事だ。はぁ。
革鎧と外套で総額3000万z。
3000万ってすごい額なのだが、事前に一本で2億になりまーす。を喰らったところなのでどうという事はなかった。
いや、どうということあるのか?まあもう良く分からんわ。
こうやって金銭感覚はおかしくなっていくんだなと思いました。まる。
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