翔羅

第1話

 なんとも言えない。なんとなく辛い。だけど生きてる。不思議。

 なんともない空。なんとなく見て、広いなーって。不思議。


 言ったらアレだけど、生きていくのって、大変。

 時々考える。死んだらどんな世界があるのかなって。


 ねぇ、君はどう思う?


 ◆


 仕事帰り、ポストに入っていた謎の手紙。

 宛名が書いていない、真っ白な洋封筒。

 たしか、百均で似たものを見かけたことがある。

 そんなシンプルなデザイン。

 だけど、しっかりとした紙だ。


 いたずらかな?

 だとしてもこんな詩みたいなの、わざわざ書くのか?

 

 …なんだかゾワッとした。

 もう暗くなってきたからかな。

 部屋に戻ろう。


 ・

 ・

 ・

 ・

 ・


「すみません、それではお願いします。」

「わかりました。あ、時間がかかると思いますので、近くのお店などで待っていてください。」

「そ、そんなにかかるのですか?」

「そうですね。匂いやシミなどが全くしないように徹底しなければならないので。」

「はぁ……。」

「あと、いくら袋で隠れているとはいえ、その袋の中身を想像して具合を悪くしてしまった方が過去にいらっしゃったので、離れていたほうがいいかと。」

「わ、わかりました。」


「えっと、2階だよね。」


カツ、カツ、カツ、カツ……。


「あ、もうアイツ、取り掛かってるのかな。」


ガチャ。


「あ、先輩。大家さんか不動産の方、追い払えたんですか?」

「追い払ったって言うんじゃない。離れてもらっただけだ。」

「でも、やったことは変わらないじゃないですか。」

「はいはい、口より手を動かす。」

「はーい。あ、先輩。例の手紙がまた……。」

「……同じ文の手紙だ。偶然だと思いたいけど、一応俺とお前、後でいつものお祓いに行くぞ。」

「うい。あ、部屋はどうするんですか?なんなら部屋もしてもらった方が……。」

「さっきの方がその分の料金を払うならね。」

「あ、なるほどです。にしてもこの手紙、詩みた……。」

「だめだっっっっっ!!!!!!!!」

「えっ……。」

「それは、詩、だ。」

「え…?」

「……すまん。でも覚えとけ。今言おうとしていた言葉、二度と言わない方がいい。……死にたくなかったらな。」

「す、すみません……。」



3月5日 36歳男性 妻と2人の子ども(連絡済み)

 単身赴任中であった為、部屋を借りていたとのこと。

 死因:心不全


4月2日 24歳女性 独身

 7歳の頃に両親が亡くなっており、親族無し。

 スマホの履歴より、3週間ほど前に付き合っていた男性と別れた。

 死因:心不全


5月7日 57歳男性 会社役員 妻と1人の子ども(連絡済み)

 何不自由ない生活だったが、妻と不仲であった。

 死因:心不全


6月4日 29歳男性 独身(親族に連絡中)

 勤めていた会社から昇進の話あり。

 しかし過重労働であった。

 死因:心不全




全員の共通点:詩のような内容の手紙


詩みたい……しみたい……しみたい……シミタイ?




シニタイ?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

翔羅 @kuroneko_no_satO8

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ