餓鬼餅【3】

 翌朝。

 荒神家に一泊した倭は、斂と戒吏、そして剣八郎と共に新年を迎えた。

 戒吏お手製のお雑煮とおせちを堪能していると、玄関の引き戸が勢いよく開く音がした。


「クソ親父ぃ!! いま帰ったぞぉ!!」


 若い男の大声が家中に響きわたる。

 剣八郎が「相変わらず口が悪いな」とつぶやきながら腰を上げ、玄関へ向かう。


双葉ふたば。クソ親父じゃなくてパパと呼びなさい、と……」

「うるせぇ!! とにかくコイツらをどうにかしろ!! 朝っぱらから商店街の食い物を食べまくって、みんな迷惑してたぞ!!」


 双葉、と呼ばれた男の切羽詰まった様子に斂と倭は気になり、様子見として玄関へ向かう。

 壁際からこっそりのぞき見すると、黒髪のソフトリーゼントが特徴的な男が、しめ縄でぐるぐる巻きにした三人の男たちを剣八郎に押し付けていた。

 男たちの姿は異様で、ガリガリに痩せこけ、大きく見開かれた眼球がギョロギョロ動いており、この世の者ではない声で「はらへった〜、めしくれ〜」と繰り返していた。

 そんな彼らを見て、剣八郎は頭を抱える。


「新年早々、餓鬼がきに取り憑かれたか」

「どうせ荒神神社うちに供えられた餓鬼餅がきもちを知らず知らず食っちまったんだろ」

「餓鬼は取り除いたか?」

「影丸に食わせた。あとは親父が御祓いしてもらえれば問題ない」

「承知した。……苦労かけたな、双葉」


 父親からの労りの言葉に、双葉は「……おう」とだけ応えた。

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