餓鬼餅【2】

 皆が寝静まった丑三つ刻。

 三人の若い男たちが荒神神社へやってきた。

 飲み会の帰りなのか、彼らは赤ら顔で千鳥足。さらにはゲラゲラ笑っている。

 男たちは手水舎で悪ふざけをしていると、そのうちのひとりが柱の陰に置かれた小さな鏡餅を見つける。


「ああ? おい、鏡餅が落ちてるぜ〜」


 男は笑いながらそれを拾い上げる。


「ほんとだ〜。鏡餅だ〜」

「神さまからのご利益じゃね?」


 ほかのふたりも笑いながら言う。


「ご利益なら食べちゃわないとな」

「食べちゃお、食べちゃお」

「俺の家近いからさ。俺の家で焼き餅にしちゃおうぜ〜」


 男たちはゲラゲラ笑いながら神社をあとにする。


 だが、彼らは気づいていなかった。


 昼間は白かった鏡餅が、どす黒く変色していることに――。

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