奇々怪々【荒魂短篇集】

●●相談人【1】

　本日の相談者は……西園寺（さいおんじ）さん、でよろしいですか？

　はじめまして。相談人の真田（さなだ） 丈（じょう）と申します。

　はい？　人相が悪いからヤのつく稼業の方だと思った？

　よく言われます。

　さて、西園寺さんの相談は……『家族が会いに来てくれない』ですか。

　お盆・お彼岸のときはよく来てくれたのに、ある日を境に来なくなった……と。

　あのですね、西園寺さん。

　こういう相談、多いんです。

　はっきり言ってしまいますと、現代（いま）は昔と違って暑いんです。

　私が子どもの頃よりヤバいです。

　これで会いに行くのは酷ですよ。

　すぐ熱中症になります。

　あとですね、子どもたちら自分たちの生活でいっぱいいっぱいなんです。

　日曜日くらい休ませてほしいって言ってましたよ。

　それから西園寺さん。先代が墓を三つ購入していましたよね。

　娘さんたち……西園寺さんのお姉さんたちに『おまえたちが入る分だ』とか言って。

　お姉さんたち、その墓には入らないようです。

　嫁ぎ先の家の墓に入るそうです。

　え？　だったら孫に入ってもらう？

　いや、お孫さんたち『墓には入らない』って言ってます。

　死んだら火葬して砕いた骨の粉末を山だか海だかに流してくれればいいそうです。

　だって、墓の維持費がかかるから。

　わが子に負担をかけさせたくないそうです。

　なんのために買ったんだって？

　いや、私に聞かれましてもね。

　先代の頭がお花畑だったとしか言えませんよ。

　え？　そんな言い方はないだろ？

　ですが、先代がしょーもない理由で墓を三つ買わなければ、こんなややこしいことにはならなかったんですよ。

　ちなみに私の知り合いの墓は2万です。

　雪が積もったら埋もれてしまうタイプですけど。

　墓には入ってもらえないですが、永代供養はすると言ってたので、ありがたいと思いましょう。

　え？　祟（たた）ってやる？

　私の話、聞いてました？

　知るか。とにかく祟ってやる……ですか。

　やれやれ。頭がカチコチな御人だなァ。