赤ワニ【2】
「なに、あいつ…。
かっこいいと思った男前の青年は、ただのオカルトマニアだった。
美穂は肩を落とすと、青年の警告を無視して、再びスマホを操作しながら歩きだした。
美穂『さっきめっちゃかっこいい人に会ったんだけどさー』
友人『マジ!? イケメン?』
美穂『イケメンだったんだけどー。オカルトマニアだったわ。あんたの“赤ワニ”って話に興味を示してたわよ』
友人『オカルトマニアでもイケメンだったんでしょ!! せめて名前を聞いておきなさいよ!』
やけに食いついてくる友人に、美穂は(イケメンならなんでもいいのか…)と
返信しようと文章を打ち込む矢先、美穂はなにかに足を取られてしまった。
「おっと!」
「…うそ。なにあれ」
背筋が凍りついた。
美穂の目に映ったのは、割れて出来た裂け目。だが、その
――赤い
「うわさ話じゃないってこと?」
息が荒くなり、心臓が激しく
――意識していれば安全だが、うわの
赤い
――赤い
――目がない、皮を
それはヌルヌルした赤い体液を全身に
――鋭い牙がたくさん生えた大きな口を広げて、獲物に喰らいつく。
目がないのに、怪物は美穂へ狙いを定める。大きく開いた口は、鋭い牙が
「――ヒッ!!」
美穂はあまりの恐怖に引きつった声をあげ、その場から逃げだす。
必死になって走る彼女の様子に、周囲の人々は
(――ほかの人には見えないの!?)
どうやら美穂以外の人たちは怪物の姿が見えないようだ。さらに、怪物は周りの人たちには目もくれず、美穂だけを狙い続ける。
(うそうそうそ!! 誰か! 助けて!!)
走って、走って、走り続ける。
一瞬窓口へ逃げ込もうと考えたが、自分以外に見えない怪物の存在をどう説明するのか?
誰も信じてはくれない。頭のおかしいやつ、または薬をやっていると思われるだけだ。
(電車に乗ってしまえば、怪物も追ってこれないはず!)
美穂は改札口を通り、駅のホームへ着く。通勤通学もあって、学生やサラリーマンであふれていた。
(あーもう! だから、朝の通学は嫌いなのよ!!)
嫌な気分になりながらも、美穂は自分の乗車位置へ向かう。そこへ着いたと同時、タイミングよく電車も来た。
あとは電車に乗るだけ…。
そう安心した刹那、突然右足に激痛が走る。
「――痛ッ!!」
思わずその場にしゃがみ込む。恐る恐る自分の足を見れば…骨が見えるほどえぐられた傷が付けられていた。
「な…なんで…」
美穂が辺りを見回すと、
美穂の顔から血の気が引いていくなか、
赤い
「君、大丈夫…って、
サラリーマンが叫ぶ。しかし、美穂の耳には届かない。なぜなら、彼女は赤い
舌なめずりしながら近づいてくる怪物。美穂は悲鳴をあげると、
「いやああああ!! 来ないでッ!! 来ないでぇぇぇぇッ!! 化け物ォォォオオオッ!!」
発狂する美穂。彼女の目の前には、大きな口を開けて飛びかかってくる怪物の姿。
「――あぶないッ!!」
駅員の叫びがホームに響きわたる。
その声で美穂はわれに返るが、すでに遅し。気づいたときには反対側のホームへ転落し、通過中の快速列車にはねられてしまった。
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