第2話不幸はつづくどこまでも
あれから七年が過ぎた。
僕は水無月真珠、いや今は
彼女の母親が再婚し、姓が変わったのだ。
しかもその再婚相手がいくつもの会社を経営するいわゆる実業家で真珠はあっという間にお嬢様になった。
僕の母親もその系列企業で働かせてともらい、生活は以前よりもゆとりのあるものとなった。
「ほら、持ちなさい」
そう言い、女子高生になった真珠は僕に鞄やお弁当の入った荷物を持たせる。
奴隷の僕はそれをうやうやしく受け取る。
ああ、なぜ七年前にあんなことをしてしまったのだろうか。
「さあ、学校にいくわよ。グズグスしてないで速くきなさい」
高飛車に真珠は言う。
しかし、身長の低い彼女は僕を見上げる形になる。
真珠は身長が百五十センチメートルでとまってしまっていた。
前髪はかわらず額の真ん中できれいにきりそろえられている。
長い髪はツインテールでつやつやとしたキューティクルがご自慢のようだ。
瞳の大きな美少女ぶりもかわらないが、残念ながら胸は成長しなかったようでまったいらだ。本人いわくまだ成長期で可能性を信じているようだが、僕はもうその希望はないと思っている。
僕はというと背が百八十センチメートルまでのび、真珠との差は開く一方だ。
体格がよくなった僕に真珠は荷物のすべてを持たせる。
「ほら、きびきびと歩きなさい。あんたのせいで遅刻なんかしたくないわ」
ベチベチと僕の尻を蹴飛ばしながら真珠は言う。
「は、はい。姫様……」
真珠が姫野姓を名乗るようになってから僕はそう呼ぶように命令された。
あのリコーダーの一件以来僕は真珠にさからえないのでそうよばざるおえない。
ああ、あんなことをしなければこんな屈辱的なことをしなくていいのに。
それに遅刻するのが嫌なら僕の家まで来なくてもいいのに。
いや、その前に僕と同じ公立の高校に通わなくてもいいのに。
真珠の家の経済状況ならいわゆるお嬢様が通う女子校に余裕でかよえるのに。
なのに真珠はなんの気まぐれか僕と同じ県立高校を受験し、合格してしまった。
てっきり彼女は私立の有名お嬢様学校にいくものと思われたのに。
中学から高校にあがるときにやっと真珠の支配から解放されると思ったが、それは淡い希望であった。
僕の希望はあっけなく崩れ去り、毎日、真珠に支配される不幸な日々が続いている。
午前の授業が終わり、お昼休みとなった。
姫野真珠は僕の前にすわり、机の上にお弁当を広げる。
自分のお弁当は色とりどりのかわいらしいもので僕の前におかれるのは茶色一色のものであった。
「さあ、我が家の残飯を今日も食べなさい。コロッケにから揚げなんか低俗な光莉にピッタリね」
アハハッと真珠は高笑いを浮かべる。
そう、僕は姫野家の残飯をお昼に食べさせられているのだ。
こんな屈辱はあろうか。
しかし、さすがは姫野家。
この残飯と呼ばれるから揚げもコロッケもかなり美味しい。
「喉が乾いたなんて、なんて贅沢。お前には我が家のトイレの水で十分だわ」
またあのアハハッという高笑いで僕の口に無理やり水筒をつきつける。
ちょうど油っぽいのを食べていたので水分は欲しかったがトイレの水はひどい。
しかし、さすがは姫野家。
トイレの水もさわやかなレモンの香りがする。金持ちの家はトイレの水もレモン水を使っているのだろうか。
僕は毎日、姫野真珠の登下校するときは荷物をもたされ、残飯を食べさせられトイレの水を飲まされているのだ。
こんな不幸なことがこの世にあるのだろうか。
僕はこの不幸な環境を打破するためにある作戦をたてていた。
それはある人物に相談することだ。
その人物は
クラス委員長でバレー部のエースでおまけにHカップの巨乳。
性格は曲がったらことが大嫌いな、自他ともに認める正義の味方。
学校でおこる数かずのトラブルを解決しているという。
僕は思いきって放課後に折原涙に相談した。
この状況を打破して、普通の高校生活を送りたいと。
これはかなり勇気のある行為であった。
真珠にみつかればただではすまないことは明らかだ。
だが、折原涙からの返事は僕の期待にまったくそわないものだった。
「いやいや、あんたらいちゃついてるだけでしょ」
とりつくしまもなく、折原涙はそう言い、立ち去った。
なにか腕時計にむかってぶつぶつと呟いていた。
くそっ何が正義の味方だ。まったくたよりにならないじゃないか。
「なるほど、現状を変えたいのだね。私ならその力になれると思うよ」
そう言い、近づいてきたのは白衣の背の高い少女であった。ぼさぼさの黒髪で表情がよく見えない。その白衣の中の体はかなりの巨乳に見える。歩く度にプルンプルンとふるえている。
彼女はたしか化学部の
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