触手人間28号とツンデレお嬢様

白鷺雨月

第1話不幸な少年

不幸とはなんだろうか?

幸福ではないということだと僕は思う。

僕の不幸は約七年間続いている。

そしてそれはこらからもずっと続くと思われる。

ああ、こんな不幸が未来永劫続くなら、いっそ死んでしまおうか。

けど、僕は死ぬ勇気なんてものはないので、ただただ不幸を受け止めるだけなのである。


そのきっかけとなった出来事は約七年前にさかのぼる。

小学生五年のときだ。

その日、忘れ物をとりに教室に戻った僕の目にあるものが写った。

それは机の横にぶら下がるリコーダーであった。

その机はあの水無月真珠みなづきしんじゅのものだった。

クラス一かわいい女の子。しかもなんと僕の幼なじみ。

母親同士が親友だったのだ。

同じシングルマザーの家庭で育ち、お互いの家でよく遊んだものだ。

気がつけば僕はそのリコーダーを手にとっていた。

それはほんの出来心であった。

今ならスーパーで万引きした主婦がほんの出来心だったというのがわかる。

本当に出来心だったのだ。

僕は手にとったリコーダーを袋から取り出し、口にくわえていた。

リコーダーの先の口をつける部分をベロベロとなめたり、口にいれてその感触を楽しんでいた。


カシャカシャという音がした。

その音の方向を見ると前髪をきれいに切り揃えた美少女がたっていた。

「光莉君、何しているのかな」

その美少女は言った。

その美少女こそ水無月真珠みなづきしんじゅであった。

彼女は手に持ったスマートフォンで僕の姿を激写していた。


僕は思わずリコーダーから口を話す。

しかし今まで目一杯なめたおしていたため、よだれが糸をひいた。


「ねえ、私のリコーダーおいしかった?」

真珠は僕に近づき、じっと目を見る。

大きな目はキラキラとしている。

けどここは真珠のかわいらしさに感心している場合ではない。


「こ、これは……」

これは出来心なんだ。

思春期手前のリビドーが体を勝手に動かしたんだ。


「この写真、ばらまいたら金剛光莉こんごうひかり君の人生は詰んじゃうね」

にやにやと真珠は言う。


「やめてくれ、お願いだ!!」

僕は懇願する。


「あー話し方がなってないな」

真珠は腕を組んでいう。


「すいません。やめてください」

僕はさらにたのみ込む。

あんな姿をばらまかれたらこの先真っ暗だ。


「そんな態度じゃあね」

真珠はすっと爪先を前にだす。


これはどういう意味だろうか。

もしかしてこれをなめろということか?


僕はためらいながらかがみこみ、その真珠の爪先を両手ではさむ。

かなりためらいながら舌を近づける。

しかし、手前で止まってしまう。

さすがに靴をなめるのはためらわれた。


「あーじゃあいいんだね」

真珠は足をひっこめようとする。

慌てた僕はその靴をつかみベロベロとなめた。

人生最初で最大の屈辱だ。

なのに僕の下半身になにか熱いものが駆けめぐり、頭がくらくらした。

見上げると真珠の真っ白なパンツが見えた。


真珠は満面の笑みを浮かべて顔を赤らめている。

なぜだ?

なぜ、彼女は顔を紅潮させているのか。

僕にはよくわからなかった。


「いいわ、光莉君。いえ、今から光莉ね。君は私の奴隷よ。奴隷として私のいうことをずっときくのよ。そうしたらこの写真はみんなにはみせないでおいてあげるわ」

真珠は恍惚とした表情で運動もしていないのにゼエゼエと息をきらせながらそう言った。


その日から真珠は幼なじみではなく僕の支配者になった。

それは七年たった今現在も進行していた。

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