第37話召喚士の力VS幻獣を封じる力
決闘が始まる。
最強ギルド『グローリー・ガーディアンズ』の最強剣士、アレクセイが剣を抜く。いきなりあれで斬りかかってこられたらたまらない。私は召喚術を行使する。
「きてください、ペガサスさん!」
私が選んだ幻獣さんはペガサスさんだった。グリフォンさんでは強力すぎて相手を殺してしまいそうだし、サラマンダーさんはその火炎で町を燃やしてしまう恐れがある。
もちろん、ペガサスさんも人間ではとても敵わない強さがあるのだが、まだケガの程度は低くて済むだろうと思ってのことだ。
私の力で異界への扉が開き、そこから大きな羽根を持った巨躯の白馬が姿を見せる。
「ふ、召喚術。まさか本当に使えるとはな」
アレクセイはこの期に及んでも余裕の笑みだ。その余裕はどこからくるのか。
ペガサスさんは私の前に私を守るように四本足で立ち、アレクセイを牽制する。
「ペガサスさん、殺してはいけませんよ」
私はペガサスさんにそう告げる。幻獣さんがどれだけ私の言うことを聞いてくれるかは分からないが、言わないよりはマシだろう。いななきを返したペガサスさんはアレクセイに向って突っ込んでいく。
「あいにくと、幻獣対策は万全だ!」
するとアレクセイは何かを放り投げた。球体だった。それがペガサスさんの目前で破裂し、周囲に嫌な空気が満ちていく。
「いったいなに?」
思わず私は驚きの声をもらす。嫌な空気をまとってしまったペガサスさんの足が止まる。そこにすかさずアレクセイは剣で斬り付ける。
「はああっ!」
ペガサスさんにアレクセイの剣が斬撃を浴びせる。流石に幻獣だけあり、それだけですっぱりと斬れはしなかったが、ダメージは負ったようでペガサスさんは苦しげに呻く。
今、アレクセイは何をしたのでしょう。何かを投げて、それでペガサスさんの勢いを止めた。
「幻獣殺しとしてあの怪しげな男からもらったものだ。いかに幻獣と言えど!」
余裕の表情のアレクセイはそのままペガサスさんに追撃を加えようとする。ペガサスさんは体をひねり、前足を上げて、アレクセイを踏みつけようとするが、その動きは鈍い。アレクセイは回避して、足に斬り付ける。ペガサスさんはまた呻き声。
(何らかの力でペガサスさんの力が封じられている!?)
そうに違いなかった。それは先程、アレクセイが投げた何か。あれは一体。
「ははは! 幻獣。口ほどにもない!」
私が考えている間にもペガサスさんにアレクセイは剣で斬り付ける。ペガサスさんの白い肌は強固で剣を弾くものの、ダメージは確実に蓄積されている。このままではマズいと戦いに関しては素人の私でも分かる。
(なんとかしないと!)
そうは思うが自分に何ができるのか。これまで召喚術で幻獣さんを呼ぶだけで後は幻獣さんに全てを任せて戦ってきた私が。
「ペガサスさん……!」
私は祈りを捧げる。かつて聖女だった時のように。もう私に奇跡魔法は使えないけれども……!
すると私の体から白銀の輝きが放たれ、ペガサスさんに向かう。それを浴びたペガサスさんはそれまでの苦しげな様子が嘘のように気高く大声でいななく。
「な、何っ!?」
アレクセイの動揺の声が響く。
ペガサスさんはすっかり本調子に戻っていた。
「どういうことだ!? 話が違う!」
アレクセイは既に及び腰だ。そこにペガサスさんが突進を喰らわせる。
「ふぎゃあ!!」
アレクセイは後ろに吹っ飛ばされ地面を転がる。そのまま立ち上がっては……これなかった。ペガサスさんが追撃を浴びせようとするが、
「ペガサスさん! もういいです!」
私の声。それを聞くとペガサスさんが動きを止めた。
「うぐぐ……馬鹿な、こんなことが……」
悔しそうなアレクセイの声が響くが、やはり立ち上がることはできないようだ。決闘は決着が着いたとみていいだろう。
「私の勝ち、ですね」
私はそう呟く。観戦していた周りの面々も騒ぎ出す。
「やっぱり仮面の救世主の勝ちか」
「グローリー・ガーディアンズの最強剣士も大したことないな」
「すげえぜ、仮面の救世主は!」
沸き立つ周りの人々の視線が私に集まるのを感じて私は恥ずかしくなるが、とりあえず勝ちは勝ちだ。私がお世話になっているギルド、ドラゴン・ファングの名に泥を塗ることは避けられたことに安堵する。
「くそ! くそ! こんなことが! 私が負けるはずなど! あんな小娘に!」
アレクセイは悔しげな声を上げ続けるのだった。
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