第6話 悪鬼ふたたび 宮簀媛の力 弐
「アイツってアイツなの!? 」
「アナタは誰の事を言ってんのよ。
「だから、狸って言うな!」
「・・・・あのう」
そんな私に代わって
「国家公安委員会からの連絡って事は、それはつまり」
草薙さんは少し緊張した顔で答える。
「そう、食人鬼よ。アイツがまた
食人鬼。
この名前を私は生涯、忘れる事は無いだろう。
草薙さんが左腕を切断されて私が
あっ、詳しく知りたい方は第1部を読んでね。
「でも、おかしいわね」
草薙さんは
「・・・・アイツらは一族ごと
「あの」
桜子がおずおずと声を上げる。
「その、滅するってどういう意味なのですか? 」
しかし、草薙さんは考え込んでいて答えない。
桜子が私の方を見る。
え ? 私に聞くの ?
「私に聞いてもムダだからね。私だってワケわかんないだから」
それを聞いた草薙さんがプッと吹き出す。
何よ。私はフツーの女子高生なんだからね。
そんな事、判るワケ無いじゃない!
「確かに
草薙さんがクスクスと笑いながら言う。
さっきの深刻そうな顔が少し
読者の皆様方は勘違いしてるかも知れないけど、私は
「アタシは
「でも ?」
桜子が草薙さんの言葉の続きを
「アイツらは、食人鬼たちは人を喰らう事を目的としている。アタシ達にとっては明確な敵。
「・・・・なるほど。判りました」
桜子は納得したように頷く。
「でも、アイツが現れたって事は ?」
私の質問に草薙さんは再び緊張した顔つきになる。
「何者かがアイツを
「そんな事が可能なの ? 」
再度の私の質問に草薙さんは両手を広げる。
「さぁね。アタシには無から「何か」を甦らせるなんて見当もつかない話だけど。でも現実に現れた、って言うんだから」
「国家なんとかの人達がそう言ってるのね」
そんな私を草薙さんは超ドSの眼でみる。
「国家公安委員会よ。ホントにいい加減に憶えなさいよ」
「うっさいわ! 」
そんな私達のやりとりを見ていた桜子が口を開く。
「あの、それで国家公安委員会の人からはどんな連絡が来たんですか ?」
「この街でまた殺人事件が起きたらしいの。マスコミには
今度は私が質問する。
「でも、なんで食人鬼の
「殺人現場に血で書いてあったって。あの小娘を喰う為に俺は帰って来た、って」
私と桜子は絶句する。
特に私は身体中が震えるのを感じる。
またアイツと。
あの食人鬼と対峙しなければならないなんて。
「それで国家公安委員会の人は草薙さんに何て言って来たんですか ?」
「・・・・また、アタシ達に協力して欲しいって。勿論、強制じゃ無いけど」
桜子の問いかけに草薙さんは冷静に答える。
「私は反対だけど。でも草薙さんじゃなきゃ倒せないのよね・・・・」
「そう言う事ね。アイツには拳銃では歯が立たないし。それにアタシへの復讐が目的なら、アタシが姿を見せなきゃ犠牲者が増え続けるわ」
そう、草薙さんの言う通りなんだ。
草薙さんが姿を見せるまでアイツは人を殺し続けるだろう。
私も震えてる場合じゃ無い。
「判った。私も桜子も協力する。今度こそアイツが2度と現れないようにしようね」
「・・・・ありがとう。音美」
草薙さんが柔らかい笑みを浮かべる
うぅ、草薙さんカワイイ。特にさっきまでドSの顔をしてたから余計に可愛く見えるよぉ。
あれ ? こう言うのをギャップ萌えって言うのかな ? 知らんけど。
草薙さんの微笑みに思わず赤面してしまった私は照れ隠しの為、桜子に声をかける。
「私たちも頑張ろうね、って。どうしたのよ桜子 ! ? 」
桜子は下を向いて震えている。
そんな桜子の眼に光るモノがある。
桜子は涙を浮かべながら
草薙さんがゆっくりと桜子の前に
「どうしたの ? 桜子」
「・・・・怖いんです。あたし、怖くて怖くて」
桜子が震えながら呟く。
そうか。
桜子は人間以外の知的生命体と対峙するのは初めてなんだ。
これまで桜子が関わった事件では「何か」に囚われた人間が相手だったから。
ましてや、食人鬼なんて。
「誰だって怖いわよ。アタシだってそうなんだから」
草薙さんは桜子の肩を撫でながら、あやすように言う。
「・・・・判ってます、あたしだって頭では判ってるんです。でも」
「でも ?」
草薙さんは優しく問いかける。
「・・・・怖いんです。身体の震えが止まらないんです」
「・・そう」
草薙さんの右手が素早く動く。
「うっ! 」
桜子の身体がゆっくりと崩れ落ちる。
「ちょっと。桜子に何をしたの ?」
「
私は桜子を抱き起した。
息はちゃんとしてる。
ホントに気を失ってるだけなんだ。
「だけど、いきなり気絶させるなんて」
「時間が無いのよ。今夜もアイツは現れるだろうから」
抗議する私に向かって草薙さんは冷静に答える。
「国家公安委員会の人とは、もう落ち合う約束をしたのよ」
「それは
私の問いに草薙さんが答える。
「今日の午後10時。さっきも言ったけど事は急を要するの。これ以上の犠牲者を出さない為に」
「了解。あっ、私や桜子の家族に連絡しなきゃ」
「それはアタシからしておくわ。女子会をするって。その方が話が早いだろうし」
確かに草薙さんから話して貰った方が話は早いだろう。
ウチの両親なんて私より草薙さんの方を信頼してるくらいなんだから。
そんな事を考えながらも私は未だ意識の無い桜子を見る。
「桜子はどうするの ?」
「勿論、連れて行くわ。この間の
私は思わず反論する。
「無茶だよ。桜子は自分で戦った事なんて無いんだから」
「無茶は承知の上よ。桜子の精神力の強さは貴重な戦力になるし。何より
草薙さんにこんな事を言われたら私は反論なんて出来ない。
それに私だって色々な危険とも言える経験をしたから今の私がある。
これは桜子が自分の
「判った。でも桜子の意識が戻ったらどうするの」
「薬草水を飲ませておくわ、睡眠作用がある。これで午後10時くらいまでは眼を覚まさないわよ」
それから私達は夕食を食べたり
そんな中で私は聞いてみた。
「ねぇ、草薙さんは食人鬼を甦らせたヤツに心当たりがあるんじゃないの ?」
と。
「さぁ、どうかしらね」
私の問いかけに草薙さんは意味ありげな笑顔で答えるのであった。
つづく
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