【37】bullet


「……なる、ほどわかった。斎賀さんにとってその、友達の人?は色んな意味で特別なんだな」


 永児がなんとかまとめると、蓮奈は喜色満面といった様子で「うん!」と答えた。


 そこまで憧れの感情を持たれるのは、同じプレーヤーとしても羨ましいものがある。


 蓮奈がバレーボールを始めるきっかけになったというその友達は、かなり強い選手なのかもしれないな……と永児が思ったその時、健流が冷静に口を挟んだ。


「その友達の影響でバレー始めたなら、普通にバレーも一緒にできるんじゃないのか?」

「ううん、だって会ったことないもの」


 蓮奈の返答を聞いて永児と灯が「え!?」と素っ頓狂な声を上げる。健流も豆鉄砲をくらったような顔になった。


「蓮ちゃん、その人と会ったことないの!?」

「うん」


 平然と頷く蓮奈に永児たちがさらに追求をかけようとしたその時。

 思い金属音の足音を響かせながら、白黒のVアーマーが倉庫の中から歩み出てきた。


「うおおおっ」


 入学式の日は格納柵の中に収まっていたので、Vアーマーが直に動いているのを見たのは永児もこれが初めてだ。


 起動するとボディの至るところに碧いライトが点り(ともり)、頭部のカメラアイ部分も碧く輝いている。


 3歩分ほど倉庫の入り口から離れると、今度は背中と脚の部分から排気音が起こり、ブースターで床を滑りながら永児たちの前にやってきた。


 他の5機のVアーマーも同じようにして次々と滑走し整列する。


「ふおおおおおおお!」

「うわー!」

「すごい……!」

「……」


 それぞれリアクションを取る永児たちに向かって、正面に大きく『1』と番号を打たれたVアーマーがギア音を響かせながらポーズを決める。


『これがっ!我が能登校のとこうのっ!Vアーマーだっ!!』


 続いて『2』と番号の打たれたVアーマーが『フゥーッ!』と声を上げる。


 機体から聞こえてくる声からしてポーズを決めたのが源三郎、それに乗っかって騒いでいるのが春満だろう。


「はいはい、そんじゃまずは各自Vアーマーの横に待機してねー。あとVアーマーに乗った後は指示があるまで勝手に歩き出さないように!その場で立っててね」


「はい!」


 テンションの高い三年生たちを完全に無視した菜乃花に指示され、1年生たちは配布されたマニュアルを片手に一人ずつVアーマーの横に立った。

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