【36】bullet


(高座ってマジで無口な奴なんだな)


 もちろん、いろんな性格の人間がいるのは承知だが、こんな時は伊川のように下らない話であっても雑談できる奴の方が楽と言えば楽である。


 とはいえここにいるのはまだ出会ったばかりの面子だ。多少ぎこちなくても仕方ない。


 それに赤の他人同然であったとしても、自分たちにはバレーという共通点がある。


 こういうときもバレーボール(の話)は人と人を繋いでくれる。はず。たぶん。


「なあ高座って経験者なんだろ?いつからバレーやってるの?」


 名前を呼ばれて健流がこちらを向いた。なぜだか異様に色の薄い眼だと思った。


「始めたのは小六」

「へえ、結構長くやってるんだな。俺も小学校からやってるんだ。高座って背が高いから最初からミドルやってそうだよな」

「別にミドルやりたくてバレー始めたんじゃないけどな」

「じゃあきっかけは?」


 永児の質問に少し目線を泳がせてから健流は答えた。


「妹が先にクラブ通ってて送り迎えしてたら、コーチにバレーやらないかって言われて俺も始めた。そこから中学もバレー部入った」

「え、妹いるのか。良いなあ、一緒にバレーできる兄弟いて」

「まだ小学生だから、さすがに力の差がありすぎて無理だ」

「かわいいじゃん。兄弟で一緒にパス練とか楽しそう」

「……そう、だな。楽しいかもな」


 2人の会話を聞いて灯が私も!と天真爛漫に手を上げる。


「お姉ちゃんと一緒に小学校からクラブチームでやってたよー。蓮ちゃんは?」

「私は中学二年の終わりぐらいからだよ。皆もうベテランなんだね」

「ということは部活じゃなかったの?」


 灯が首を傾げて聞くと、蓮奈はバレーボールを始めたきっかけを簡単に話した。


「うん、友達がバレーしてて話だけは聞いてたんだけど、ちょうど近所のクラブで募集してたから入ってみたの」

「じゃあ、バレー始めたのはその友達のおかげなんだね!」


 すると蓮奈が物凄い速度で頭を振りながら頷き、目の前にいる灯を押し倒しそうなほど前のめりになって身を乗り出す。


「そうなの!」


 さらに頬が一気に紅潮し、興奮で息を乱しながら、なぜ一息で喋れるのかというほどの量の言葉を次から次へと紡ぎ出していく。


「その人も皆みたいに小学校からバレーしてたらしいんだけど、いっつもいっつもバレーボールのことを楽しそうに話してて、それで私も興味を持って始めたんだけど、そこから私の世界も変わったの! だから私いつかその人と一緒にバレーしたいと思ってて、あ、その人ね同い年みたいなんだけど、高校からアーマーバレー始めるって言ってたから、私もアーマーバレー部に入ったの!」


 つい先ほどまで控えめと言って良い態度だった蓮奈の豹変に、三人は圧倒された。

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