【33】bullet
「やる気っていうか、試合の時はほんと血の気が荒いっていうか……」
菜乃花の声が耳を掠めるが、質問する前に源三郎がパンパン、と手を叩いた。
「それじゃあせっかく一年も集まってるし、丁度いいからこの場で順番に名前と経験者はポジションも言ってくれ」
源三郎に促され、1年生たちは座っている順番でそれぞれの名前とポジションを上げていった。
「
「
「
最後に今まで全く喋らなかった、長身の男子生徒が渋々といった体で口を開いた。
「
1年生は見事にスパイカーばっかりだった。
とはいえ聖歌はまだ始めてから数か月しか経っていないらしいし、残りの経験者は剣芯だけとなると1年でも経験者のウィングスパイカーがいた方が丁度良いのかもしれない。
そんなことをつらつらと考えていると、蓮奈の眼にチカチカしたものが映った。光のように見えるそれらは聖歌の周りを漂っている。
蓮奈は聖歌を凝視していることがバレないよう、あわてて目をつむり頭を振った。
「大丈夫」
「え?」
声がした方を見ると聖歌が透き通った眼で高座の方を見ていた。
「彼らは君を攻撃しないよ。ここは安全だ」
恐ろしいほどの優しい声に高座の表情が引きつったのを、蓮奈は黙って見ていた。
♢♢♢♢
「竜村は左利きなんだよな」
源三郎が付け足した補足に、菜乃花が「へえ!」と弾んだ声を上げた。
「竜村くん左利きなんだ! これは期待できますな」
左利きでも身長負けで結局は万年ベンチだったわけなので、永児としては苦笑いするほかなかった。
スポーツの世界では左利きが有利だとよく言われるが、左利きだからって誰もが花形選手でいられるわけではない。
ゆえに、左利きは寄せられる期待が余計に辛い……。左利きあるある。
永児が微妙な気持ちになっていると、地を這うような声が響いてきた。
「今、なんていった……? お前、
「ひっ!?」
左利きと聞いて恐ろしい形相になっているのは晶だった。眼が完全に殺気を帯びている。
今にも眼差しだけで永児の心臓を締めてやると言わんばかりである。
それを見て源三郎たちが瞬く間に焦りだした。
「しまった…! 明石のサウスポー嫌い忘れてた……!」
(な、なにいいいいいい!?)
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