【28】bullet
(むりいいいいい!)
もはや限界を迎えた蓮奈が後ろに倒れ込みそうになった時、部室の扉の向こうから弾んだ女生徒の声が響いてきた。
『ああー緊張する! あ、お姉ちゃん置いてかないでよー』
『さっさと入りなっつーの』
部室の扉を開けて入ってきたのは、髪をショートカットにした二人の小柄な女子生徒だった。
外から聞こえた話し声からして、この二人は姉妹なのだろう。
とはいえ先に入ってきた女生徒の方は切れ長の眼でクールな雰囲気を持っているが、後から入ってきた女生徒の方はくりくりとしたどんぐり
そっくりでいてなんとも対照的な二人だった。
続いてツインテールの女生徒と目も眩むような美少女も入ってきた。
「あ! もしかして、あなたも新入生?」
ツインテールが蓮奈の方へ駆け寄り、眼を輝かせる。
「はい、えと、えと、ハ、ハジメマシテ!」
そもそもリアルの交流があまり得意ではない蓮奈は、初対面の先輩にも緊張を隠せず、がばっと勢いにまかせて頭を下げた。
「おっと。あはは、はじめましてーそんな緊張しないで?」
蓮奈の頭がぶつかりそうになるのをすいっと避け、ツインテールが苦笑する。
「急に近寄ったから驚かせたんじゃないかい?」
「……たぶん聖歌さんの方が驚かせてるんだと思うよ」
「僕はなにもしていないが?」
顔を上げた瞬間、視界に飛び込んできた美貌に蓮奈は固まっていた。
(こ、こんなにきれいな人、見たことない……)
一回でもテレビに出たら国内が騒然とするのは間違いないだろう。
隣に歩いて来た美少女が男子のような口調で喋ったことに少し驚いたが、近くで見るとより神秘的な美しさに眼球が吸い寄せられる。
あまりに他と差がありすぎると、嫉妬すら起きないのだということを蓮奈はこの時知った。
だがそれ以上にこの美少女には妙に安心感を覚えた。
ずっとずっと探していたような……やっと見つけたような……。
なぜだかわからないが彼女の傍にいき、思い切り抱きつきたくなった(実際にはしないが)。
「ありゃ!」
「おやおや」
「……え?」
周りの声に気が付くと……なんと蓮奈は美女に抱きついていた。
「うわわ! ご、ごめんなさいごめんなさい! 私、たいへん失礼なことを!」
慌てて体を離し何度もお辞儀して蓮奈は謝った。幸いにも美女は一つも怒らず「失礼なんて思っちゃいないよ」とプラチナの髪を揺らして微笑んだ。
「ふふ……」
「はわ……」
それどころか美少女は眼を細めて蓮奈の頭を優しく撫でてきた。
伝わってくる手のひらの暖かさに、どうしてこんなにも泣きたくなるのだろう。
「聖歌さん、新入生
一人はバンダナを頭に巻き付けており、もう一人はかなり背が高い。
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